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北米不動産の2021年最新版トレンド・レポートを読み解く− Vol.4「社会正義と人種の平等」

Highlights

  • PwCとULIが共同発行する北米不動産市場トレンド・レポートの内容を紹介
  • 第4回のテーマは「社会正義と人種の平等」について
  • 北米不動産業界は人種的・社会的差別の解消に向けて、さまざまなアプローチを行っている

人種的平等や差別の撤廃についても重視する不動産業界

ロンドンを本拠地とする世界最大級のコンサルティングファーム「PricewaterhouseCoopers(PwC)」と不動産・土地利用の専門家集団「Urban Land Institute(ULI)」が毎年発表している、北米不動産市場のトレンド・レポート「Emerging Trends in Real Estate(※1)」。

このレポート内から、アメリカ不動産投資の参考になるような情報をピックアップしてご紹介するシリーズの第4回。今回、取り上げるテーマは「社会正義と人種の平等」についてです。

警察の不当な対応により、アフリカ系アメリカ人男性が死亡した事件を発端に、人種差別抗議運動「Black Lives Matter(BLM)」が世界的な広まりを見せた2020年。マイノリティの権利向上や差別撤廃に大きな注目が集まった1年となりました。

一見、こうした話題と不動産業界は無関係なようにも思えるかもしれません。しかし、本レポートでは人種と社会的平等についても紙幅が割かれており、北米の不動産業界人たちが、この問題にとりわけ注視していることが読み取れます。

 

不動産業界は人種差別にピリオドを打てるか?

アメリカでは1964年の公民権法の成立以降も、長年にわたって制度的な人種差別や偏見が残り続けていました。所得、富、健康、寿命、さまざまな面で不平等は存在し続けていましたが、こうした問題が国家レベルで大きく取り上げられる機会は少なかったと言えます。

そうした意味で2020年のBlack Lives Matter運動は、スマートフォンやソーシャルメディアなども活用しながら、社会の根底にある不平等や差別を世界規模で認識させる大きなきっかけになったと言えるでしょう。

こうした動きを受けて、本レポートでは不動産業界人にアンケートを実施していますが、「不動産業界は、アメリカの過去の政策や慣習が人種差別にどのように加担したか理解していると思う」と回答した人は、わずか25%にとどまるという結果になりました。

一方、回答者の70%は「不動産業界は人種差別に対処し、終止符を打つことができる」とも回答しており、これまでの差別に対する認識が不十分であることを認めつつ「不動産業界は人種差別を撤廃できる」と前向きに捉える業界人も多いようです。

 

投資観点からも重要なダイバーシティ

そのための具体的なアクションとして、まずは自社の採用面を適正化しようとする業界人が増えています。ある大手デベロッパーは、人種の平等化に積極的に取り組む責任について言及しながら「不動産業界は有色人種や女性のビジネス機会を拡大していくことに責任を負っている」と述べます。

また、2015年に大手コンサルティング会社のマッキンゼーがダイバーシティに関するレポート「Why Diversity Matters」を発表して以降、多様性のある企業はそうでない企業に比べて、収益面においても優れるケースが多いと広く知られるようになりました。

本レポートにおいても、あるアフリカ系アメリカ人の機関投資家が「多様性を備えたチームの方がパフォーマンスは高い。つまり、ダイバーシティはマイノリティ当事者はもちろん、投資家のためのものでもある」と指摘しています。

 

住民の「分断」をなくすための取り組みにも注力

ここまで述べてきたことに加えて、不動産業界は業界内における対応はもちろん、“住民の人種的分断”にも対処する必要があるとレポートは伝えます。

多くの住宅建設業者や不動産業者が、過去一世紀にわたってレッドライニング(金融機関が融資を検討する際、低所得階層の黒人が居住する地域を融資リスクが高いエリアとして赤線で囲み、融資対象から除外してきた問題)を行ってきました。こうした過去への反省から、本レポートに協力した不動産業界人の多くは、人種的かつ社会経済的分断がない地域を創出することで、これまで暗黙のうちに行われてきた差別状況を改善しようと努力しています。

また、不当な理由で投資対象外にされてきた地域に積極的投資を行うことは、不動産業界全体にとっても好影響をもたらす可能性があります。ここ最近、機関投資家の多くがインパクト投資(経済的利益だけでなく、社会的・環境的課題を解決する投資)に注力しはじめており、不平等を解消するような不動産投資は、その重要なターゲットとみなされているようです。

不動産業界はこれまで社会的差別の一旦に加担してきた責任を省みて、業界内外へのさまざまなアプローチを通じて変化しようとしていることが、レポートからは読み取れます。

(※1)
https://www.pwc.com/us/en/asset-management/real-estate/assets/pwc-emerging-trends-in-real-estate-2021.pdf

 

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