一度は減った財政赤字額が、再び上昇
非営利の制作団体である「Committee for a Responsible Federal Budget:責任ある連邦予算委員会」の最新の見立てによると、2023年度のアメリカの財政赤字は、前年の9980億ドルの約2倍に当たる2兆ドルに達する見込みです。
2001年以降、アメリカは財政赤字が続いていますが、新型コロナウイルスの流行前までの赤字額は今より小さく、リーマンショック直後の09年から12年を除けば1兆ドル未満でした。その後、パンデミックが本格化した20年、21年にそれまでのワースト記録を大きく更新し、それぞれ3.1兆ドル、2.8兆ドルの大規模な赤字を計上しました。22年にはまた1兆ドルを切ったことから、財政建て直しが進むのではという見方もありましたが、期待を裏切って赤字額は再び膨らみました。
バイデン大統領が過去にアピールしてきた「就任後2年間で財政赤字を1兆7000億ドル削減した」という主張への信頼も揺らぐことになり、24年の大統領選にも少なからず影響があると見られています。
税収減と社会保障コスト増大のダブルパンチ
米エコノミストたちが指摘する赤字拡大の理由を端的にまとめると以下の2点に集約されます。
・市場停滞による税収減
パンデミック下における株式市場や住宅市場は、金融緩和の影響により極めて好調でした。そのため、キャピタルゲイン税収も増えていましたが、昨年利上げがはじまったことで両市場が徐々に失速。現在は株価の低迷が続き、住宅市場も価格は堅調なものの流動性が下がっているため取引額は下降傾向にあります。
利上げが停止または終了すれば市場が再活性化するという指摘もありますが、景気の状況によっては金融政策に関係なく市場の停滞が続く可能性もあります。その場合、税収も戻りません。
・インフレによる支出の増大
アメリカのインフレは、教育、防衛、退役軍人の医療などの公的サービスにも及んでいます。そのため、前年と同等のサービスを提供するだけでもコストが大きく増加してしまいます。加えて、インフレにより生活が立ち行かなくなった人々が続出。社会保障制度の利用者の数も増えています。
インフレが進めば進むほど、支出は大きくなります。かといって、インフレ退治のために利上げを加速すれば市場が破壊され、税収が減ります。支出抑制を進めれば収入が減り、収入増を急げば支出も増えていく。アメリカ財政は難しい状況に立たされています。
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