1. FRB高官ら、年初コメントで利下げに慎重な姿勢
2026年の米国の金利政策は、慎重なスタンスが続くかもしれません。特定の高官が急にタカ派へ転じたわけではありませんが、複数の地区連銀総裁や理事が共通して「利下げを急ぐ局面ではない」との認識を示しているのです。
2025年12月分の米国インフレ指標はすでに出揃っています。米労働省が公表した消費者物価指数(CPI)は、総合で前年同月比2.7%、食品・エネルギーを除いたコアで2.6%となりました。インフレの鈍化は続いているものの、目標の2%には依然として距離がある水準です。
一方で、FRBがより重視する個人消費支出価格指数(PCE)については注意が必要です。政府機関閉鎖などの影響により公表スケジュールが後ろ倒しとなっており、2025年12月分のPCE確定値は本日時点では公表されていません。現段階で「12月PCEが利下げ判断を後押しした」と断定できる材料は存在しません。
こうした環境のもと、2026年1月上旬以降はFRB高官による慎重な発言が目立っています。例えば、シカゴ連銀総裁のグールズビーは1月15日に「説得力ある進展が見えない限り、利下げは慎重に進めるべきだ」と述べました。またニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁も1月12日の講演で「現行の金融政策は中立に近く、直近での追加利下げは必要ない」との見方を示しています。さらにアトランタ連銀総裁のボスティックは1月9日に「インフレは依然として高すぎる」と発言し、物価安定を最優先する姿勢を強調しました。
これらの発言内容を整理すると、労働市場については「想定ほどの悪化は見られない」「過度な緩和で下支えする必要性は後退している」との評価が広がっています。その結果、金融政策は当面、現行水準を維持しつつデータを見極める段階にある、という見方が繰り返し示されています。市場がこれまで前提としてきた「近い将来の利下げは既定路線」という見方は、こうした発言の積み上げによって静かに修正されつつあります。
2. 利下げ期待の弱まりは不動産市場の流動性低下を招く
FRBが政策金利について実際にどのような判断を下すかはまだ不確定ですが、「利下げ期待」が後退したことは間違いありません。
利下げ期待が後退すると、長期金利は下がりにくくなります。住宅ローン金利は政策金利と直接連動するわけではありませんが、「いずれ下がる」という見通しが薄れれば、先行して低下する理由も失われます。その結果、住宅購入を検討する家計は「今すぐ動く必要性」を感じにくくなり、判断を先送りしやすくなります。
住宅市場への影響は、価格よりも先に流動性に表れやすいとされます。買い手は様子見を選び、売り手も低金利で組んだ既存ローンを手放しにくくなります。その結果、取引件数が伸び悩み、「価格は大きく崩れないものの、動かない市場」が続きやすくなります。2026年前半にかけて想定されるのは、まさにこのタイプの市場環境です。
もちろん、今後の経済指標次第で状況が変わる余地はあります。労働市場が想定以上に悪化した場合や、PCEインフレ率が明確に2%へ収れんする兆しが確認されれば、利下げ期待が再び強まる可能性は否定できません。ただし、その判断材料となるデータはこれから公表されるものであり、現時点で前提に置くことはできません。
足元で確定しているのは、「利下げは時間の問題」という単純なストーリーが後退しつつあるという事実です。2026年の米国市場は、金利低下を追い風にした回復局面というよりも、高金利が想定より長く続くなかで、どの分野が耐え、どこに歪みが生じるのかを見極める局面に入りつつあります。
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