【この記事のポイント(Insights)】
- 米国はグリーンランドを「買う」姿勢から「関与を深める」戦略へと転換し、具体的な議論を進めている。
- 資源と地政学的価値を背景に、米中露の北極圏でのせめぎ合いが激化している。
- グリーンランドの自治と独立の可能性は、国際秩序の変化を映す鏡でもあり、日本人も無関係ではいられない。
「グリーンランドを買いたい」──2019年、トランプ大統領が突如発したこの言葉は、世界に衝撃と笑いをもたらしました。ところが、7年経った現在、グリーンランドをめぐる米国の関与は現実の外交・経済戦略の一部としてじわじわと形を変え、継続しています。
なぜ米国は北極圏のこの巨大な島にこだわるのか? そして、買収は非現実的でも、「関与」はどこまで進むのか? 本記事ではその経緯と構造を解きほぐしながら、米国とグリーンランドの関係が映し出す「戦略の地殻変動」に迫ります。
米大統領の「買う」「買わない」発言に振り回されるグリーンランド
まず、グリーンランドに対する米国の姿勢を時系列で振り返りましょう。
発端は2019年のトランプ大統領による「グリーンランドを購入したい」と発言したという報道。最初は多くの人が冗談だと受け取りましたが、米政権内で真剣に検討されていた形跡が後に分かり、トランプ本人も記者団に対してそれを認めています。背景には、グリーンランドが地政学的に極めて重要な拠点であること、そして豊富な鉱物資源を有していることへの関心がありました。
とはいえ、デンマーク政府もグリーンランド自治政府も「島は売り物ではない」ときっぱり否定。トランプ氏はデンマーク首相の発言に憤慨し、予定されていた国賓訪問をキャンセルするなど、外交的にも波紋が広がりました。
「買収」が否定されたあと、米国はグリーンランドへの関与をより現実的な方向に切り替えました。2020年には1,210万ドル規模の経済支援を発表。天然資源や教育分野への支援が柱で、現地には半世紀ぶりに米国領事館も再設置されることに。2021年にはバイデン政権のブリンケン国務長官がグリーンランドを訪問し、「米国はグリーンランドを買わない」と明言。そのうえで、教育・鉱業・観光などで協力関係を築く姿勢を鮮明にしました。一連の動きは、米国がグリーンランドとの関係を「所有」から「制度化された戦略的関与」へと切り替えた象徴でもあります。
ところが2025年、トランプ氏が再び「グリーンランドの主権を確保すべきだ」と発言。再選を狙う選挙戦の一環として、強硬姿勢を打ち出しました。この発言はデンマークとグリーンランドの両政府を激怒させ、デンマーク王が異例の現地訪問を発表する事態に。グリーンランド自治政府も「我々はデンマークと共にある」と明言し、米大統領の発言が住民の不安をかき立てたとして、メンタルヘルス調査の実施を表明しました。
デンマークの一部でありながら自己政府が存在する、グリーンランドの特殊性
北米大陸とユーラシア大陸の間に位置する巨大な島であるグリーンランドは、実は世界的に見てもかなり特殊な位置づけの地域です。というのも、デンマーク王国の一部でありながら、2009年に施行された「自己政府法(セルフルール)」により、高度な自治権を持っているからです。議会と政府を持ち、教育や鉱物資源の管理は自治政府の管轄。外交・防衛は引き続きデンマーク本国が担っています。
注目すべきは、この法律により「将来的に住民投票で独立を選ぶ権利」が明記されている点です。つまり、グリーンランドは法的に独立への道を持ちつつ、経済・安全保障の現実から自立を急がない選択をしている状態です。
この位置づけに至るまでには長い歴史的経緯があります。18世紀以降、デンマークの植民地として統治されていたグリーンランドは、第二次世界大戦後の世界的な脱植民地化の流れを受け、1953年にデンマーク憲法の改正によって「本国の一部」とされました。これにより一応の平等な地位を得たものの、実質的な自治は限定的でした。
その後、1979年に「ホームルール法」が制定され、地方自治の枠組みが整備されます。これを発展させる形で2009年の自己政府法が導入され、デンマーク政府との間で役割分担が明確化されたのです。こうした経緯から、グリーンランドの人々は自己決定権についての意識が高く、それだけに米国の横暴な態度に強い反発の声が上がっているのです。
米国が欲しがる「資源」と「地理的位置」
反発を受けながらも米国がグリーンランドを欲しがる理由は大きく2つあります。
まず1つは、領土内にレアアースやグラファイト、リチウムなどの希少鉱物が多数存在すること。EUが定める34種の戦略鉱物のうち25種が、米国が指定する重要鉱物50種のうち43種がグリーンランドで確認されているという分析もあり、米中対立の激化によりレアアース供給が不安定になるなか、代替供給源として期待が高まっている地域の1つです。ただし、現時点では採掘量はそれほど大きくありません。レアアースが豊富に埋蔵されていることで有名な南部のクヴァネフィールド鉱床は、ウランを含むため現政権は環境上の理由で採掘を禁止しているからです。代わりにウランを含まない鉱床や、水力発電と組み合わせたグリーン鉱業の開発に取り組んでいる段階です。
もう1つの理由は、その地理的位置。北極圏に位置し、米本土とヨーロッパ、ロシアを結ぶ戦略線上にあるこの島は、冷戦時代からミサイル早期警戒や宇宙監視の拠点となってきました。現在も米空軍のピトゥフィク宇宙基地(旧チューレ基地)が存在し、北米防衛における前哨として機能しています。近年はロシアや中国が北極圏への影響力を強めていることから、米国は「同盟に頼るのではなく、自ら戦略的に押さえる」方針へと動いているといわれます。
島民の意思に反し着々と進む、米国のグリーンランドへの関与戦略
これらの理由に加えて、トランプ大統領が今このタイミングでこの話題を持ち出したのは、単なる外交戦略だけでなく、保守層へのアピールという内政上の意味合いもありそうです。同盟だからと無条件に気を使わず、米国の利益を優先した要求をする姿勢を見せることで、強いアメリカと実行力のあるリーダーを印象付けようという腹づもりが透けて見えます。
一方で、米国政府・議会では「買収」よりも「影響力の制度化」を目指す動きが広がっており、鉱山開発、観光、教育、インフラ協力などで民間・政府の関与が進んでいます。金融市場への直接的な影響は限定的ですが、北極圏の鉱物・防衛・物流ルートに関する企業やインフラ投資においては中長期の注目テーマになり得ます。「買わずに関与する」戦略は、着実に進められています。
グリーンランドをめぐる静かな攻防は、今や地球規模の資源・安全保障・外交戦略の最前線となりました。日本にとっても、資源供給網や北極航路、国際秩序のあり方という観点から、グリーンランドは決して遠い存在ではありません。無関心でいられる段階は過ぎ去りました。グリーンランドは今後どのような変化を迫られるのか、しっかりと見届け、私たちにはどんな影響が及ぶのかを判断する必要があります。
注目記事
なぜ、こんなにも多くのお客様にご支持を頂いているのか(その1)
なぜ、こんなにも多くのお客様にご支持を頂いているのか(その2)
※この記事は、掲載日時点の情報を基に作成しています。最新状況につきましては、スタッフまでお問い合わせください。
アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋
オープンハウスの投資メソッドを
無料ダウンロード
アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋
オープンハウスの投資メソッドを無料ダウンロード
この資料では、以下の内容をご紹介しています。
以下の内容をご紹介しています。
- アメリカ不動産投資が「今」注目される4つの理由
- スケールが違うアメリカ投資市場の基礎知識
- 日本とは全く異なる不動産の市場環境と投資効果
- 投資エリア選びの重要さと注目の成長エリア
さらに知りたい方は簡単1分
資料をダウンロードするアメリカ不動産投資、始め方がわからずお悩みではありませんか?
2020年の税制改正後も、アメリカ不動産投資は依然として「資産分散」「減価償却」などのメリットで注目を集めています。
ただ、アメリカを含む海外不動産投資に興味はあるけれど「言語の壁がある」「現地の事情がわからない」「リスクが高そう」といったお悩みも多く見られます。
実際、日本からアメリカ不動産投資を始めようとしても、現地の法律や税制の違い、物件管理の難しさ、為替リスクなど、様々な課題に直面することがあります。
しかし、適切な知識とサポートがあれば、アメリカ不動産投資は魅力的な資産運用の選択肢となります。安定した不動産需要、基軸通貨ドルでの資産保有、長期的な不動産価値など、その魅力は2020年の税制改正後も健在です。
そこで、アメリカ不動産投資に興味をお持ちの方へ、『アメリカ不動産投資成功ガイド』をお届けします。オープンハウスがこれまで5000棟超、3000名以上の投資家様をサポートしてきた実績をもとに、投資の基礎知識から最新の市場動向、成功事例までをわかりやすくまとめました。
オープンハウス独自の強み、アメリカの複数都市に展開する現地法人による直接管理と日本語でのきめ細やかなサポート体制についてもご紹介しています。お忙しい投資家様のお手を煩わせず、英語不要でアメリカ不動産投資を実現できるワンストップサービスです。
ドル建てでの資産運用を実現したい方、海外投資に興味はあるけれど不安を感じている方は、ぜひこの機会にダウンロードしてみてください。
アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋
オープンハウスの投資メソッドを
無料ダウンロード
アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋
オープンハウスの投資メソッドを無料ダウンロード
この資料では、以下の内容をご紹介しています。
以下の内容をご紹介しています。
- アメリカ不動産投資が「今」注目される4つの理由
- スケールが違うアメリカ投資市場の基礎知識
- 日本とは全く異なる不動産の市場環境と投資効果
- 投資エリア選びの重要さと注目の成長エリア
さらに知りたい方は簡単1分
資料をダウンロードする



