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米国で巻き起こる「債務上限廃止」の議論

 

1. 米国財務省助言委員会、債務上限の廃止を提言

2025年4月末、米国財務省の借入助言委員会(TBAC:Treasury Borrowing Advisory Committee)が、連邦政府の債務上限そのものを廃止すべきとする提言を行いました。このニュースは、米国の財政政策に大きな転換点が訪れる可能性を示すものであり、国内外の経済関係者の間で大きな注目を集めています。

TBACは、ウォール街の主要金融機関や専門家たちから構成されるアドバイザリーボードで、四半期ごとに米財務省へ国債発行に関する助言を行っています。議決権こそないものの、その提言内容は市場に対して非常に影響力があります。

今回の提言では、現在の「債務上限」制度はすでに形骸化しており、むしろ米国債の信頼性や市場の安定性を損ねていると明言。「政府の支出はすでに議会で承認されており、債務上限で二重に制限するのは無意味。政治的な人質になっているだけだ」との立場です。

これまで米国では、定期的に債務上限が問題となり、そのたびに議会が「上限引き上げ」や「一時停止」という応急処置で乗り切ってきました。直近では2023年にもギリギリの政治交渉が続き、一部政府機関の閉鎖が現実味を帯びました。しかし今回の提言は、そうした“つぎはぎ式”の対応とは一線を画すものです。TBACは、上限の引き上げや一時停止ではなく、制度そのものを完全に撤廃するよう呼びかけました。つまり、政府が必要なときに必要なだけ借り入れを行えるようにするという構造の大転換を求めているのです。

この提言の背景には、2025年1月に債務上限の一時停止措置が終了し、新たな債務上限(約36.1兆ドル)が復活したことがあります。その結果、財務省の資金繰りは急速に厳しくなり、現金残高が大幅に減少。CBO(議会予算局)などの見通しでは、2025年夏には政府が支払い不能=デフォルトに陥るリスクが高まるとされていました。

こうした状況下でのTBACの提言は、政府が財政の綱渡り状態から脱し、市場に無用な不安を与えないようにするための一手といえそうです。

2.概ね賛同が集まるも、一部からは懸念の声

この「債務上限廃止」提言に対し、市場や専門家からは概ね肯定的な声が多く聞かれました。
まず金融市場は、たびたび繰り返される債務上限問題にうんざりしていた側面があります。特に短期国債市場では、期限が近づくと利回りが急騰し、投資家が警戒感から債券を敬遠する事態も少なくありません。今回の提言は、そうした“不安定さの元凶”を取り除く提案として歓迎されました。

また、格付け機関もこの議論を注視しています。米国は過去にS&PやFitchから国債の格下げを受けており、その主因の一つが「政治的に不安定な債務上限制度」でした。仮に廃止が実現すれば、将来的に米国の格付けが回復する可能性もあると見られています。

エコノミストたちも、「すでに支出は議会で承認されているのに、借入れの段階で再び制限するのは制度的に矛盾している」とし、制度撤廃の合理性を強調。中には「上限を残しておいても、何の歯止めにもなっていない」とする意見もありました。

ただし、慎重な立場を取る声もあります。特に共和党を中心とする保守派の一部からは、「債務上限は象徴的であっても財政の無駄遣いにブレーキをかける装置だ」という主張が根強くあります。たとえば、ある議員は「サイドブレーキを完全に外すようなものだ」とコメントし、政府支出が野放図になるのではという懸念を表明しています。

政界の反応も分かれました。民主党は概ね賛成ムードで、すでに数年前から上限制度の廃止を訴えてきた議員も多くいます。一方で、与党である共和党は基本的には反対の姿勢を崩していませんが、トランプ大統領が「債務上限を撤廃してもよい」と発言したことで、党内の空気が微妙に揺れ動いています。

では、実際に債務上限が廃止された場合、どんな変化が起きるのでしょうか。

まず明らかなのは、米国債の信用リスクが大きく後退するという点です。市場は政治的な綱引きに左右されず、冷静に米国債を評価できるようになります。その結果、利回りの急変動も起きにくくなり、政府の借入コストも抑えられる可能性があります。

加えて、ドルの基軸通貨としての信頼性も強化されます。これまでは「世界で最も安全な資産」である米国債が、政治の混乱でデフォルト寸前まで追い込まれるという“あり得ない”事態が何度も起きてきました。上限を撤廃することで、そうした事態を根本的に防げるというわけです。

債務が膨らむことへの懸念はあるものの、総じていえば、債務上限廃止は“財政健全化の放棄”ではなく、“不必要な危機回避のための制度見直し”ととらえるのが妥当でしょう。重要なのは、支出や赤字に対する本質的な議論を、もっと建設的に、継続的に行うことです。

いまや米国だけでなく、世界経済にも影響を及ぼすこの「制度的爆弾」をどう扱うか。議会の今後の判断が注目されます。

 


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