米住宅ローン金利が7%を超え、住宅販売件数は激減。それでも……
日本人が為替で騒いでいる間に、アメリカの利上げはハイペースで進んでいます。30年固定の住宅ローン金利は、サブプライムローン問題が表面化する直前の水準をも超え、ついに7.08%(10/26現在)に達しました。この影響により、ローン申込数は激減。つまり、いま、アメリカ人にとってマイホームの夢が遠のいているという状況が発生しています。
今にも『アメリカ不動産もついにバブル崩壊か?』的な記事が出てきそうな予感がプンプンしますが、それは早合点です。確かに、不動産会社やエージェントは、家が売れなくて困っているかもしれませんが、アメリカ不動産、とりわけ住宅やアパートのオーナーはむしろ笑いが止まらない状況にあります。なぜそう言えるのか、その仕組みを解説しましょう。
住宅購入者が減ると、賃貸物件の賃料が上がる
ローン金利が上がったことで、確かに住宅販売数は減りました。しかし、住宅価格は最盛期よりは伸び率が鈍っているものの、前年同月比ベースでは上昇を続けています。売れなくなった≒需要が減ったはずなのに、なぜ価格が下がらないのでしょうか?
それは、持ち家需要の減少は、賃貸需要の増加と表裏一体だからです。金利上昇により家が買えなくなった人たちも、住む場所は必要です。彼らに残された選択肢は賃貸しかありません。賃貸需要が増えても、賃貸物件数は急には増えません。つまり物件が不足しているわけですから、賃貸オーナーは高いインフレも相まって強気に賃料上げすることができるのです。借り手が新賃料を受け入れて住み続けてくれればラッキー。もし出ていってしまったとしても、別の借り手がすぐ見つかるので問題ありません。
これは机上の空論ではありません。北米の賃貸プラットフォーム「Rent.com」のレポートによると賃貸物件の平均家賃は、寝室1部屋の物件で1,722ドル(前年比+25.5%)、寝室2部屋の物件で2,047ドル(前年比+26.8%)。大きく値上がりしていることが分かります。低所得者を中心にインフレで苦しんでいる人が大勢いる手前、表に出して喜べませんが、中高級住宅の賃貸オーナーたちは利回り向上に湧いていることでしょう。日本人オーナーであれば、為替メリットもプラスされるのでなおのこと好調なはずです。
安すぎも高すぎも✕。ピンチに強いのは、「中の上」
このまま高金利が続くと、住宅価格の伸びは止まり、いずれ頭打ちになるかもしれません。しかしそれは賃貸物件オーナーにとって、賃料アップのチャンスとも言えるのです。
ただし、すべての物件が賃料アップできるわけではありません。例えば、市場で最も安価な小型の物件で賃料を上げるのは難しいでしょう。ローン金利上昇により賃貸に流れてくる人々は、住宅購入を諦めたとはいえある程度の可処分所得があります。賃貸で我慢する分、それなりの部屋に住みたいはずです。最も安価な物件は候補に入りませんから需要が増えず、賃料も上げられないのです。また、高価すぎる物件も同様です。こうした物件は、いつでも住宅購入できる資産がある人々が、何かの事情であえて借りているものです。ですから、ローン金利がどう動こうと需要にはあまり影響がないのです。
結局強いのはどんな物件かというと、中の上くらいの価格帯で、持ち家にも借家にもできるスペックの物件です。この価格帯の物件は、住宅購入を諦めた人たちも手を出しやすく、かつ設備グレードも満足できる水準であることから、賃料上げのトレンドに乗りやすいと言えます。さらに、景気が上向いた際には持ち家用として売却できるという利点もあります。
こうした物件を保有していれば、住宅が売れにくい不況下では賃料上げによりインカムゲインを増やせて、景気が上向き売買市場が活気づいたタイミングで売却することでキャピタルゲインも最大化できます。
今から買うにはもう遅いかと問われることもありますが、供給が少ない今のタイミングであえて突っ込むというのも、投資の選択肢としてはありだとお答えしています。供給の少なさは、価格上昇要因の1つだからです。物件価格はすでに上昇していますが、これ以上の上昇も見込めますし、今なら賃料収入も安定しています。「ピンチはチャンス」というとチープに聞こえますが、経済に歪みが生じているときにこそ商機があるのは事実でしょう。今のアメリカ不動産市場をバブル崩壊前夜と見るか、チャンスと見るか、投資家の知性と胆力が問われています。
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