1.高金利と経済不安が影響、買い控え傾向続く
Redfinが2025年4月に公表した最新レポートによると、2024年第4四半期に米国の不動産投資家が購入した住宅は4万7,004戸で、前年同期比3.9%減でした。数字だけを見ると2016年以来の低水準で、投資家シェアも17.1%と2020年の水準まで後退しています。
買い控えを招いている最大の要因は7%前後で高止まりする 30年固定金利です。ローンを組んで短期転売を狙うフリッパーや、賃料収入でローンを返す「ママ・パパ大家」にとって、資金コストが急騰してしまったのは致命的でした。加えて、インフレ再燃やトランプ政権の高関税政策による景気減速観測が“様子見ムード”を強めています。
地域差も鮮明です。フロリダ勢は失速組で、オーランドが28%減、マイアミも20%超減少。ハリケーン保険や HOA(管理費)の高騰で利回りが細り、投資マネーが逃げています。一方、2022年に価格調整が進んだ西海岸は反発組。シアトルは投資家購入が 30%超増え、サンフランシスコ湾岸も20%前後伸びました。「値ごろ感+ハイテク復調」で買い戻しが起きている格好です。ただ全国トレンドは減速が優勢で、「一部の例外を除き、投資家はまだブレーキを踏んだまま」というのが現状です。
2.引き上げた資金は安定資産へ。国債や高金利預金が人気に。
投資家の買い控えが鮮明なのは上述の「ママ・パパ大家」に代表される中小規模の個人投資家です。3~10戸の物件を保有する彼らは、購入件数全体の6割を占める住宅市場の主役ですが、金利上昇でリフォーム資金や運転資金の借入コストが跳ね上がり、採算が合わなくなりました。若年層や新規参入組は特に打撃が大きく、「今は動かない」という決断が主流です。外国人投資家の間でも温度差があり、中国勢は資本規制とフロリダ州の対中購入規制で米国市場から後退気味。一方、カナダやメキシコの投資家は小幅ながら買いを維持しています。
では、彼らの資金はどこへ行ったのでしょうか。一番人気は米国債と高金利預金です。10 年物国債利回りが 4~5%台で推移し、預金でも 5%近い利率が得られる今、わざわざ流動性が低い不動産に縛られる理由が薄れています。次に目立つのが 金(ゴールド) と高配当株への分散投資。昨年急騰した金相場はインフレヘッジとキャピタルゲインの両面で魅力があり、株式市場も AI ブームを背景に好調なため、「安全資産+成長株」というハイブリッド投資が増えています。また一部の富裕層は、米国より利回り妙味がある 海外不動産(東南アジアやオーストラリアなど)へ視線を向け始めました。
専門家の予測は総じて慎重です。BlackRock は「2025 年は高金利環境が続き、投資家買い控えは少なくとも年内いっぱい継続する」と指摘。一方で CoreLogic は「住宅不足の構造問題が解消していないため、価格が 5~10%下がればキャッシュ豊富な投資家が素早く戻る」とみています。鍵を握るのは FRB の利下げタイミングと景気サイクル。利下げが本格化する、あるいは局所的に値ごろ感が出る――そのどちらかがそろったとき、投資マネーは再び動き出す可能性が高いです。いまは“待ち”の時間ですが、次の波を狙う投資家たちは資金を国債や預金で温存しつつ、静かにチャンスをうかがっているようです。
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