賢人たちを賢人たらしめている行動や考え方は。そして、大切にしている習慣は──。
インタビューを通じて、そんな共通点を探っていきます
日陰の建築物にデザインで陽を当てる
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失礼ながら谷尻さんは、建築の世界でいわゆるエリートの道を歩んでこられたわけではありませんでした。
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専門学校を卒業して地元の設計事務所に就職したのがスタートです。そこでは建売住宅の設計を、年間100棟ほどしました。
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年間100棟! なかなか聞かない数字です。
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朝に図面を描いて夕方には確認申請の書類を書いているような感じでした。10区画分の建売住宅10棟の設計を同時に進めたり、開発許可も自分で取ったり。おかげで図面を描きながら斜線制限や日照権なども同時に考えられるように鍛えられました。
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住宅設計の基礎体力が身についたんですね。
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次第にデベロッパーから設計を依頼されると、ごく普通の建売住宅のプランと同時にデザイン性を追求したプランの2案を提案するようになりました。もちろんデザイン住宅はまったく受け入れられず、全部却下。キューブ型の住宅を提案したら「屋根は三角でいいんだよ」なんて言われたりして。そんなことを繰り返すうちにどうしてもデザイン住宅の仕事がしたくなって、会社を辞めました。ところが次に行くつもりだった会社の面接には落ちてしまったんです。
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思うようにいかないですね。
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24、5歳の頃でした。どうしようかと案じていたときに友人が「ウチの設計事務所の仕事を手伝ってくれないか」と声をかけてくれて、アルバイトで仕事をするようになりました。その事務所も結局は経営が傾いてしまって、仕方なく独立することになったんです。ただ幸いなことに事務所経由で知り合った人が声をかけてくれ、少しずつ仕事が入るようになりました。店舗の設計を頼まれたときは、全然経験がないのに「得意です」なんて言いながら。とにかく仕事は断らずに全部受けました。やりながら勉強していった感じですね。何しろ学歴があるわけでもないし、名のある先生のように有名な建築物を手がけたわけでもありませんから。
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安藤忠雄先生のタイプ?
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よく言われます。“ソフト安藤”とか。まあ、ストリート系の建築家です。断らずに何でも引き受けるから、キャバクラなんかも手がけました。陽の当たらない商売の店舗かもしれないけれど、だからこそデザイン次第でいくらでもおしゃれにできるし、陽を当てられると思うんです。それが建築家である自分の使命ですから。
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谷尻さんの作品はレトロというか、郷愁を感じます。
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それはすごく嬉しい言葉です。新しいデザインをつくりたいとは思っていますが、決して誰も見たことのないデザインではなくて、誰もが知っている新しさを表現したいんです。人は過去に思いを馳せ、記憶を積み重ねながら生きています。そんな思い出と新しいデザインをミックスして、“懐かしい未来”をつくりたいと思っています。
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なるほど、だから落ち着ける作品が多いんですね。
※この対談は2022年11月4日に弊社「GINZA XI」ラウンジ(東京・銀座)にて行われました。
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