デフォルト回避のせいで、銀行破綻リスクが高まる?
2023年6月3日、上下両院を通過した債務上限引き上げ法案にバイデン大統領が署名を行い、少なくとも2025年1月までは米国のデフォルトはほぼなくなりました。巨大なリスクを回避できたことへの安堵感からか、市場はポジティブに反応し米国株式の価格は軒並み上昇しましたが、その陰で顔を青くしている人々がいます。
それは、地銀破綻の余波で信用不安が広がっている銀行業界です。彼らにとって最大のリスクは、預金残高が減少することです。預金が著しく減れば、貸し付けや資産運用などの業務がままならず、経営に大きな悪影響を及ぼすからです。一般に、預金が大きく減少するのは、破綻を懸念する預金者たちが一斉に預金引き出すこと、いわゆる取り付け騒ぎですが、今後数ヶ月の間は別の理由でも預金が大量流出する可能性があるのです。
大量に発行される国債が、銀行から預金を奪う
その理由というのが、政府による大量の国債発行です。債務上限引き上げ法案そのものは、政府の手元資金を増やしません。新規の借り入れを増やせるようになっただけなので、政府が目前に迫る利払い資金を手に入れるには、大量の国債を発行する必要があります。
大量の国債が市場に流通するということは、需要に対し過剰な供給が行われるということであり、それによって国債の利回りは上昇し、投資商品としての魅力が高まります。すると、銀行預金を解約し、国債に持ち替える人が増えるのです。
JPモルガンの試算によると、政府は利払いのために2023年末までに1兆1000億ドルの短期財務省短期証券を発行する必要があり、そのうち8500億ドルは直近4ヶ月間で発行されます。アナリストのなかには、リーマンショックやパンデミック時に次ぐ規模の国債発行額になるだろうと予想する人もいます。
信用不安が広がっているなか、国債によって預金をさらに奪われるかもしれない銀行。泣きっ面に蜂の状況ですが、これにより破綻の連鎖が継続すると景気全体にも悪影響なのは間違いありません。預金の動きに注目です。
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