1.米連邦準備制度理事会(FRB)の元上級顧問が、不正に取得した機密経済情報を中国の情報機関に提供
2025年2月1日、複数の米国メディアが、米連邦準備制度理事会(FRB)の元上級顧問であるジョン・ハロルド・ロジャーズ氏がスパイ容疑で逮捕されたと報じました。ロジャーズ氏は、FRBの機密経済情報を不正に取得し、中国の情報機関に提供した疑いが持たれています。
米司法省によると、ロジャーズ氏はFRBでの職務を利用し、内部の機密データを違法に取得していたとされています。特に、FRBの政策決定に関する未公開の経済予測や市場影響分析にアクセスし、個人のメールアドレスを通じて外部に送信していたとみられます。さらに、ロジャーズ氏は中国の大学教授として講義を行う名目で渡航し、その際に中国の情報機関の関係者と接触していた可能性があると報じられています。
米当局は、「ロジャーズ氏の行為は、米国の経済安全保障を脅かすものであり、厳正に対処する」との声明を発表しました。一方で、ロジャーズ氏の弁護士は「彼の行動は学術的な研究活動の一環であり、スパイ行為とは無関係である」として容疑を否認しています。
中国外務省は、この件についての詳細なコメントを避けつつ、「中国は常に法の支配を尊重し、他国の内政には干渉しない」との立場を示しました。しかし、米中間で続く経済安全保障をめぐる対立の文脈を考えると、中国側がロジャーズ氏の活動をどのように認識していたのかは、今後の捜査で重要なポイントとなるでしょう。
2.過去のスパイ疑惑事件と照らし合わせると、有罪の可能性が高い
ロジャーズ氏の事件は、過去に米国の公的機関の要職者が中国の情報機関に機密情報を提供した疑いで逮捕・起訴された事例と類似しています。これまでの事例を踏まえると、有罪判決が下される可能性は高いと考えられます。
- アレクサンダー・ユク・チン・マー事件(2024年)
元CIA職員であるマー氏は、米国の機密情報を中国に提供したとして逮捕されました。2024年9月に有罪判決を受け、禁錮10年の刑が言い渡されています。
- ロン・ロックウェル・ハンセン事件(2018年)
元米国防情報局(DIA)職員のハンセン氏は、中国の情報機関に対し、米軍の機密情報を提供しようとした疑いで逮捕されました。2019年に有罪を認め、10年の禁錮刑を受けました。
- ジンチャオ・ウェイ事件(2023年)
米海軍の現役兵士であるウェイ氏は、軍事機密を中国に漏洩したとして逮捕されました。裁判は継続中ですが、有罪判決の可能性が高いとされています。
上記の事例と照らし合わせると、機密情報の漏洩が意図的であった場合、数年から10年程度の禁錮刑が科される可能性があります。また、FRBの経済機密は国家の金融政策に直結するため、米国政府はこの事件を非常に深刻に受け止めていると考えられます。
近年、米国は経済安全保障の観点から、中国との貿易や投資の規制を強化してきました。本事件はその流れを加速させる要因となるでしょう。特に、米政府が中国の情報機関による経済スパイ活動を重視することで、今後さらなる制裁措置が取られる可能性があります。中国企業による米国投資やM&A(企業買収)にも影響するでしょう。
また、日本人であっても、米国不動産投資に関わる場合は完全に無関係ではいられません。というのも、中国人の米国不動産投資への規制は現在進行系で強化されており、その制限がさらに厳しいものになるかもしれないからです。いまや米国不動産を最も購入する外国人である中国人への投資規制は、需要を減らす要因です。極端な規制は住宅価格の混乱につながりかねないため、なるべくマイルドな規制を期待したいところですが、今回のスパイ疑惑はマイナス材料です。
今後、ロジャーズ氏の裁判の行方によって、米中関係の緊張がさらに高まる可能性があり、経済界にも大きな影響を与えることが予想されます。
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