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「インフレ削減法案」がアメリカで可決、気候変動対策にも本格着手か

Highlights

  • 2022年8月7日、米上院で「インフレ削減法案」が可決
  • 物価高騰の抑制はもちろん、気候変動対策的な性質も極めて強い法案
  • 環境への好影響が期待される一方、製造業への負担が懸念される側面も

インフレ対策を目的とした「インフレ削減法案」が米上院で可決へ

民主党のバイデン政権が取りまとめた「インフレ削減法案」が2022年8月7日、米国連邦議会上院で可決されました。

インフレ削減法案はその名の通り、インフレ対策を目的として計画された法案。加速する物価高に歯止めをかけるべく、医薬品の価格引き下げや大企業や富裕層への増税、気候変動対策費の確保などの項目が盛り込まれた法案となっています。

アメリカの上院議会は、与党である民主党と野党である共和党の勢力が拮抗しているため、この法案を通すには民主党員が一致団結する必要があります。しかし、一部の民主党員には反対姿勢を示す者もおり、取りまとめがやや難航していました。そうしたなかで2022年8月4日、反対派の最後の一人であったシネマ議員が支持に回る旨を発表し、可決に至った次第です。

 

インフレ対策だけでなく、気候変動対策の側面も非常に強い法案

インフレ削減法案は、一見、物価高騰を抑止するための法案に思えますが、気候変動対策の性質も極めて強い法案です。民主党が作成した法案要旨によると、歳出総額4,330億ドルのうち、約85%にあたる3,690億ドルを気候変動対策費用に充てることになっています。

このうちの約300億ドルは、企業がアメリカ国内でソーラーパネルや風力タービン、バッテリー、重要な鉱物処理施設を製造する際の投資への税控除として使用される予定です。そのほか、クリーンエネルギー製造施設の建設投資に100億ドル、公益事業団体のクリーンエネルギー移行に約300億ドル、化学・鉄鋼・セメントの工場などの製造業への汚染削減設備導入に60億ドルなどが充てられることとなっています。

さらに、低所得世帯限定ではあるものの、住宅の電化や屋上ソーラーパネルの購入・設置費用に対する税控除の予算として90億ドルが設けられているほか、EV車をはじめとするクリーン自動車を購入すると 7,500 ドルの税額控除が受けられるなど、多額の予算を費やして国内産業のクリーンエネルギー化を一挙に推し進める計画です。


アメリカにも最新鋭兵器の提供を要求するトルコ

さらに、トルコの要求の矛先はアメリカにも向かっています。

エルドアン首相は、アメリカに対して最新鋭の兵器の提供を要求。トルコは以前、ロシアから地対空ミサイルシステムを購入したために、当時政権を担っていたトランプ元大統領の不興を買い、成約間近だった戦闘機の販売をキャンセルされた過去があります。

国際社会の混乱に乗じ、過去に買い損ねた兵器を再び手に入れようとするトルコの態度に米国議会は警戒感を上昇。下院は年次軍事政策法案の修正案を承認し、バイデン大統領に対し2つの要求を行いました。1つ目が戦闘機を売却する場合、アメリカの国益にかなうことを証明すること。2つ目が、トルコが戦闘機を用いて隣国のギリシャ領空を侵犯しないと証明させることです。

ギリシャもまたNATO加盟国であり、現在、トルコと激しい領土紛争を繰り広げています。アメリカの兵器販売によって、NATO加盟国同士の対立を深めることにつながっては本末転倒なため、慎重な判断が必要な局面だと言えるでしょう。

 

環境への好影響が期待される反面、製造業には大きな負担に?

クリーン産業への大規模な支援を行う一方、法案には温室効果ガス排出に対する厳しい対応も盛り込まれています。

例えば、石油およびガスの生産者とパイプライン事業者に対して課されるメタン排出への手数料。2026年までにメタン排出量が一定の閾値を超えた場合、1トンあたり1,500ドル、二酸化炭素の場合は1トンあたり50ドルに相当する額の手数料を徴収する予定です。

これらの支援と罰金、双方の取り組みがうまくいけば、アメリカの温室効果ガス排出量は2030年までに2005年水準から4割カットできる見込みだといいます。パリ協定を受けてアメリカは「2030年までに温室効果ガス排出量を2005年比の50~52% 削減する」と宣言しており、この法案はその公約達成の最重要ピースであるとみなしてよいでしょう。またアメリカではここ最近、熱波や干ばつ、トルネードなどの自然災害が年々増加しており、その歯止めのためにも本法案に期待がかかっています。

一方、この法案が製造業に大きな負担をもたらす可能性があるという指摘も無視できません。全米製造業者協会(National Association of Manufacturers :NAM)の会長兼CEOのジェイ・ティモンズ氏はTwitterで「製造業者は、本法案が新たな治療法や療法(原文では“cures and therapies”。経営や事業の建て直しを指すと思われる)を阻害することを引き続き懸念している」と発言。法案への懸念を露わにしました。

いずれにせよ、環境だけではなく経済面にも大きな影響を及ぼしそうなこの度のインフレ削減法案。この思い切った変化が、今後のアメリカをどのように変えていくのか、注目していきたいところです。

 


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