賢人たちを賢人たらしめている行動や考え方は。そして、大切にしている習慣は──。
インタビューを通じて、そんな共通点を探っていきます
五右衛門風呂の生家が建築家としての原点
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谷尻さんの建築作品を拝見していると、どことなく少年ぽさを感じます。どんな子供時代でしたか。
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広島の田舎に育ちました。家から歩いて1、2分のところに川が流れていて、学校から帰ったら釣り竿担いで釣りに行き、夕方になったらおばあちゃんが「ご飯だよ」と呼びにきて、そして晩ご飯を食べ終わったらまた釣りに行くような子供時代でした。夜は鈴をつけて釣ったものです。
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なぜ鈴を?
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アタリが来たら鈴の音でわかるようにですね。今思うと、あの体験は私の想像力をかなり磨いてくれた気がします。
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大自然の中で伸び伸びと育ったんですね。
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魚屋さんからもらってきた発泡スチロールの箱を船にして川を下ったり、自分で遊びを発明していました。
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そうした体験が谷尻さんの建築には色濃く反映されているんですね。
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現在では工業化された資材や設備を使うことで早く、合理的に建てられますが、昔はそんなものはなかったから頭を使って何とかいい方法がないかを考えたと思うんです。そうした思考を大切にしたいから、私の設計した建築物は手のかかるものが多いですね。そもそも私が生まれたのは古い町家で、台所から居間へ行くのに雨が降っていたら傘を差さなきゃいけないような家でした。五右衛門風呂でしたし。
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傘を差して行き来する家なんて、面白いじゃないですか。
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でも子供心に、とてもイヤでしたよ。当時でさえそんな古い家は他になかったから、大人になったらお城を建てるって言ってました。
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そういう環境も建築家としての原体験に通じるのでしょうね。
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そうなんです。おかげで季節の移ろいとか、気候とかに敏感になりました。両サイドの窓を開ければ気圧の差で風が通って十分涼しくなるということを自然に学んだから、今もエアコンなんか使わずに暮らすにはという発想をするんです。実家に住んでいたときはとてもイヤだったけれど、今振り返れば自然エネルギーを大切にしたとてもエコな家でした。現代なら最先端の住宅でしょうね。
※この対談は2022年11月4日に弊社「GINZA XI」ラウンジ(東京・銀座)にて行われました。
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