賢人たちを賢人たらしめている行動や考え方は。そして、大切にしている習慣は──。 インタビューを通じて、そんな共通点を探っていきます
ルーティンを大切にすることで、敏感になる
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先生は日々の生活でどんな習慣を大切にされていますか。
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やることを絞るようにしています。一番好きなのは読書ですから、できるだけ他のことはやらないで、本を読んで考える時間にあてています。テレビは一切見ないし、お酒も飲まない。普段は朝の7時頃から4時半くらいまで仕事しますが、お昼ご飯も食べないです。あとは、打ち合わせは一日でまとめて行い、取材も一日にまとめて済ませるようにしています。そして、考える日は、誰にも会わないで一日中とことん考えています。
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ジムに通っていらっしゃいますよね。
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もう20年くらい通っていますが、別に目的があるわけじゃないですよ。トライアスロンに出るとか、絶対にあり得ないし。心と体を整えるための習慣です。
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トレーニングとかではなくて、あくまで習慣なんですね。
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ええ。週に3回、完全にルーティンになっています。だからこそ、ちょっとした心身の変化にもすぐ気づくことができるんです。
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先ほど(※1)、柿ピーのお話がありましたが、楠木先生にとってお金はどういう存在でしょう。
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フライドポテトの話もあるんですよ。マックのフライドポテトが好きなんですが、Lサイズ一つじゃ物足りないんです。でも、大学院生のころは、二つは買えなかった。だから、今に見てろよ、いつかフライドポテトのLを二つ買ってやるって思ってました。
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野望と言っても、フライドポテトのLが二つ。
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そうそう、貧乏だったので、ハードルはものすごく低いんです。大学の仕事に就けたことで、このハードルはクリアーしてしまったから、お金に対する欲求はもうあまりない。というより、あまり考えたくない。せっかく汗水らして稼いだお金が減るのは我慢できないので、とにかくリスクテイクをしたくないのです。すべての情報が市場価格に反映されているという効率的市場仮説を信じているので、株式のようなオープンな市場で積極的に投資をしても、とても勝てるとは思えないんですよ。そもそもその方面のことを考えるのが面倒で、そんな時間があるなら本を読んでいたい。とはいえ、マイナス金利だとさすがに銀行に預けっぱなしというわけにもいきませんから、信託銀行にお任せで、債券中心のガチガチに低リスクなポートフォリオで運用をしています。
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お金が減っていくのが許せないんですね。
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そうなんです。ようするにお金が嫌いじゃないんですね。
対談後記 楠木先生から折に触れ「個人授業」を受け続けて20年。先生から受け取ったコンセプトを自分なりに解釈しながらビジネスに活かしてきました。(以下、全く対談後記らしい内容でありません。また、内容には「楠木先生から教わった」としているものが多く含まれますが、全てが私のフィルターを通じて変換されていますので、読者の皆様におかれましてはご注意ください) いくつか印象に残っていることがあります。その一つが「組織の反対は何か」ということ。組織の反対は個人と思いがちだが、組織の反対側には市場があるのだ、と教えてもらいました。 なるほど確かに、組織には組織ごとの原理があって、その原理に従って行動します。一方、組織の外側には市場があって、そこは完全に市場原理に基づいている。わかりやすい例で言うと、組織の中で役に立つ人間が市場に出て必ずしも役に立つわけではない。逆に市場での価値が高い人からといって、必ずしも組織の中で役に立つわけではない。この話から何をどう役立てたのか、という説明は難しいですが、組織を考える上で大事にしています。ざっくり言うと、組織に市場原理を持ち込もうとしても、それはあまり役に立たないということだと思っています。 もう一つ。 これはビジネスを生み出すプロセスには「思い付いた」事業と「気付いた」事業があるというお話です。 一方、(手前みそですが)『都心の土地を狭めに切って、三階建ての住居を建築したらニーズあるよね』というのは、それまでも都心の三階建て住宅は存在するという点で、非連続ではありません。これは、既に存在する商材やコンセプトから拡大再生産できる要素だけ抽出して純化するようなビジネスモデルと言えます。つまり、拡大再生産できる要素に「気付いた」わけで突然「思い付いた」わけではありません。 こうした頭の整理がプラクティカルに事業を営む側にとってすごく役に立つというか、自分の立ち位置の整理が付くという点で、すごくありがたいと思います。「思い付いた」か「気付いた」か、どちらが良い悪いではなくて(楠木先生に言わせれば好き嫌いの問題かもしれません)、向き・不向きじゃないかと思います。 こうした向き・不向きで言うと、オープンハウスは「気付く」タイプです。いま当社が力を入れているアメリカ不動産も『アメリカ不動産を日本人投資家向けに販売するとすごく受け入れられるのではないか』ということに気付いたわけです。そういう意味では、また新たな「気付き」を求めていく必要があるなと感じた次第です。 鎌田和彦 |
※この対談は2019年11月20日に弊社「GINZA XI」ラウンジ(東京・銀座)で行われました。
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