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中道を好むドイツでも極右政党が躍進。コロナ禍、ウクライナ情勢がもたらした混乱により、政党勢力が分散。

【この記事のポイント(Insights)】

  • 2025年2月のドイツ連邦議会選挙において、中道政党支持が分散し極右政党が躍進した。
  • ドイツでは戦後、ナチスへの反省から中道路線が確立され安定政権が築かれてきた。EUのなかでも極右・極左への抵抗感が強い国と言える。
  • コロナ禍とウクライナ情勢の混乱が反グローバリズムを加速しEU全体に不安定要因をもたらしたことが、今回の選挙結果につながった。

2025年2月に行われたドイツ連邦議会選挙の結果が、国内外で大きな注目を集めています。これまで長年、中道寄りの政党が政権を担い、ナチス体制への反省という歴史的背景のもとで安定した政治運営が行われてきました。しかし今回、従来の与党勢力が弱体化し、極右政党「ドイツのための選択肢」が躍進したのです。本記事では、今回の選挙結果を軸に、ドイツ政治の変動とその背景、さらに米国を中心に世界で広がる反グローバリズムの潮流について詳しく考察していきます。

ドイツ連邦議会選挙で極右政党「ドイツのための選択肢」が躍進

2025年2月23日に実施されたドイツ連邦議会選挙では、極右政党として知られる「ドイツのための選択肢」(AfD)が、これまでの歴史的な数値を大幅に上回る得票率を獲得し、議会内で第2党に浮上しました。従来、ドイツでは中道寄りの政党が安定した連立体制を築いていたため、極右政党の躍進は国内外で大きな議論を呼んでいます。

選挙結果を見ると、長年の与党であったキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)や社会民主党(SPD)の支持が大きく低下し、従来の票が分散した結果、極右政党の得票率が急増したことが背景にあります。これまで、各党は移民問題や経済政策、安全保障政策といった具体的な争点で互いに競い合い、連立政権を形成する形で政治が安定していました。しかし、コロナ禍による経済の不安定化やウクライナ戦争による国際情勢の変動、さらにはグローバリズムに対する反発が、従来の中道勢力の信頼を大きく揺るがせたのです。

また、選挙前の世論調査やメディアの報道では、国民の間で不満や不安が高まっている状況が浮き彫りとなっており、これが極右的な反グローバリズムや反移民の主張に共鳴し、AfDへの支持増加につながったと考えられます。結果として、従来の与党に代わる新たな政治潮流が生まれ、今後の政策決定プロセスに大きな影響を及ぼすことが懸念されています。

中道寄りの政党が舵を取ってきたドイツ

ドイツの戦後政治は、同じEUの大国であるフランスやイタリアでしばしば極右やポピュリズムが支持を集めるのとは異なり、ほぼ一貫して中道寄りの政党が政権の舵取りをしてきました。西ドイツにおいては、1949年に設立された連邦共和国以降、キリスト教民主主義と社会民主主義を軸とした政権が交代しながら政治を進めてきました。たとえば、初代首相のコンラート・アデナウアーは、戦後の復興と欧州統合の基礎を築くべく、堅実な保守路線を取りました。1969年以降は、ヴィリー・ブラントが首相となり、東西冷戦下での緊張緩和を図るとともに、社会民主主義の価値観を国民に根付かせました。さらに、ヘルムート・コールは統一という歴史的な転換期を乗り越えるための中心的存在となり、その後も長期政権を誇るアンゲラ・メルケルが安定的な政治運営を続けてきました。

この中道・穏健な路線は、ナチス体制への強い反省(Vergangenheitsbewältigung)を背景に、極端な政治思想を避けてきた結果と言えます。メルケル首相が築いた政治文化は、過激な主張よりも実務的な政策に重きを置く傾向が強く、その結果、連立政権が一般的な形態として定着してきました。さらに、制度面でも戦後の新憲法(基本法)は、民主主義や法の支配、人権の尊重を堅持する枠組みとなっており、これが政治の安定性を支える大きな要因となってきました。

しかし、現在はこの中道政治の土台が、コロナ禍やウクライナ情勢、さらにはグローバリズムに対する批判など、さまざまな外部要因により揺らいでいます。統一後のドイツにおいても、中道寄り政党の支持は変動し、極右や新興勢力が浮上する土壌が形成されたと言えます。今後のドイツ政治は、かつての中道連立体制がどのように再編成されるか、また新たな潮流との折り合いがどのように図られるかが注目されるところです。

コロナ禍とウクライナ情勢といったアクシデントがドイツ政治から安定性を奪った

しかし、2019年以降、コロナウイルスのパンデミックが発生し、以降の対応に国民や有権者の不満が噴出する中で、安定性を欠く政局が続くようになりました。

メルケル首相は、科学的根拠に基づく迅速な対応と、欧州連携を重視する外交政策で一定の評価を得てきましたが、長引くロックダウンやワクチン供給の遅れ、そして経済への打撃により国民の信頼は徐々に低下しました。さらに、ウクライナ情勢の激化に伴うロシア産エネルギーへの依存問題や、エネルギー価格の急騰が、ドイツ経済に深刻な影響を及ぼしました。こうした外的要因が重なった結果、これまでの中道政党による安定運営が大きく揺らぎ、国民の投票行動にもその不安が反映されるようになったのです。

その後、メルケル政権に続いたショルツ政権は、これらの混乱にどう対処するかが大きな課題となりました。ショルツ首相は、エネルギー安全保障の強化や、欧州内での連携を強化するための新たな政策を打ち出しましたが、依然として経済の不安定化や国民の不満を完全には払拭できず、政局全体の不安定性が続きました。このように、コロナ禍とウクライナ情勢といったアクシデントが、ドイツ政治に長年培われた安定性を奪い、従来の中道政治に亀裂を生じさせたといえるでしょう。

高まる政治不満と、反グローバリズムが共鳴

国内外のアクシデントが続いた結果、ドイツ国民の間では政治への不満が着実に高まっています。特に、コロナ対策やエネルギー政策、そしてグローバリズムに対する批判が強まる中で、従来の中道政党への信頼が低下し、反グローバリズムや反移民を掲げる勢力に票が流れやすくなりました。アメリカでトランプ氏が掲げた「自国ファースト」や「反移民」の主張と共鳴するかのように、極右政党「ドイツのための選択肢」は、これまでの中道連立体制の隙間を突く形で躍進しました。

この傾向は、ドイツだけに留まらず、EU内や世界各国でも同様の現象が観察されています。例えば、イタリアでは極右政党「イタリアの同胞」が第一党となるなど、ポピュリズム的な政治潮流が広がっています。また、EU全体では、移民問題や経済不安、サプライチェーンの混乱、物価の高騰など、グローバル経済の不確実性が政治的対立を一層激化させる要因となっています。こうした背景の中、国民は安定や将来への見通しを求める一方で、従来のグローバルな体制への疑問も抱き始めているのです。

このように、反グローバリズムやナショナリズムが国民の投票行動に与える影響は大きく、今後もドイツ政治においては従来の中道路線と新たな潮流との対立が続くことが予想されます。結果として、ドイツのみならずEU全体における政治的均衡も変動し、国際社会全体に影響を及ぼす可能性があるといえるでしょう。

 


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