【この記事のポイント(Insights)】
- Zillowが気候リスク表示を削除し、市場の透明性と買い手の判断材料が大きく削られたと懸念されている。
- リスクが見えにくくなることで、本来下がるべき高リスク物件の価格が維持され、市場の歪みが将来一気に噴き出す可能性がある。
- 一方でプロ投資家は災害耐性や保険コストを重視して質で選ぶ投資へシフトしており、個人も自らリスク情報を取りに行く姿勢が重要になっている。
米国最大級の不動産ポータルサイトZillowが、物件ページから「気候リスクスコア」の表示を削除しました。洪水、山火事、極端な高温といったリスクを数値化し、購入前にチェックできる——はずだった情報が、いま画面から消えつつあります。
一方で、不動産のプロフェッショナルたちは、これまで以上に「災害耐性」や「保険料の重さ」に神経をとがらせています。立地や建物性能、レジリエンスといった“質”で不動産を選ぶトレンドが進むなかで、プラットフォームがリスク情報を隠すのは、本当に合理的な判断と言えるのでしょうか。
この記事では、Zillowが何を削除しなぜ批判されているのかを整理しながら、「情報を消す」決断が市場にもたらす影響を考えていきます。
Zillow、物件ページの「気候リスクスコア」を売り手サイドからの反発で削除
Zillowが今回削除したのは、物件ページに表示されていた「気候リスクスコア」です。洪水・山火事・極端な高温・強風・大気質といったリスクを住所ごとにスコア化するもので、データは非営利団体First Street Foundationが提供していました。導入当初は、購入者が気候リスクを事前に把握するための補助ツールとして期待されていましたが、2024年9月の導入からわずか1年ほどで撤回されました。
削除に至った背景には、売主や仲介業者からの強い反発があります。「誤ったスコアで物件の印象を悪くされたくない」「データの訂正ができず不公平」「スコア表示が売れ行きを悪化させている」など、MLS(複数物件情報サービス)やエージェントから苦情が相次いだのです。とくに、保険料高騰や災害被害が深刻な州では「これ以上ネガティブな情報を物件ページに載せてほしくない」という業界の圧力が強まっていました。
これを受けてZillowは、スコア表示を全面的に取り下げ、外部サイトへのリンクのみを残す方針に変更しました。「誤解を招きやすい」「各地域のMLSルールと整合的に運用するのが難しい」といったコメントを出し、機能削除を正当化しています。
リスクを隠すことで下がるべき価格が下がらず、市場が歪む可能性も
しかし、この決定は「市場の透明性の後退」として批判を浴びています。物件のリスクを見せないことは売主や仲介業者にとってはメリットですが、買い手からすると不利な条件を見落とすリスクが高まるからです。たとえば、洪水リスクの高い物件を購入したあとで保険料が予想以上に高額だと判明したり、山火事多発エリアでは民間保険会社が引き受けておらず、公的保険しか選べないことが後から分かったりするケースが増えかねません。
このような「将来のキャッシュアウト」は、投資収支にも直接影響します。さらに問題なのは、リスクが適切に価格に織り込まれない状態が続くことです。本来であれば、災害リスクの高いエリアは相対的に安くなり、安全なエリアや高性能住宅にプレミアムがつくべきです。しかし、リスク情報が見えにくくなると、本来下がるべき価格が下がらないまま維持され、市場の健全性がゆがむ恐れがあるのです。将来的に保険料の急上昇や再保険市場のショックが起きた場合、価格調整が一気に進む可能性があり、その影響は現時点では把握しづらいままです。
こうした懸念に対し、First Street FoundationのCEOは「リスク情報を見せないまま家を買わせるのは、暗闇の中で人生最大の買い物をさせるようなものだ」と強く批判しています。特に保険会社の撤退や保険料高騰が同時多発している現状では、購入時点の情報格差が、将来の損失に直結しやすくなっているのです。
Zillowの意思決定をよそに、高まる災害耐性への注目度
興味深いことに、Zillowが気候リスクを画面から消そうとする一方で、プロの投資家や企業は、これまで以上に災害耐性を重視し始めています。世界最大級の総合不動産サービス会社JLLは、2025年の市場展望の中で「立地・建物性能・災害耐性といったファンダメンタルズが不動産価値を左右する」と繰り返し強調しています。とくにオフィス市場では「フライト・トゥ・クオリティ」と呼ばれる現象が加速し、築浅で高性能、災害リスクの低い場所にあるビルへテナントが集中。古いビルほど空室が長期化し、賃料も下落するという明確な二極化が起きています。
JLLは投資家に対して「耐災害性=リスク回避=資産価値の維持」と明言し、どこに建っているか、どのように建てられているか、災害時にどれだけ早く復旧できるかといった要素を、従来以上に重視するよう促しています。気候関連コストの上昇がすでに現実となっているいま、“レジリエンスを買う”という発想が投資判断の中心になりつつあります。
ここで、Zillowが見せようとしないリスク情報と、プロが積極的に取りに行くリスク情報との対照が浮かび上がります。情報を消す方向に動くプラットフォームと、情報を深掘りする投資家。市場のねじれはむしろ広がっているように見えます。
見せていた情報を隠す判断は、どんな未来を引き寄せるのか。
Zillowが気候リスクスコアを削除しても、洪水や火災、極端な猛暑といったリスクは、不動産の現実から消えません。むしろ、リスクが“見えにくくなる”ことで、価格の歪みや将来の不確実性が増す可能性があります。
一方、グローバル投資家は、災害耐性や長期的な保険コストといった要素を投資判断の中心に据え始めています。市場全体が“質で選ぶ投資”に向かうなか、Zillowの情報後退がユーザーにどう受け止められるかは不透明です。
「余計な不安をあおらない」というユーザー配慮として受け止められるのか、それとも「知らされるべきリスクを隠した」という不信につながるのか、答えはまだ出ていません。Zillowの判断が吉と出るのでしょうか、凶と出るのでしょうか。
いずれにせよ、米国不動産を見極める際には注意が必要です。プラットフォーム任せにせず、自分でリスク情報を取りに行く。保険料や災害履歴、ハザードマップを確認する。長期的なレジリエンスに価値を見い出す姿勢を持つ。この数年の市場の動きを見る限り、「情報を削除する」という選択は、投資家にとってむしろ“自分で調べる必要性”を強める結果になっているのかもしれません。
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