【この記事のポイント(Insights)】
- トランプ政権がウォール街大家規制に関する大統領令を発令。対象の定義が曖昧でガイダンスが待たれる。
- 全国平均では影響は限られるが、投資家比率の高い都市圏では賃料と流動性が動く。
- 証券化など資金回路が細れば供給が鈍り、戸建て賃貸の家賃が上振れし得る。
2026年1月、トランプ政権がいわゆる「ウォール街大家(大口の機関投資家)」に対して、戸建て住宅の取得を抑える大統領令を出しました。ニュースの見出しだけ読むと「企業が家を買えなくなるなら、住宅価格は下がるのでは?」と思いがちです。
ただ、一次資料(大統領令本文)を読むと、話はもう少し構造的です。今回の政策は、民間取引をいきなり全面禁止するというより、「連邦政府が関与する金融・制度のレールを通じて、機関投資家の取得を締める」設計に見えます。結果として、影響の本丸は住宅価格よりも、戸建て賃貸の供給と資金調達になりやすい。ここを押さえると、日本の投資家にとっても見え方が変わります。
ウォール街大家規制を読み解く3つのポイント
大統領令は2026年1月20日に発令されました。ポイントは3つあります。
いきなり「禁止」ではない
本文には、機関投資家の購入を「最大限止める」とは書かれていますが、手段は「連邦政府や政府系機関が、購入に関与しないようにする」ことです。具体的には、連邦機関等が「承認・保険・保証・証券化・促進(facilitate)」などを通じて、機関投資家による取得に関与するのを避ける方向が示されています。
”誰”が”何”を買うのを規制するのかの定義がまだない
「large institutional investor(大口の機関投資家)」と「single-family home(戸建て住宅)」は、本文では定義されていません。財務長官が30日以内に定義を作る、とされています。つまり締切は2026年2月19日です。
この定義が「1,000戸級」なのか「100戸級」なのかで、対象範囲も市場インパクトもまったく変わります。現時点(2026年2月12日)では、そこを断言できません。
新築賃貸物件は「狭い例外」として規制を免れると明記されている
本文には、BTR(Build-to-Rent、最初から賃貸用として計画・許認可・資金調達・建設される戸建て賃貸開発)について「適切で狭く調整された例外」を設けるよう求める条文があります。既存の戸建てを買い集めて賃貸化する動きにはブレーキをかけつつ、新規供給としての賃貸用戸建ては残す(あるいは誘導する)意図があるのかもしれません。ただし、例外の実務要件は今後のガイダンス次第です。
これら3つのポイントから分かるのは、ウォール街大家規制の影響を考えるには、「全国平均」と「特定都市」の切り分けが重要だということ。米政府説明責任局(GAO)のレポートは、研究の多くが「機関投資家」を1,000戸以上保有などで捉える傾向がある、と整理しています。その上で、2022年6月時点のデータとして、1,000戸超を保有する投資家のシェアは全米平均では限定的でも、都市によっては大きいことを示しています。要するに、全米一律に効く政策ではなく、影響が出るなら投資家の影響が色濃い大都市圏からということです。さらに、Urban Instituteも「機関投資家」を定義し直しながら、戸建て賃貸市場における位置づけを整理しています。定義の違いで数字は動きますが、共通しているのは「全国で見れば限定的、ただし一部エリアでは無視できない」という構図です。
「住宅価格」が落ち着くと期待するのは危険
この規制の狙いとして最も分かりやすいのは、住宅価格高騰の痛みをダイレクトに受ける低~中所得層の住まいコストを引き下げることです。この層はトランプ政権の支持層のなかでも大きな割合を占めているため、政治的に読むなら今年11月に控える中間選挙を前にしたアピールと捉えることもできます。
では、ウォール街大家規制は実際に住宅価格を下げるのでしょうか? 結論から言うと、全国平均の住宅価格をドンと押し下げる効果は、過度に期待しないほうが安全です。根拠は3つあります。
いまの住宅市場は「供給が少ない」
全米不動産協会(NAR)によれば、2025年12月の既存住宅販売は年率換算で435万戸、在庫は118万戸で、在庫月数は3.3カ月と供給が薄い状況。供給が薄い市場では、買い手の属性を少し変えても、価格が素直に下がりにくいです。
先行指標は「取引が不安定」と言っている
NARのPending Home Sales(契約ベースの先行指標)は、2025年12月に前月比-9.3%と大きく落ちました。NAR自身も「在庫が少ないと買い手の熱量が鈍る」という説明をしています。つまり、今の課題は「機関投資家が買うから」より、「買いたい人がいても、選択肢が少ない」ことに寄っています。
金利が主役の時間帯が続いている
住宅金融の感応度は依然高く、政策が効くとしても、金利局面が変われば簡単に上書きされます。実際、FRB系の住宅価格指数(FHFA)でも、2025年後半は伸びが鈍化しつつプラス圏、という読み方が自然です。
もちろん、機関投資家の関与が濃い都市圏では「買い手の競争が少し緩む」局地的効果はあり得ます。ただ、全国平均で「規制=価格下落」と直結させるのは危険です。
規制が直撃するのは「戸建て賃貸」?
大手運営会社の開示や、証券化市場のサーベイランスからは、価格より賃貸供給と資金調達に波及しやすい構図が見えます。
規制対象になり得る大手投資家は「戸建て賃貸の供給者」でもある
住宅の大口の買い手には、大手不動産会社も含まれます。例えばInvitation Homesは、2025年9月末時点で保有・運営の戸数を開示しており、資本市場活動や負債構成も説明しています。規制で大手が一律に悪者扱いされやすい一方で、市場では大手が「運営の受け皿」や「新規供給の受け手」になっている面もあります。政策が強く効くと、この供給側の歯車が噛み合わなくなるリスクが出ます。
資金調達(証券化)が細れば、賃貸供給も細る
格付会社KBRAは、単一借り手の戸建て賃貸証券化について、残高や担保戸数などをまとめています。2025年版のサーベイランスでは、41件の取引の合計残高が$27.8B、担保が110,552戸と、資金供給源の1つとして存在感を発揮しています。今回の大統領令による規制は「連邦が関与する証券化や保証」にも及ぶ可能性があるため、賃貸証券化での資金調達が細る可能性があります。資金が止まれば家の買い集めも進みませんから、賃貸在庫の積み上がりが鈍ります。
そもそもBTRは足元で軟化している
全米住宅建設業者協会(NAHB)は、米国勢調査局データを使い、2025年Q3の「BTR:Build-to-Rent(賃貸用に新築する戸建て)」の着工が約18,000戸で、前年同期(約24,000戸)から減ったと整理しています。直近4四半期合計でも前年同期比で-25%としています。ウォール街大家規制がBTRを例外扱いする意図を持っていても、そもそもの開発環境が「資金コスト高」で、ラクではない状況を示唆しています。
このように、戸建て賃貸は不動産会社や金融商品への依存度合い比較的高く、規制の影響を受けやすいと見られているのです。
ウォール街大家規制後の「戸建て賃貸」市場、3つのシナリオ
繰り返しになりますが、大統領令の表現には曖昧な部分が多く、現時点で精度の高い予測をするのは困難です。それでも、大まかなシナリオとしては、以下の3つのいずれかの方向性に収まるのではと考えられます。
シナリオA:供給目詰まり(家賃が上がりやすい)
規制範囲の定義が広い→連邦関与の資金ルートが締まる→投資と開発が鈍る→戸建て賃貸の供給が細る→家賃に上方圧力。政策の看板は「持家の夢」でも、実際の痛みは「借りる側」に出る可能性があります。
シナリオB:賃貸用新築(BTR)への誘導が機能(家賃は落ち着きやすい)
既存住宅の買い集めは減るが、賃貸用新築の例外が実務で機能し、新規供給が維持される→家賃は安定しやすい。ただし、足元の着工軟化が示す通り、資金コスト次第で簡単に崩れます。
シナリオC:不確実性コスト(取引が止まり、局地的に歪む)
規制範囲の定義が曖昧なまま進み、ガイダンスが強弱不明→市場が様子見→取引も投資も止まり、局地的に需給が歪む。この場合、価格より先に流動性の低下として現れやすいです。
「住宅供給の回路」は正常化するのか?
トランプ政権の「ウォール街大家」規制は、住宅市場に不満が溜まるなかで非常に分かりやすいメッセージを持っています。ただ、一次資料が示している実務の焦点は「民間取引を直接禁止」ではなく、連邦が関与する金融・制度のレールを通じた制限です。
そして機関投資家の存在感は、全国平均よりも、特定の都市圏で強く出ます。その都市圏でいちばん揺れやすいのは、住宅価格そのものより、戸建て賃貸の供給と、その供給を支える資金調達です。賃貸用新築の着工が軟化している局面では、なおさら「供給の回路」が重要になります。
表面的には「大金持ちではなく庶民が家を買えるように」という道徳論の装いをしながら、実態としては「家が増える回路、運営される回路」に影響を与え得る政策です。住宅価格の行方を考えるときも、同じくらい家賃と供給の行方を見ておくべき理由がここにあります。
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