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2026年、商業不動産ローンに満期の波。銀行はどう動き、住宅市場にどう波及するのか

【この記事のポイント(Insights)】

  • 2026〜2027年に商業不動産ローンの満期が集中し、延命されてきた信用リスクが一気に顕在化する局面を迎える。
  • CREへの依存度が高い地域銀行は、延長と与信引き締めを同時に進め、不動産向け信用配分を慎重化させつつある。
  • その影響は住宅市場にも波及し、価格よりも「融資が通るか」という流動性の差が地域ごとに拡大していく可能性が高い。

米国の住宅市場を巡る議論では、どうしても「住宅ローン金利は下がるのか」「住宅価格はいつ調整するのか」など住宅に直結する話題に目が向きがちです。しかし2026年以降を見据えると、金利以上に静かに、しかし確実に効いてくるテーマがあります。それが商業不動産(CRE:Commercial Real Estate)ローンの満期集中です。

一見すると「オフィス不動産の話」「住宅とは別の世界」に見えるこの問題ですが、実際には銀行の行動を通じて、住宅市場にもじわじわと影響を及ぼす可能性があります。本稿では、CREローンに詳しくない投資家の方でも全体像がつかめるよう、仕組みから順に整理していきます。

満期サイクルの短いCREローンは、借り換え時にリスクに晒される

CREローンとは、オフィスビルや商業施設、物流施設、集合住宅(マルチファミリー)など、事業収益を目的とした不動産を対象にした融資のことです。個人の居住を前提とする住宅ローンとは異なり、物件が生み出す賃料収入や稼働率が返済原資として重視されます。そのため、金融環境や不動産市況の変化を受けやすいという特徴があります。

押さえておきたいのは、CREローンと住宅ローンの借り換え前提の違いです。米国の住宅ローンは30年固定など長期・固定型が一般的で、借り手は金利を長期間ロックできます。一方、CREローンは3〜7年程度の比較的短期で設定され、満期時に借り換えを前提とするケースが多くなっています。

この前提の違いにより、CREローンでは満期を迎えた時点の「金利水準」「物件評価額」「銀行の融資姿勢」がそのまま条件に反映されます。借り換え時に評価額が下がっていれば、同じ借入額でもLTV(融資比率)は悪化し、追加自己資本を求められたり、そもそも借り換えが難しくなったりします。CREローンが「景気や金融環境に弱い」と言われる理由はここにあります。

2026〜2027年に到来する「満期の壁」

現在、市場が警戒しているのは、2026年から2027年にかけてCREローンの満期が一気に集中する点です。2024年、2025年にも相応の満期はありますが、2026年は約9360億ドル、2027年も約9830億ドル規模と、明らかに厚みのある「山」になっています。

この背景には、ここ数年続いてきた“延命”があります。金利急騰後、多くのCREローンは満期時にそのまま借り換えるのではなく、条件変更や期限延長によって先送りされてきました。実際、2023年に満期を迎えたCREローンの約4割が、こうした形で延長されたと推計されています。

その結果、延滞率自体は1%台と低水準に抑えられていますが、問題が解決したわけではありません。処理されなかったローンが、時間差で2026年に集積しているというのが実情です。延滞率が低いから安心、とは言い切れない局面に入っています。

銀行はどう動くのか。震源地は地域銀行に

この問題を考えるうえで欠かせないのが、どの銀行がCREローンを多く抱えているのかという視点です。米国では、大手上位25行を除く地域銀行・中堅銀行が、CREローン残高の約3分の2を保有しています。さらに、バランスシートに占めるCRE比率を見ると、小規模銀行では資産の約3割がCRE関連というケースも珍しくありません。大手銀行のCRE比率が1桁台にとどまるのとは対照的です。

つまり、2026年の満期問題は「銀行全体の問題」というより、CREへの依存度が高い地域銀行の問題として顕在化しやすい構造になっています。

銀行の対応は、単純に「貸し剥がし」か「救済」かの二択ではありません。現実には、

  • 既存ローンは条件変更や期限延長で時間を稼ぐ
  • 一方で新規融資やリスクの高い融資には慎重になる

という二重の行動が進んでいます。

実際、近年はCREローンの条件変更額が急増しており、大口銀行では前年比で6割以上増えたというデータもあります。同時に、融資基準は着実に厳しくなり、LTVの引き下げや返済余力(DSCR)の厳格化が進んでいます。

また、監督当局の視線も無視できません。CRE比率が高い銀行ほど、引当金の積み増しや資本管理を求められやすくなります。2026年に向け、銀行が「新たな不動産リスクを積みに行かない」姿勢を強めるのは、自然な流れと言えるでしょう。

商業不動産のリスクが住宅市場にも波及する理由

では、CREローンの問題は住宅市場にどう波及するのでしょうか。ポイントは金利ではなく、信用配分です。

第一に、住宅開発・建設融資への影響です。地域銀行は、地元の住宅開発や建設資金の主要な供給源でもあります。CRE対応で守りに入ると、リスクの高い建設融資から絞られやすくなります。結果として新規供給が増えにくくなり、住宅価格は下がるというより「硬直化」しやすくなります。

第二に、投資用ローンへの影響です。個人投資家が使う投資用ローンや事業性融資も、銀行の不動産向け与信枠の中にあります。銀行がリスク総量を抑え始めると、頭金条件や審査基準が変わり、「買いたい人はいるが、融資が通らない」という状況が生まれやすくなります。

第三に、地域間の分断です。銀行の健全性は地域差が大きく、全国一律には動きません。2026年以降の住宅市場は、全米同時に冷え込むというより、融資が出る地域と出にくい地域の差が拡大する可能性があります。

2026年、住宅投資家は何に気を付けるべきか?

ここで、住宅投資家が陥りがちな誤解を整理しておきます。
1つ目は「オフィス不況の話だから住宅とは無関係」という見方です。実際には、貸し手が同じであれば信用収縮は住宅にも及びます。
2つ目は「利下げがあれば不動産は安心」という考え方です。利下げは追い風でも、銀行が貸さなければ市場は動きません。
3つ目は「米国の金融は強いから問題は吸収できる」という思い込みです。強いのは大手銀行であり、今回の焦点はCRE偏重の地域銀行側にあります。

2026年以降の米国不動産を考える際、投資家が重視すべきなのは価格よりも流動性です。地域銀行のCRE比率が高すぎないか、建設融資が極端に絞られていないか、延滞ではなく条件変更が増えていないか……。こうした点を確認することで、「売れる市場かどうか」の見通しが立てやすくなります。

CREローンの満期集中は、派手な破綻を伴わずに進む可能性があります。しかしその分、銀行の行動変化を通じて、住宅市場の足元を静かに変えていくリスクをはらんでいます。2026年以降の米国不動産市場は、価格の話以上に信用の話になります。金利だけで判断せず、「銀行がどう動くか」を読むことが、これまで以上に重要になりそうです。

 

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