mv

米国とベネズエラを巡る“制裁の地政学”

1.カリブ海上の「拿捕」や「空爆」は正当か? 横暴か?

2025年12月10日、カリブ海沖を航行していた大型タンカー「スキッパー号」が米軍に拿捕されました。この船はベネズエラの主要港から出港し、約180万バレルのメレイ原油を積載していたとされます。米財務省によれば、同船は制裁対象の国営石油会社PDVSAに関与し、イランとの瀬取り(洋上密輸)にも加担していたとの疑いがあるとのこと。

事件発生からわずか10日後の12月20日には、今度はパナマ船籍のタンカー「センチュリーズ号」が拿捕されました。この船は表向きは制裁対象外でしたが、偽名航行していたこと、いわゆる“ダーク・フリート(制裁逃れ船団)”の一部と見なされていたことが米国側の根拠です。

ベネズエラ側はこの2件に激しく反発。政府高官は「これは石油の窃盗であり、民間船舶への拉致行為だ」と述べ、国連安保理や友好国への訴えを強めています。

この拿捕劇、実は突発的な事件ではありません。当メディア記事「米軍、ベネズエラ発「麻薬ボート」を相次ぎ攻撃 原油・為替に波紋広がる」でもお伝えしたように、2025年9月、ベネズエラ東部の海岸を出港した高速艇が、米軍によって爆破されました。船には11人が乗っており、全員が死亡。米国側は「麻薬密輸組織『トレン・デ・アラグア』の所有するボートで、米国に大量の薬物を密輸しようとしていた」と説明しています。

驚くべきはその手法です。拿捕ではなく、空爆による破壊。つまり相手を法廷に立たせることなく、空から殲滅する方針にシフトしたということです。米政府関係者は「大統領命令に基づく攻撃であり、再発する可能性がある」と明言しました。実際、その後もカリブ海や東太平洋で同様の作戦が繰り返され、2025年だけで29隻のボートに対し少なくとも28回の空爆が実行され、100人以上が死亡したと報じられています。

このような“武力制裁”が常態化するなか、12月のタンカー拿捕は、「麻薬テロ資金を断つ」ための流れの一部として発生したと見ることができます。つまり、金融制裁の段階を超え、海上における制圧行動に踏み出したわけです。

2.1999年以来、四半世紀にわたり冷え込むアメリカ・ベネズエラ関係

なぜ、米国はここまでベネズエラに対して強硬なのでしょうか。その背景には、20年以上にわたる緊張と制裁の歴史があります。

1999年にウゴ・チャベス政権が誕生した際、米国との関係は一気に冷え込みました。チャベスは「21世紀型社会主義」を掲げ、石油産業の国有化や反米的な演説で知られた政治家です。米州ボリバル同盟(ALBA)を立ち上げ、イランや中国、ロシアとも接近していきます。

その路線を継承したニコラス・マドゥロ政権のもと、ベネズエラ経済は急速に悪化。ハイパーインフレや食糧不足に直面し、米国は2015年以降、経済制裁を段階的に強化しました。2019年にはPDVSA(国営石油会社)を完全禁輸とし、米企業の取引も停止。マドゥロ大統領本人には麻薬テロ容疑で1500万ドルの懸賞金がかけられました(現在は5000万ドルに増額)。

しかし、ここで浮上するのが米国自身のエネルギー事情です。ベネズエラの原油、特にメレイ原油と呼ばれる超重質原油は、米国の製油所では欠かせない素材でした。ウクライナ戦争による供給不安を受け、バイデン前政権は、公正な大統領選の実現を条件に2022年に制裁を一時的に緩和。米Chevron社には限定的に採掘・輸出を許可し、2023年には1日あたり10万バレル以上が米国向けに出荷されるようになります。

ところが、マドゥロ政権が野党候補の出馬を禁じたことで、この“雪解け”は頓挫。2025年にトランプ政権が復帰すると、再び最大圧力路線に舵が切られました。今回の拿捕事件は、まさにこの再強化政策の象徴的な一手と言えるでしょう。米国の強硬措置に対して、周辺国やグローバルサウス諸国は神経を尖らせています。

メキシコやブラジルの首脳は「軍事より対話を」と呼びかけ、国連の仲介を要請。中国やロシアは「一方的な長腕管轄権の乱用」として米国を非難しています。ベネズエラ国内では「No War for Oil(石油のための戦争は御免だ)」と書かれたプラカードを掲げる市民の姿も見られ、対立は国際世論をも巻き込む様相を呈しています。“制裁の地政学”は、いつしか境界線を越えつつあるのかもしれません。

 

 


注目記事
なぜ、こんなにも多くのお客様にご支持を頂いているのか(その1)

なぜ、こんなにも多くのお客様にご支持を頂いているのか(その2)

なぜ米国不動産と法人税繰延の相性は抜群に良いのか。

※この記事は、掲載日時点の情報を基に作成しています。最新状況につきましては、スタッフまでお問い合わせください。

アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋

オープンハウスの投資メソッドを
無料ダウンロード

アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋

オープンハウスの投資メソッドを無料ダウンロード

この資料では、以下の内容をご紹介しています。

以下の内容をご紹介しています。

  • アメリカ不動産投資が「今」注目される4つの理由
  • スケールが違うアメリカ投資市場の基礎知識
  • 日本とは全く異なる不動産の市場環境と投資効果
  • 投資エリア選びの重要さと注目の成長エリア

さらに知りたい方は簡単1

資料をダウンロードする

アメリカ不動産投資、始め方がわからずお悩みではありませんか?

2020年の税制改正後も、アメリカ不動産投資は依然として「資産分散」「減価償却」などのメリットで注目を集めています。

ただ、アメリカを含む海外不動産投資に興味はあるけれど「言語の壁がある」「現地の事情がわからない」「リスクが高そう」といったお悩みも多く見られます。

実際、日本からアメリカ不動産投資を始めようとしても、現地の法律や税制の違い、物件管理の難しさ、為替リスクなど、様々な課題に直面することがあります。

しかし、適切な知識とサポートがあれば、アメリカ不動産投資は魅力的な資産運用の選択肢となります。安定した不動産需要、基軸通貨ドルでの資産保有、長期的な不動産価値など、その魅力は2020年の税制改正後も健在です。

そこで、アメリカ不動産投資に興味をお持ちの方へ、『アメリカ不動産投資成功ガイド』をお届けします。オープンハウスがこれまで5000棟超、3000名以上の投資家様をサポートしてきた実績をもとに、投資の基礎知識から最新の市場動向、成功事例までをわかりやすくまとめました。

オープンハウス独自の強み、アメリカの複数都市に展開する現地法人による直接管理と日本語でのきめ細やかなサポート体制についてもご紹介しています。お忙しい投資家様のお手を煩わせず、英語不要でアメリカ不動産投資を実現できるワンストップサービスです。

ドル建てでの資産運用を実現したい方、海外投資に興味はあるけれど不安を感じている方は、ぜひこの機会にダウンロードしてみてください。

アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋

オープンハウスの投資メソッドを
無料ダウンロード

アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋

オープンハウスの投資メソッドを無料ダウンロード

この資料では、以下の内容をご紹介しています。

以下の内容をご紹介しています。

  • アメリカ不動産投資が「今」注目される4つの理由
  • スケールが違うアメリカ投資市場の基礎知識
  • 日本とは全く異なる不動産の市場環境と投資効果
  • 投資エリア選びの重要さと注目の成長エリア

さらに知りたい方は簡単1

資料をダウンロードする

まずはセミナーに参加しよう

すべて見る
弊社コンサルティングスタッフ

【日本全国オンライン対応可能】アメリカ不動産個別相談セミナー

12月26日(金) 、1月08日(木) 、1月09日(金) 、1月10日(土) 9:30~19:30
弊社コンサルティングスタッフ

【全国オンライン対応可能】年10日から購入できる「NOT A HOTEL」個別相談セミナー

ご希望日程よりご選択ください。
伊東 陽生

グローバル資産運用の新潮流:米国不動産投資戦略セミナー

1月13日(火)17:00~18:00
菅井幸彦税理士事務所代表 / 菅井幸彦氏

富裕層の「資産防衛」最前線:国税OBが語る2026年度税制改正

1月21日(水)18:30~19:30
今井 真鈴

ハワイ不動産で叶える資産運用~別荘利用・賃貸・償却のトリプルメリット~

1月29日(木)17:00~18:00
前へ
次へ

タグ一覧