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アメリカの深刻なインフレの裏にある、急激な家賃上昇

アメリカの深刻なインフレの裏にある、急激な家賃上昇

Highlights

  • 一部の都市では賃貸料金が2021年1月から40%以上値上がりしている
  • 賃料高騰は住宅価格高騰に起因するが、住宅価格が落ち着いても賃料はすぐには落ち着かない
  • 賃料水準が利上げペースを左右する可能性も

ニューヨークでは、月額賃料が46.64%上昇

6月の消費者物価指数が前年同月比9.1%増となるなど、インフレが深刻化しているアメリカ。インフレを阻止すべく、利上げとテーパリングを行っているものの、その効果はまだ見えません。

この歴史的なインフレのなか、さまざまなモノの価格が高騰しています。不動産も例外ではなく、特に賃貸物件の賃料上昇速度は凄まじいものがあります。賃貸情報サービスを扱うアパートメントリスト社に集まった新規貸出物件の賃料データでは、家賃の中央値は2021年1月から全米で約24%、都市によっては40%以上も上昇しています。最大の上昇率を記録した都市はニューヨーク市で46.64%。2021年1月の中央値が1,486ドルだったのが、2022年6月には2,179ドルに。差額は実に693ドル(1ドル135円として93,555円)。賃貸ですから、これが毎月続きます。

不動産オーナーにとっては収入増のチャンスではありますが、インフレにブレーキをかけたいFED(連邦準備制度)にとっては頭痛の種。歯止めをかけるために、なんらかの対処が講じられる可能性もあります。本記事では、この傾向はいつまで続くのかを分析します。

 

住宅価格が高騰すると、賃料も高騰する

労働統計局もインフレに関するデータを発表しており、こちらのデータでは全米の家賃は昨年の同月比で5.8%上昇しています。5月から6月にかけての月間上両立は0.8%でした。さきほどのアパートメントリスト社の情報と大きな差がありますが、こちらは入居中の物件(新規貸出物件ほど思い切った値上げがしづらい)も含めた数字であるためです。それでも、この月間上昇率は、1986年以来最大の上げ幅です。

この背景には、パンデミックに起因する住宅価格の高騰があります。在宅勤務が一般的になったことで、人々はより広く、より環境のいい住宅を求めるようになりました。歴史的な低金利で住宅ローンも手伝い、住宅購入希望者が急増しました。一方、売り物件は不足していたため、需要と供給のバランスが崩れ、住宅価格が跳ね上がったのです。これにより、住宅購入を諦めて、賃貸での住み替えを考える人が増加。賃貸需要が増えることで、賃料も上昇しているという仕組みです。

 

木材不足に追い打ちをかけるウクライナ危機

また、世界的木材不足の傾向に追い打ちをかけているのが、ウクライナ危機です。

現在、各国から経済制裁を課されているロシアとベラルーシは世界最大の針葉樹輸出国。ウクライナもそれに続く生産量を誇っていましたが、現在は国防のために木材輸出どころではない状況に陥っています。この3カ国は、2021年の世界の木材貿易の4分の1を占めていたというデータもあり、ウクライナ危機の影響の大きさは計り知れないと言えるでしょう。

木材の需給バランスが今後ますます崩れていくのは間違いなく、第二次ウッドショックの発生を懸念する声も多く挙がっており、それを裏付けるように木材価格は上昇の一途を辿っています。

このように、木材不足は世界規模で対策を打たなければならない喫緊の課題。また木材価格の高騰は不動産の新築やメンテナンスのコスト増にもつながるため、不動産投資家目線で見ても大きなリスク要因だと言えるでしょう。しかし逆に“山林の価値が高まる”という意味では、これを追い風と捉える山林保有者も多く存在することが見込まれます。

 

住宅価格高騰が落ち着いても、賃料高騰はしばらく続く

賃料上昇の主因である住宅価格の高騰は、若干落ち着きつつあります。本来であれば、住宅購入が可能になる人が増え、賃貸需要が緩和されるところなのですが、そうはならないであろう理由があります。

それは、利上げによるローン条件の引き上げです。ローンを組むために必要な頭金と収入条件が繰り上げられたため、物件価格が下がっても、購入のハードルは高いままになっているのです。

Realtor.comによると、スターターホーム(初めて購入する住宅)を購入するための月々のコストの中央値と、家賃の中央値の差は約25%。金額にして500ドル近く、家賃のほうが安いというデータがあります。こうした状況があるため、賃貸需要は一向に減っておらず、賃料もしばらく高いままであろうと見られています。

また、オックスフォード・エコノミクスのチーフ米国エコノミスト、キャシー・ボスジャンチッチ氏によると、賃貸価格の変動は住宅価格の変動に対して約18か月遅れる傾向があります。現在の賃貸インフレにもこの傾向に当てはまるのであれば、あと1年半ほどは家賃の高騰が続くことになります。

 

賃料のせいで、FEDは利上げペースを緩められない!?

上述のようなメカニズムで、賃料は利上げの影響を受けにくい性質があります。このことは、不動産以外の資産にとってはネガティブ要因にもなり得ます。特に、利上げ局面で価格が下がりやすい債券やグロース株を保有している場合は注意が必要です。

なぜなら、国民生活への影響が大きい賃貸料金が下がらなければ、FEDは利上げの手を緩めづらいからです。インフレ抑制効果が上がることで、利上げのペースも緩和されると期待していた投資家からすれば、賃料は足を引っ張る存在とも言えるのです。

しばらくは続きそうなアメリカの家賃上昇トレンド。どこまで高騰が続くのか、なにかの要因で落ち着きを見せるのか、注意深く見守りましょう。

 

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