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またしても政府閉鎖。アメリカ財政が“構造的赤字”から抜け出せない理由

【この記事のポイント(Insights)】

  • 財政赤字の常態化と金利負担の増大が、アメリカの統治機能を圧迫している。
  • 政府閉鎖の背景には、与野党の理念対立と制度疲労が深く根を下ろしている。
  • それでも米国経済は市場の厚みと制度の柔軟性を武器に再生の余地を残している。

アメリカで2019年以来となる政府閉鎖(シャットダウン)が発生しました。連邦政府の一部機能が停止し、経済統計の発表や行政サービスが止まるなど、市場にも影響が及んでいます。今回の閉鎖は一時的な政治対立ではなく、アメリカの財政構造そのものに内在する問題を浮き彫りにしています。

本稿では、なぜアメリカが慢性的な赤字から抜け出せないのか、その背景と制度的な限界を整理します。あわせて、こうした混乱が続いてもなおアメリカ経済が持つ強靭性にも触れ、リスクと可能性の両面から考察します。

止まらぬ閉鎖、止まる行政。赤字国家化が必然である理由

2025年10月初旬、アメリカで再び政府閉鎖が起きました。連邦議会が予算案で合意できず、政府機関の一部が停止した結果、約80万人の連邦職員が職務停止(furlough)または無給勤務に追い込まれています。行政、統計、金融監督といった基幹機能が麻痺し、民間部門にも影響が広がっています。2018〜19年以来となる今回の閉鎖は、単なる与野党の対立ではなく、財政運営そのものが制度的な限界に近づいていることを示唆しています。

アメリカの財政赤字は、この20年で慢性的なものとなりました。その背景には、複数の政治的・構造的要因が重なっています。2000年代初頭には9.11テロを受けた国防支出の拡大、2008年のリーマン危機では景気対策による大規模な財政出動が行われました。2017年のトランプ減税(Tax Cuts and Jobs Act)により法人税・所得税率が引き下げられ、歳入基盤が恒久的に弱まりました。さらに2020年以降の新型コロナ対策によって財政支出は急増し、金利上昇に伴って利払いコストも拡大しました。こうした要因の積み重ねにより、連邦債務はGDP比で127〜130%に達し、戦後最大の水準となっています。議会予算局(CBO)の試算では、歳入のうち20%に迫る金額が国債の利払いに充てられるとされ、財政の柔軟性は大きく損なわれています。

アメリカはかつて、高成長によって債務を相対的に減らすことができる国でしたが、現在は「戦費」「減税」「福祉」「利払い」という四重苦により、自らの金利負担で首を締める構造に陥っています。成長で債務を薄める国から、金利で自らを縛る国へ──。この転換こそ、アメリカ財政が構造的赤字から抜け出せない最大の理由です。

前バイデン政権の負債を強調する共和党、現トランプ政権の失策と批判する民主党

CBOが2025年に発表した見通しによると、利払い費は年間1兆ドルを超え、近い将来、国防費を上回る可能性があります。加えて、高齢化の進展により社会保障や医療費は今後10年間で年率6〜7%のペースで増加すると見込まれています。一方で、トランプ減税の恒久化により法人・個人税収の伸びは鈍く、関税収入も不安定です。こうした状況の中で発生した今回の政府閉鎖は、歳入が不足したからではなく、「歳出削減をどの分野がどの程度受け入れるか」をめぐる政治的な対立の結果です。

それを証明するように、今回の閉鎖をめぐり、与野党の責任の押し付け合いが激化しています。民主党側は「現政権が減税を優先し、財政規律を軽視した」と批判し、共和党保守派は「前バイデン政権が医療、移民、福祉の分野で支出を膨張させた」と主張。ホワイトハウスは公式声明の中で「議会の急進左派が政府閉鎖を強制した」と非難し、責任を民主党左派に転嫁しました。

こうした応酬の結果、予算交渉はもはや政策論ではなく「敵味方の象徴戦」と化しています。合意形成力の低下は、アメリカ政治の制度疲労を映し出しています。財政赤字を抑制する政治的なインセンティブを失い、もはや「構造的赤字を誰も止められない」状態。中道的な妥協を導ける勢力は影を潜め、国家を運営する力そのものが政争の副作用で失われつつあります。

過去のどの政府閉鎖よりも深刻である理由

アメリカの政府閉鎖はこれまでも繰り返されてきました。1995年(クリントン政権期)は政策論争を軸に短期間で収束し、2013年(オバマ政権期)は医療保険改革をめぐる一時的な対立にとどまりました。2018〜19年(トランプ政権期)は移民・国境問題をめぐって35日間閉鎖し、史上最長を記録しました。今回の2025年の閉鎖は、それらとは質的に異なります。財政構造の限界と理念的対立が絡み合い、どちらが勝つかではなく「統治そのものが維持できるか」が問われる事態となっているのです。

この根深い対立は、財政への信認も揺るがし始めています。2023年にはFitchが米国債の格付けをAAAからAA+へ引き下げたことが驚きを持って報じられましたが、2025年にはさらに「見通しをネガティブ」とする可能性が示唆されました。Moody’sも利払いの持続性に懸念を示し、Brookings Institutionや責任ある連邦予算委員会(CRFB)などのシンクタンクも「構造的赤字の悪化が民主主義への信頼を損ねる」と警鐘を鳴らしています。

これが即座にドルや米国債の危機を意味するわけではありません。世界最大の消費市場、深い資本市場、そして法制度の透明性という三つの柱が、依然としてアメリカ経済の根幹を支えているからです。しかし、政治的な混乱が経済的な強みに水を指しているのは紛れもない事実です。国債市場では外国保有比率が低下し、中国や日本など主要保有国も長期的に比率を下げる傾向が見られます。「ドルは安全資産」という常識が、ゆっくりとではありますが確実に揺らいでいるのです。

 

この問題は、単なる数字の問題ではなく、国家運営の信頼そのものを問う問題です。ドル、国債、民主主義が揺らげば、アメリカのみならず世界経済全体が動揺しかねないため、今後どう着地するのか、目が離せない状況です。とはいえ、アメリカは危機を通じて制度を修正し、再び成長を遂げてきた国でもあります。リーマン・ショック後の金融再生やコロナ禍後の雇用回復が示すように、アメリカ経済は極めて柔軟で、自己修復力の高いシステムを備えています。今回の混乱を契機に財政再建と政治的再構築に向けた議論が進むなら、それは次の成長サイクルへの第一歩となるでしょう。

 


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