1. 0.25%追加利下げで、政策金利4.75~5.00%に
米連邦準備制度理事会(FRB)が、10月28〜29日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で、追加利下げを実施する可能性が濃厚であることがロイターをはじめメディア各社によって報じられています。市場では、利下げ幅は0.25%と見込まれており、政策金利は4.75~5.00%のレンジに引き下げられるとの観測が広がっています。
パウエルFRB議長は先週の講演で「各会合ごとに経済データを注視しながら判断する」と述べたうえで、「足元のデータに大きな変化は見られない」と発言しました。市場ではこの発言が、景気減速リスクに備えた予防的利下げのシグナルとして受け止められました。
実際に、2年物米国債利回りは4.26%まで低下し、2024年8月以来の水準となっています。フェデラルファンド金利先物の動きからは、年内にあと1回の追加利下げ、すなわち“年内2回”の利下げを織り込む動きが鮮明になっています。
ウィリアムズNY連銀総裁も、「労働市場の軟化が進んでいる兆候が見られる。早期の対応が長期的な安定につながる」と述べ、利下げを支持する意向を示しています。
2.他国の利下げを誘発する可能性も
今回の利下げ観測の背景には、米経済の“高原状態”があります。失業率は4.3%前後と安定していますが、採用や転職といった動きは鈍化しており、雇用市場は明らかに減速傾向を示しています。これまでの利上げの累積効果が、企業活動や個人消費にじわじわと影響を及ぼし始めていると見られています。
一方、インフレ率は再び上昇基調にあります。9月の消費者物価指数(CPI)は前年比+3.8%となり、FRBが目指す2%の目標からは依然として距離があります。そのため、FRBは景気の下支えとインフレ抑制という難しいバランスを取る必要に迫られています。
市場では、利下げによって株価が押し上げられることへの期待が広がっています。S&P500やナスダックはすでにこの観測を織り込みつつあり、テクノロジー株を中心に上昇基調が強まっています。しかし一方で、利下げがもたらす過剰流動性が再インフレを招くリスクや、ドル安が進行する懸念も出てきています。
さらに、FRBが利下げに踏み切った場合には、他の主要中央銀行にも影響が及ぶ可能性があります。欧州中央銀行(ECB)や日本銀行にも追加の政策対応が求められる場面が出てくるかもしれません。こうした中で、各国が再び「利下げ競争」に突入する展開も否定できません。
今回の利下げ観測は、米国だけでなく世界の金融政策や市場動向にも大きな影響を与える可能性があります。今後のFOMCの決定と、それに対する市場の反応が注目されます。
注目記事
なぜ、こんなにも多くのお客様にご支持を頂いているのか(その1)
なぜ、こんなにも多くのお客様にご支持を頂いているのか(その2)
なぜ米国不動産と法人税繰延の相性は抜群に良いのか。