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日本不動産再評価? モルガン・スタンレーの日本特化不動産ファンド、9億ドル規模に。

【この記事のポイント(Insights)】

  • モルガン・スタンレーが日本特化ファンドを9億ドルでクローズし、海外資本の日本再評価が進んでいる。
  • 世界的な金利上昇下でも日本の低金利・円安・企業改革が投資マネーを引き寄せている。
  • 地域戦略ファンド時代の到来を象徴するこの成功は、日本市場の中核化を示す動きとなった。

モルガン・スタンレーの日本初の地域特化型不動産ファンド「North Haven Real Estate Japan Strategy Fund I」の資金調達額は、9億ドルに達しました。これは予定を大きく上回る金額で、世界的な資金引き締めのなかで「日本再評価」の機運が高まっていることの現れではという意見もあります。

本稿では、モルガン・スタンレーの不動産ファンドの構造と戦略を紹介しつつ、世界の投資マネーがなぜいま日本不動産に向かうのかを読み解きます。

日本特化の不動産ファンドが目標の約1.7倍の9億ドルを調達

2025年9月、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント(MSIM)は、日本に特化した不動産ファンド「North Haven Real Estate Japan Strategy Fund I(NHJSF I)」を約1,310億円(約9億ドル)で最終クローズしたと発表しました。当初目標を約1.7倍上回る規模での締め切りとなり、世界的な金利高騰と資金引き締めのなかでの成功は際立ちます。

同ファンドは、日本国内の住宅、物流、オフィス、ホテルといった成長セクターに投資するCore Plus/Value-Add型ファンドです。安定した賃料収入を軸に、改修・再生を通じて資産価値を高める戦略をとります。すでに2025年3月には最初の物件取得を完了しており、ファンド資金の約8%を住宅セクターに投下済みです。

MSREI(Morgan Stanley Real Estate Investing)日本統括の川俣雄氏は、「インフレや賃金上昇、企業のガバナンス改革による不動産効率化など、ポジティブなマクロ環境が整っている」とコメントしています。CIOの板東徹氏も「国内外の機関投資家の関心の高まりを背景に、ローカル知見とグローバル資本を融合することで、差別化された国別投資ソリューションを提供する」と述べました。

モルガン・スタンレーの不動産ファンドブランド「North Haven」シリーズ

「North Haven」は、モルガン・スタンレー不動産投資部門(MSREI)が展開する不動産ファンドの統一ブランドです。同シリーズは、グローバルに機動的に投資する「Opportunistic系列」と、特定の国や地域を深掘りする「Regional Strategy系列」の二層構造で構成されています。

また、モルガン・スタンレーでは不動産投資業界で広く用いられている4つの戦略区分を採用しており、各ファンドがどの戦略のもと運用されるかが明示されています。リスクとリターンの度合いによって「Core(コア:最も保守的)/Core Plus(コアプラス:コアより少しリスクを取る)/Value-Add(バリューアッド:リスク・リターンのバランス型)/Opportunistic(オポチュニスティック最も積極的)」の4段階に整理されています。

旗艦である「North Haven Real Estate Fund IX / X Global」は、それぞれ27億ドル/31億ドル規模の大型ファンドで、北米・欧州・アジアを横断的にカバーします。基本的にはOpportunistic戦略で運用され、リスクの高い再開発・ディストレスト(不良債権)投資を含むハイリターン型であることが特徴です。

一方のRegional Strategy系列は、より安定的なキャッシュフローを狙う「Core/Core Plus」型が中心で、地域の制度や需給構造を熟知した運用チームが担当します。アジア全域を対象としたAsia Core Plus Fund(約12億ドル)、欧州市場を対象とするEuropean Real Estate Fund II(約11億ドル)に続き、今回のJapan Strategy Fund IはこのRegional系列の最新・最大級ファンドとなります。

アジア特化、ヨーロッパ特化に次ぐ規模で、単一国ファンドとしては最大級

Japan Strategy Fund Iの調達額は約9億ドル。これはRegional Strategy系列の中でも上位レンジに位置し、単一国にフォーカスしたファンドとしては異例の規模です。以下は主なNorth Havenシリーズの規模比較です。wm_202510

この数字から見ても、Japan Strategy Fund Iは、アジアや欧州など複数国をまたぐプロジェクトと遜色ない規模で、Regional戦略のなかでも「安定リターンの中核」を担う位置づけにあることがわかります。
グローバルファンドが世界市場の波を捉える“攻めのポートフォリオ”だとすれば、日本戦略ファンドは長期的に安定的リターンを支える“守りのアンカー”の役割を果たす構造です。

出資者層も特徴的です。国内ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が約100億円(約6,800万ドル)を出資。ほかにも日本の金融機関や年金基金が多数参画し、海外からはソブリンウェルスファンド(政府系ファンド)も資金を投じています。グローバル資本と国内機関マネーが共存する、文字どおり「国際連携型の日本ファンド」といえます。

低金利、円安、企業改革……。世界資本が再び日本へ向かう理由

この日本特化の不動産ファンドが調達に成功した事例は、モルガン・スタンレーだけの話ではありません。2024~2025年にかけて、世界的に日本不動産市場への資金回帰が加速しています。

シンガポール政府投資公社(GIC)は2023年、ブラックストーンから全国の物流施設群を8億ドル超で取得しました。これは同年、日本最大規模の不動産取引です。またブラックストーン自体も、一時的に45億ドル相当の資産を売却した後、2024年からホテルやデータセンターなど再成長分野での再参入を始めています。

GPIFをはじめとする国内年金マネーがオルタナティブ投資を拡大するなかで、海外運用会社との協働が進み、さらに海外からも日本向けの新ファンドが次々と設立されています。サムティによるホテル特化型ファンド(580億円)、第一生命と丸紅による4000億円規模の新ファンド、三菱UFJリアルエステートによる1000億円規模の案件など、資金流入は勢いを増しています。

背景には、次の3つの“安定要因”があります。

  1. 低金利の継続 ― 日銀の緩和政策が続き、借入コストが他国より低い。
  2. 円安による割安感 ― 外貨投資家にとって魅力的な為替水準。
  3. 企業改革による不動産売却増 ― コーポレートガバナンス改革の流れで、日本企業が遊休資産を放出中。

こうした構造的な要因が、世界の長期資金(年金・保険・SWF)にとって日本を“セーフヘイブン”たらしめています。川俣氏は「世界がリスクを避ける局面で、日本は安定成長資産として注目を集めている」と語っています。 North Havenシリーズの中でも、日本は今や“Peripheral(周縁市場)”ではなく、“Anchor(中核市場)”に位置づけられつつあります。Bloombergも「東京は2024年前半、世界最大の不動産投資市場に浮上した」と分析しています。

 

日本は「地域戦略ファンド時代」の主役になれるのか?

モルガン・スタンレーの「Japan Strategy Fund I」は、世界的な潮流の変化も象徴しています。これまで機関投資家は、複数地域に分散投資する「グローバルファンド」を重視してきましたが、地政学リスクや為替変動の多様化を受け、地域特化のファンドへの関心が高まっています。特定国・特定テーマに深くコミットし、現地ネットワークを活かして物件の再価値化を進める――。そんな「地域戦略ファンド時代」がはじまろうとしているのかもしれません。

North Haven Japan Strategy Fund Iは、その先駆けとも言えるファンドです。単一国戦略としては最大級の9億ドルという数字は、単に大きいだけでなく、世界の投資家が再び日本を“信頼できる市場”と見なした証です。グローバル資本が再び東京・大阪・福岡に向かう今、North Havenの成功は「日本が再び世界の投資地図の中心に戻る」きっかけとなるのでしょうか? 期待せずにはいられません。

 

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