【この記事のポイント(Insights)】
- 米国では住宅購入の損益分岐年数が過去25年で大きく変化している。
- 金利や価格の変動により「買えば得」から「長期保有でやっと得」へと移行した。
- 投資判断は短期的な損得ではなく、金利・税制・運用戦略を含めた総合設計が重要となる。
米国では長らく「住宅は買った方が得」とされてきました。ところが2025年現在、「購入して得になるまでに20年かかる」と言われる都市も登場しています。本記事では、2000年以降の米住宅市場において、持ち家(Buy)と賃貸(Rent)の損益分岐がどのように変化してきたのかをたどりながら、背景にある経済環境の変化や投資家にとっての示唆を探ります。不動産を「資産」として見たとき、どのような判断軸が必要なのか。その本質に迫ります。
Buy vs Rentの損益分岐年数とは何か
BuyとRentの比較でよく使われる指標が「損益分岐年数(break-even year)」です。これは、住宅を購入して所有し続けた場合のトータルコストが、同じ物件を賃貸し続けた場合のコストを下回るまでに必要な年数を指します。購入には頭金・ローン利息・固定資産税・維持費・機会費用が、賃貸には家賃や更新費、保険料などが含まれます。さらに住宅を購入した場合は、資産価値の上昇や税制上の控除(住宅ローン利息控除や譲渡益控除)も考慮されるため、損益分岐年数は単純な支出比較以上に複雑です。
また、「買わずに賃貸に住み、その分の資金を株式など他の資産に投資していたら?」という機会費用も重要なファクターになります。投資家視点でいえば、住宅という実物資産がもたらすリターン(インカム・キャピタル)と流動性の低さを天秤にかけながら、損益分岐を見極めることが求められます。
米国の「Buy vs Rentの損益分岐年数」25年史
この25年間で、米住宅市場には5つの大きな転換期がありました。金利、住宅価格、家賃、税制、インフレ率などの変化によって、BuyとRentの優位性は繰り返し入れ替わってきたのです。
2000年—「買わなきゃ損」だった時代の金利と価格
ITバブル崩壊後の景気刺激策として、FRBは政策金利を1%にまで引き下げました。30年固定の住宅ローン金利も5〜6%台と当時としては低水準にあり、住宅価格は上昇トレンドに。株式市場は低迷していたため、「住宅を買っておけば値上がり益も得られたし、賃貸より早く元が取れた」という状況でした。実際、多くの都市では2年未満で損益分岐点に達していたとされ、購入が極めて合理的だった時代です。
2005〜2008年—米国住宅市場は、“買うと損”をはじめて経験
2005年前後には、低所得者向けのサブプライムローンが住宅市場を過熱させ、価格が急上昇。FRBが金利を引き上げるとローン金利も上昇し、2007年以降は住宅価格が下落に転じました。Zillowの調査によれば、2005年に購入した世帯は一度は損益分岐点に達したものの、価格下落によって再び「賃貸の方が得」という状態に戻ってしまったと言います。これは、住宅を所有することが価格変動によって逆にリスクになることを、多くの人が初めて実感したタイミングでした。
2010年代—低金利安定期でBuy優位が回復
金融危機後、FRBはゼロ金利政策を維持し、住宅ローン金利は3.5〜4.5%台に安定しました。住宅価格はゆるやかに回復し、株式市場も上昇トレンドに戻ったことで、経済全体が落ち着きを取り戻します。この時期は、「2〜3年以上住むなら買うべき」という従来の常識が再び通用する環境でした。不動産はレバレッジを効かせて保有できる資産として、投資家にとっても再び魅力的な存在となっていました。
2020〜2022年—パンデミックを背景に、超低金利と爆発的な価格上昇の恩恵を受けた“特殊時期”
新型コロナ対応としてFRBは再びゼロ金利に戻し、2020年末にはローン金利が史上最低の2.68%を記録。需要が一気に加熱し、全米の住宅価格は2020〜2022年にかけて約46%上昇しました。一方で、家賃の上昇は価格ほどには進まず、価格と家賃の乖離が拡大。結果として、購入月額コストが家賃を平均で38%も上回るという逆転現象が起こりました。これにより損益分岐年数は長期化し、短期保有では賃貸の方が得なケースが多発。インフレヘッジとして不動産を求める投資家が流入したことも、局所的なバブルを助長しました。
2023〜2025年—金利急騰で損益分岐は「20年時代」へ
2022年以降、インフレの加速を受けてFRBは急激な利上げを実施。政策金利は5%以上、住宅ローン金利も一時8%台に突入しました。価格は高止まりしているにもかかわらず、ローン返済負担が跳ね上がったことで、「高く買って高く借りる」という二重苦に。ZillowやRedfinの試算では、全米平均で損益分岐に7〜9年、都市部では15〜20年かかるとされ、短期での買いは採算が合わないという現実が明らかになっています。投資家にとってもキャッシュフローが出にくく、保有戦略が求められる時代です。
何がBuy vs Rentを決めるのか?5つの変数
もう1つ、背景として重要なのが税制や政策の変化です。2017年以降の税制改革により、住宅ローン控除の上限が100万ドルから75万ドルに引き下げられ、州・地方税(SALT)控除にも年間1万ドルの上限が設けられました。これにより、高額物件を保有する層ほど税制上のメリットが縮小。購入による節税効果が薄れるなか、政策的にも「無理に持たせない」方向へと変化しています。不動産投資家にとっても、税務効果を含めたトータルリターンを再計算する必要性が高まっています。
とはいえ、Buy vs Rentを決める変数は不変で、以下の5つが重要です。
- 住宅ローン金利の水準:金利が1%上がれば、ローンの月額支払いは大幅に増加。コストに直撃する。
- 住宅価格と家賃の比率(プライス・トゥ・レント比):この比率が高いほど、賃貸の割安感が増す。
- 将来の価格上昇期待:住宅が値上がりするなら、長期的には購入が有利に。逆なら逆効果。
- 賃料上昇の有無:賃料が急騰する地域では、固定ローンで買っておく方が得な場合も。
- 代替資産の収益率:株や債券など他資産の期待リターンが高ければ、資金をそこに回す方が合理的。
キャピタルゲインは出にくいが、インカムは得やすい投資環境
投資家への示唆としては、Buyの旨味が薄くなっている今、キャピタルゲイン狙いの戦略は通用しづらくなっています。一方で、家を借りる人が増えるなか、Rent需要は高まり、インカム狙いの物件には妙味があります。また、高インフレ環境では、実物資産である不動産が価値保存の手段となる点も見逃せません。購入すべきか否かは、「何を」「どこで」「どの金利で」「どの通貨で」持つかという複合的な戦略に基づいて判断すべきです。
この25年で、米国のBuy vs Rentは「誰にとっても買った方が得」から「ケースバイケース」へと変化しました。2025年現在は、損益分岐が大きく伸び、Buyのハードルは一段と高くなっています。しかし、不動産を投資資産として捉えるならば、地域や物件の選別、税効果、資金調達コストを加味して冷静に判断することが肝要です。Buy vs Rentの答えは単純な損得ではなく、「その人の資産設計戦略の中での最適解」であるべき時代に入っています。
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