1. 3,000億ドル超の負債抱える“世界最大級の不動産破綻”
香港証券取引所(HKEX)は、2025年8月25日付で中国恒大集団の株式を上場廃止すると正式に発表しました。廃止理由は、株式の売買停止が18カ月継続した場合に上場廃止とするHKEXの規定に基づくものです。恒大は2024年1月、香港高等法院から清算命令を受け、同日から売買停止状態に入りました。この時点で事実上の破綻が確定しており、今回の決定は制度上の最終手続きにあたります。
恒大はかつて中国第2位の不動産開発会社で、ピーク時の時価総額は約HK$4,200億(約540億ドル)、従業員は10万人を超えていました。2020年の売上は5,072億人民元(約700〜800億ドル相当)に達し、全国各地でマンション開発や大型都市開発を展開。しかし、過剰債務と資金繰り難が深刻化し、債務総額は3,000億ドルを突破。「世界で最も多額の債務を抱えた不動産デベロッパー」として知られる存在となりました。清算人による資産売却額はこれまでに約2億5,500万ドルにとどまり、膨大な債務との乖離は依然として大きい状況です。未完工の住宅プロジェクトも多数残っており、地方政府や他社への引き継ぎが続いています。
2. 改めて振り返る、恒大集団の破綻が中国国内外に及ぼす影響
恒大の上場廃止は形式的な出来事にすぎませんが、中国経済にとっては依然として大きな波紋を広げています。中国不動産市場は、恒大の破綻以降、信用不安が慢性化し、住宅販売や価格の下落圧力が続いています。特に地方都市では在庫過多が顕著で、不動産関連の雇用や地方財政への打撃が長期化しています。
金融面では、地方政府融資平台(LGFV)や中小不動産会社の資金繰りに悪影響が及び、国内銀行や信託会社だけでなく、オフショア債を保有する海外投資家も回収難に直面。国際的には、中国不動産関連銘柄や建材・鉄鋼といったコモディティ市場に対し、慎重な投資姿勢が広がるきっかけともなっています。
社会面でも、未完の住宅を購入した消費者の不満や抗議が散発的に発生し、都市開発の停滞による地域経済の冷え込みが懸念されています。恒大の“退場”は、単なる一企業の破綻ではなく、中国経済の構造的リスクを映し出す象徴的な出来事であり、今後も資産売却の進展や未完プロジェクトの処理状況が国内外の投資家心理を左右することになりそうです。
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