3年間免除されていた学生ローン返済が再開
アメリカ政府がパンデミック時の救済施策の1つとして実施していた連邦学生ローンの支払い停止期間が終わり、2023年10月から請求が再開されます。3年間、債務者に大きな利益をもたらした施策が終わることで、米国経済にはどのような影響があるのでしょうか?
エコノミストの多くは、その影響はさほど大きくないと見ています。根拠は主に3つです。1つ目は、パンデミック中には学生ローン支払い以外にも様々な救済策が行われたため、債務者たちは以前より蓄財できているであろうこと。2つ目はバイデン政権が新たに導入した学生ローン返済支援プロジェクト「SAVE」により、適格な債務者は月々の返済額とトータルの返済額がともに小さくできること。3つ目はアメリカ全土で平均収入が増えており、債務額が相対的に小さくなっていることです。
一方で、収入の増加を上回るペースで物価も上昇しています。また、低金利の間に家を購入できた世帯は住宅費が圧縮できましたが、そうでない世帯は住宅ローン金利の高騰と家賃上昇によりむしろ負担が増えています。
経済全体への影響は軽微でも、油断はできない
米証券会社ウェルズ・ファーゴのエコノミスト、シャノン・シーリー氏は、 学生ローンの返済再開により、年間消費支出総額が0.4~0.6%程度減少するであろうと予想しています。
また、経済予測のリーディングカンパニーとして知られるオックスフォード・エコノミクス社は、2023年のGDPにマイナス0.1%、2024年のGDPにマイナス0.3%、それぞれ影響を与えると予想しています。
経済全体への影響としては小さいものと言えそうですが、産業によってはより大きな影響を受けるかもしれません。というのも、貯蓄率が低く、毎月の家計収支にも余裕のない低所得層ほど、返済再開のインパクトが大きいからです。低所得層が家計を切り詰める際に見直されやすいのは、食料、日用品、衣料、エンタメなどへの支出です。こうした産業には、より大きな影響があるかもしれません。
約4,340万人のアメリカ人が利用し、その負債総額は合計1兆6,300 億ドルに達するという連邦学生ローン。返済再開の影響が数字に現れるのはこれからです。
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