NATO首脳会議が開催されるも、ウクライナの加盟についての議論は進捗せず
2023年7月12日、リトアニアでNATO首脳会議が行われ、加盟を目指すウクライナからゼレンスキー大統領も出席しました。しかし、加盟に向けた議論はあまり前に進まず、加盟日程の検討や、終戦後に加盟できるという保証を得ることは叶いませんでした。
ウクライナ加盟に関する議論において、バイデン大統領はどちらかと言えばブレーキ役を担いました。そのことについて、アメリカ国内外から「人道的ではない」という批判が巻き起こっています。ウクライナを援護し、民主党内から批判を浴びながらもクラスター弾の提供を決めたバイデン氏が、同国のNATO加盟をためらうのには主に2つの理由があります。
1つはNATOの存在意義の1つである「集団防衛」の原則で、もう1つがプーチン大統領に「侵攻を正当化する口実」を与える点です。
バイデン大統領が、ウクライナ加盟に弱腰な理由
「集団防衛」の原則は、NATO加盟国のどこか1国が攻撃を受けた場合、全加盟国は自国に攻撃を受けたものとして防衛戦を行うというものです。現在、ウクライナがロシアとの戦争を終結しないままNATO加盟した場合、この集団防衛が直ちに発動し、ロシアとNATOの戦争へと発展します。それは、もはや第三次世界大戦を意味するため、ウクライナ加盟にはまず現在の戦争状態を終わらせる必要があります。ゼレンスキー大統領も、このことには理解を示しており、終戦後の加盟を見越してスケジュールを立てることを要求していました。
しかし、バイデン大統領はこれについても明確な日程を検討することを避けました。その理由が、プーチン大統領およびロシアに「侵攻を正当化する口実」を与えたくないからだと考えられます。というのも、ロシアは今回の侵攻の理由を、ウクライナとNATOの急接近だと説明しているからです。東西ドイツが統合した1990年、アメリカはNATOの接近を警戒するロシアに対して、「東西ドイツ統一後の管理を任せてもらえれば、NATOは東方に1インチたりとも拡大しない」と約束しましたが、その後10年も経たずにポーランドが加入すると、なし崩し的に東欧の国々が加盟。現在はラトビアやエストニアなど、ロシアと国境を接する国も加盟済みです。
そんななかで、隣国のなかでも国土が広く接する国境も長いウクライナとNATOの接近をロシアが警戒するのは当然のことではあります。もし、終戦前にウクライナのNATO加盟についての具体的な交渉がはじまると、「プーチン大統領が警戒した通りだった」と、主張の一部に正当性を与えてしまいます。そうなると、終戦後の条件整理においてロシア側の要求をある程度飲む必要が出てきてしまうのです。
ただちに戦争が発生することを避けるため、終戦後のロシアの要求を抑え込むために、ウクライナのNATO加盟を進捗させられないバイデン政権。しかし、その態度に集まる批判は来年の大統領選にも影響しかねません。
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