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ZillowとRedfinの「結託」に独禁法訴訟。プラットフォーム支配への逆風か

【この記事のポイント(Insights)】

  • ZillowとRedfinが賃貸広告協定で提訴され、不動産テック独占への批判が強まる。
  • 便利さの裏で情報が少数企業に集中し、市場の公平性が揺らいでいる。
  • 業界は囲い込みからデータ共有へ転換し、透明性を軸に再編が進みつつある。

2025年9月末、アメリカの不動産テック(PropTech)業界を代表する2社、ZillowとRedfinが独占禁止法違反の疑いで訴えられました。米連邦取引委員会(FTC)と5つの州が両社を賃貸広告市場での競争抑制行為で提訴。Zillowが市場の「ゲートキーパー」として批判を浴びるなか、業界全体の透明性や公正性が問われています。

本稿では、この訴訟の背景にある構造的課題と、今後のプロップテック業界の方向性について整理します。

便利さと公平性は両立し得ない? テック業界の永遠の課題が不動産テックにも。

2025年2月、ZillowとRedfinは賃貸物件広告をめぐり、相互に掲載を調整する協定を結びました。報道によると、この契約によりRedfinは大型賃貸広告事業から最長9年間撤退し、Zillow側の掲載形式に合わせる内容だったとされています。FTCはこの行為を「競争を意図的に排除する協定」と判断し、9月末に訴訟を起こしました。同時期、もうひとつの大手であるCompassもZillowを反トラスト法違反で提訴しています。複数の訴訟が重なった背景には、物件データを握るプラットフォーム支配構造への不信があるといえます。

また、買い手の資金力格差も不信感を強める要因になっています。米住宅市場では金利上昇と在庫逼迫が続き、ローンを使わずに購入する全額現金(All-cash)取引が増加しています。2024年の全米平均は32.6%に達し、過去10年でも高い水準となりました。ただでさえ資金力のある買い手でないと買いづらい状況のなか、資金力のある大企業が情報へのアクセス性へのコントロールを強めていることに反発が強まったのです。

検索大手やSNS大手も反トラスト法違反によって度々提訴されていますが、「テックが市場を便利にした一方で、公平性は損なわれていないのか」という根源的な問いは、ついにプロップテック業界にも及んだようです。

不動産取引の大部分を独占。“黄金期”を謳歌していたプロップテック企業

今回やり玉にあがっているZillow、Redfinをはじめとするプロップテック企業は2000年代に登場し、2010年代後半から急成長を遂げました。 これらの企業は「不動産情報のGoogle」とも呼ばれ、検索動線、査定、広告、エージェント送客を一体化させたことでユーザーの利便性を飛躍的に高めました。収益の柱は広告料とリード(見込み客)課金です。閲覧履歴や問い合わせデータをもとに掲載順位を最適化し、広告価値を高めていくスパイラルが生まれました。

近年では、不動産取引の周辺を金融で取り囲む動きも加速しています。2025年7月にはRocket CompaniesがRedfinを買収し、「物件探しから住宅ローン契約までをワンストップで完結させる」垂直統合モデルを打ち出しました。

このようにして、不動産取引の入り口はわずか数社に集中していきました。かつて地域密着型だったアメリカの不動産業界は、今や“データを制する者が市場を制す”構造に変わりつつあります。しかし、この圧倒的に優位な構造にあぐらをかこうとしたことが彼らの過ちでした。

Zillow×Redfin協定は、誰の利益を損ね得るのか?

FTCが問題視したのは、Redfinの競争力を意図的に解体した構造です。協定によりRedfinはZillowと競合する形で賃貸広告を出せなくなり、結果として賃貸広告市場の独立性が失われたとされています。バージニア、アリゾナ、コネチカット、ニューヨーク、ワシントンの5州もFTCに同調し、「家賃上昇や広告品質の低下、入居者の選択肢の減少を招く」と訴えました。報道によれば、協定に関連する取引対価は約1億ドル規模に上るとされています。

一方、CompassがZillowを訴えた別件では、MLS(不動産リスティング)掲載ポリシーの排他性が争点になっています。Zillowが自社提携エージェントや広告主を優先し、他経路での露出を制限しているという主張です。私企業の利益のために公平な競争が損なわれていることへの抵抗であるという点では今回の訴訟と同根と言えます。

こうした動きは、消費者の目に見えない形で「情報のゲートキーパー」が形成されていることを示しています。もし主要プラットフォームが物件情報の露出をコントロールするようになれば、家賃や仲介手数料の上昇を通じて最終的なコスト負担が消費者に転嫁されるおそれがあります。利便性の裏側で、市場の公平性が損なわれている可能性があるのです。

なぜ今、批判が強まったのか

プロップテックの独占構造に対する批判は以前からありましたが、ここ1〜2年でその声は明確に強まっています。

第一に、金利上昇と住宅価格の高止まりによって市場の二極化が進み、ローンを組める層と現金購入層の間に情報格差が広がりました。プラットフォーム支配が格差拡大の一因と見なされ始めています。

第二に、法執行の本格化が進んでいることです。FTCや州司法当局は、不動産テックを「新たなビッグテック」とみなし、独占禁止法の適用範囲を拡大しています。
さらに、Compassなど業界内からの反発も強まっています。大手同士が互いに訴訟を起こす構図は、検索エンジンやSNS業界で起きた過去の事例を想起させます。

第三に、社会的注目度の上昇です。アルゴリズムによる価格設定や表示順位の決定が「住宅アクセスの公平性」を損なうとの指摘が増え、都市政策や人権の観点からも議論が活発化しています。

これらの声からも分かるように「便利だから許される」という段階を過ぎ、テック企業が社会的説明責任を果たす段階に入ったことを意味しています。

公平なプロップテックとは? 期待される次世代企業群

いま業界が模索しているのは、“囲い込み”から“共有”への転換です。アメリカでは、API(異なるソフトウェアやシステムがデータや機能をやり取りするための仕組み)を開放し、複数のプラットフォーム間でデータを相互運用できるようにする動きが広がっています。代表的な存在が不動産データ基盤のCoreLogicやCoStar Groupです。これらの企業はオープンAPIやSaaS形式で情報を提供し、プラットフォーム同士の「相互接続性」を強みとしており、ユーザーやデータを独占的に囲い込む従来型のプロップテック企業とは根本的に異なる思想が見て取れます。

また、Redfinを買収したRocket Companiesも、金融と仲介の接続を再設計する方針を示しています。垂直統合モデルが今後も生き残るには、公正表示とデータ共有の透明性を確保できるかが成長の鍵になるでしょう。FTCの訴訟が進行するなか、業界では「規制ガイドライン策定」や「データ標準化による競争促進」も議論され始めています。集中支配の修正こそが、次世代のプロップテック企業にとっての新しい競争条件になりそうです。

 

これまで、ひたすらに便利さを追求してきたプロップテック業界ですが、次に求められるのは、正しさなのかもしれません。Zillow×Redfin訴訟は、成熟産業となった不動産テックが直面する「透明性の試練」だといえます。いま業界が直面しているのは、“市場を支配するテック”から“市場を支えるテック”へと進化できるかどうかという岐路です。米国発のこの訴訟は、テクノロジーが公正な市場のインフラとして機能できるかを問う、世界的な試金石になるでしょう。

 

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