mv

AI投資は続き、住宅は冷え込む。利上げの効き方の差が米経済に及ぼす影響

本記事に掲載されている情報は執筆時点のものです。制度・仕様・価格等の変更により、現在の状況と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

【この記事のポイント】

  • 利上げの影響は、投資の期待収益や企業・家計の資金調達条件によって異なる。
  • AI投資が高金利下でも続けば、物価抑制に伴う負担が住宅や借入依存の企業・家計に偏る可能性がある。
  • 長期の米経済を左右するのは、AI投資が生む生産性向上と、投資回収・資金調達の持続性だ。

 

金利が上がると、企業は設備投資を控え、家計も住宅や自動車を買いにくくなります。需要が落ち着けば、物価の上昇も抑えられる。これが利上げの基本的な仕組みです。

ところが米国では、AI関連投資が旺盛な一方、住宅市場などには高い金利が重荷となっています。10月19日のロイターも、追加利上げの負担がAI以外の分野に偏る可能性を報じました。同じ金利が、なぜ違う結果をもたらすのでしょうか。短期と長期に分けて考えます。

同じ高金利でも、AI投資と住宅では違う景色

FRB(米連邦準備制度理事会)は2026年9月16日、政策金利の誘導目標を0.25ポイント引き上げ、3.75〜4.00%としました。もっとも、政策変更が実体経済に及ぼす影響には時間がかかります。現在見られる投資の違いを、9月の利上げだけの結果と考えることはできません。まず注目したいのは、高い市場金利の下でも、分野ごとの勢いに差があることです。

FRBは7月の金融政策報告で、AIを支えるインフラへの支出が企業投資の強さの中心にあると説明しています。大企業の資金調達環境は総じて良好な一方、中小企業では融資を受けにくい状況が続いているとも指摘しました。例えばマイクロソフトは、4〜6月の設備投資をリース込みで410億ドルと説明。同時期に本業から得た営業キャッシュフローは554億ドルでした。AI以外も含む世界全体の数字ですが、巨額の投資を支える資金創出力が分かります。

一方、フレディマックの10月15日の調査では、30年固定住宅ローン金利は平均7.40%で、前年同時期の6.27%を上回りました。9月の一戸建て住宅の建設許可は、季節調整済み年率84.5万戸と、前月比4.0%減、前年比4.8%減です。一戸建て着工は前月比減でも前年比では増えており、住宅指標が一様に悪化しているわけではありませんが、新たな供給計画には弱さが見られます。

中小企業団体NFIBの9月調査でも、今後6カ月に設備投資を計画する経営者の割合は前月より2ポイント低い22%でした。ただし、投資の慎重化には需要や人材確保、先行きの不確実性も関係します。高金利下での動きの違いは確認できても、その差のすべてを金利で説明することはできません。

投資判断を分ける「期待する利益」と「資金調達」

違いを生む第1の要因は、投資によって期待する利益です。企業は金利の水準だけを見て投資を決めるわけではありません。将来の需要が拡大し、高い利益を得られると考えれば、資金調達コストが多少上がっても、投資を続ける理由が残ります。反対に、利益の余裕が小さい案件では、わずかな金利上昇が見送りの決め手になり得ます。FRBが公表した、デューク大学とCFO誌による2012年のCFO(最高財務責任者)調査を使った研究では、成長期待の高い企業ほど、仮定の金利上昇に対して投資計画を変えにくいと回答する傾向が見られました。ただし、超低金利期の企業調査に基づく結果であり、現在のAI企業を直接調べたものではありません。

第2の要因は、お金の調達方法です。本業で稼いだ資金を投資に回せる企業は、銀行から新たに借りる企業ほど、融資金利の上昇が直接の負担にはなりません。社債や株式など、複数の調達手段を使えるかも重要です。もっとも、自己資金にも、投資せずに運用して得られたはずの利益という機会費用があります。資金が豊富でも、金利上昇が投資の採算や顧客需要に与える影響からは切り離せません。

第3の要因は、借り入れの条件と時期です。低い固定金利で長期の資金を確保していれば、市場金利が上がっても、既存の借入負担はすぐには増えません。一方、変動金利の融資や、満期が近く借り換えが必要な借り入れでは、負担が表れやすくなります。FRBの研究でも、満期を迎える債務の割合が高い企業ほど、投資が金融政策に反応しやすいと報告されています。同じ業種・規模の企業でも、金利への強さが違う理由です。

住宅にも同様の違いがあります。既に低利の長期固定ローンを組んだ家計と、これから高い金利で購入する家計では、負担が大きく異なります。前者も住み替え時には高い金利に直面するため、転居を控えることで中古住宅の売り物件が減る場合があります。買い手の需要を抑える金利上昇が、同時に売り手の供給も抑えるのです。

また、AI関連企業の中でも条件は違います。既存事業から大きな利益を得る企業と、設備を増やすために外部資金を必要とする企業では、高金利への耐久力が異なります。現在は資金に余裕があっても、投資規模が膨らみ、借り換えが近付けば、金利への反応は変わり得ます。「AI企業だから強い」という業種名だけの判断には限界があります。

こうした分野差は以前にもありました。2022〜2023年には住宅が金融引き締めの影響を受ける一方、政策支援のある半導体・EV用電池工場の建設が拡大しました。金利の負担が増しても、期待収益や支援策がそれを上回れば、投資は続きます。投資が増えていることだけから、利上げの影響がゼロだったとは判断できない点にも注意が必要です。

短期には、物価を抑える負担が偏りやすくなる

この違いが続くと、今後数四半期の米経済には、どのような影響が及ぶのでしょうか。まず考えられるのは、インフレを抑えるための負担の偏りです。9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事要旨では、AI関連投資の急増が、エネルギー価格の上昇などとともに物価圧力に寄与していると指摘されています。設備や電力、人材への需要が強いままであれば、その部分の過熱を金利で冷やすことは難しくなります。

ただし、AI向けの半導体や設備への支出が、そのまま家計の消費者物価に計上されるわけではありません。建設などで他の用途と資材や人材を取り合い、費用上昇が製品・サービスの価格へ波及する、といった経路を考える必要があります。AI投資の金額だけから、物価全体への押し上げ幅を読み取ることはできません。

それでも、他の分野の需要が減れば、経済全体の物価圧力は弱まり得ます。住宅購入や一般企業の設備投資、借り入れによる消費が控えられれば、企業は値上げしにくくなります。ただし、AI関連の需要が増え続ければ、住宅などで生じる需要減少が相殺され、経済全体の需要の伸びが下がりにくくなります。その程度によっては、物価安定のために金利をさらに引き上げたり、高い金利をより長く維持したりする必要が生じる可能性があります。

その際、住宅建設や一般企業の投資が先に弱まり、関連する雇用や所得へ影響が広がることも考えられます。物価を押し上げる需要と、物価を抑えるために削られる需要が、同じ分野にあるとは限りません。AI関連産業が成長を支えていても、その恩恵が小さい企業や、高い借入負担を抱える家計では、景気の強さを実感しにくい状態になり得ます。

もっとも、これは追加利上げが必ず必要になるという予測ではありません。供給制約の緩和やエネルギー価格の低下が進めば、需要を大きく削らずに物価圧力が弱まる可能性もあります。また、FRBが物価安定に取り組む姿勢を示すことは、企業や家計の「今後も物価が上がる」という期待の抑制にもつながります。FOMCでも、個別分野の値上がりが広範で持続的なインフレへ発展するのを防ぐ意義が議論されています。

長期には、生産性向上と投資の調整が同時に進む可能性

数年先を考える際には、1990年代末のIT・通信投資が参考になります。FRBが1999年から利上げを進めた局面でも、ハイテク投資は拡大を続け、2000年には住宅投資と異なる動きを見せました。しかし、その後は設備の過剰感や収益見通しの悪化、資金調達の厳しさが表面化しました。当時のファーガソンFRB副議長は、競争上の地位を確保しようとする投資や、長い工期が、設備の積み上がりにつながる仕組みを論じています。

サンフランシスコ連銀の2004年の研究によると、2001年の実質IT投資は、各年末の値に基づく比較で10.7%減少しました。その後は回復しています。インターネットの普及が続いても、設備投資の急増が続くとは限らなかったのです。ただし、今回の中心には資金力のある既存の巨大企業がおり、当時と同じ調整が起きると決め付けることはできません。

AI投資の長期的な帰結には、大きく2つの方向があります。1つは、投資が幅広い産業の生産性向上につながる道です。AIによって同じ人員や時間で生み出せる価値が増えれば、賃金が上がっても、製品・サービス1単位当たりの労働コストを抑えやすくなります。設備を建設する時期には需要を押し上げ、その設備を活用する段階では供給力を高める。こうした時間差が生じる可能性があります。

ただし、企業がAIを導入してから、仕事の進め方を変え、成果を上げるまでには時間も必要です。国全体の生産性には、景気やAI以外の投資も影響するため、その伸びをAIだけの成果とは呼べません。FOMCの議事要旨でも、AIが生産性や潜在的な生産能力を高める効果について、時期と規模に大きな不確実性があると認めています。

もう1つは、利益の伸びが期待に追い付かず、投資が調整する道です。例えば、需要拡大に備えて毎年20台の設備を追加していた企業が、「追加は5台で足りる」と判断すれば、新規投資は75%減ります。これは仮の例ですが、利用が増えていても設備投資は大きく減り得ることを示しています。高い借入負担があれば、収益見通しの悪化と資金調達難が重なり、減速が深まるおそれもあります。

実際には、この2つが併存することも考えられます。AIが経済の生産性を高める一方、個別企業では設備の過剰や投資損失が生じるという展開です。IMF(国際通貨基金)の10月の分析も、今回の投資を支える大手の財務基盤の強さを認めつつ、外部資金への依存や企業間の結び付きの増大を指摘しています。技術の成果が大きくても、すべての投資案件が期待した利益を得られるとは限りません。

住宅側にも長期の影響があります。高い資金調達コストが新規建設を抑えれば、後年に供給される住宅が少なくなる可能性があります。需要が維持される地域では、住居費が下がりにくくなる要因となり得ます。ただし、既に建設中の住宅や地域の人口動向にも左右され、金利上昇が将来の家賃を必ず押し上げるわけではありません。短期の需要抑制と、長期の供給力への影響は、分けて考える必要があります。

米経済の強さを、投資額と利益の両面から見る

今後の米経済を見るうえで、AI関連の設備投資額は重要です。しかし、それと並べて、営業キャッシュフローや利益が増えているか、借り入れやリースの負担がどれほど積み上がっているかを確認する必要があります。設備を造る力と、設備を使って稼ぐ力が釣り合っているかが、投資の持続性を左右するためです。

同時に、住宅の建設許可や一般企業の設備投資、雇用の動きも見逃せません。AI投資だけで成長を支える状態と、幅広い産業が投資・雇用を増やす状態では、経済の安定性が違います。生産性の改善についても、一部企業の効率化が経済全体にどこまで広がるかが問われます。

日本から米国株や米国債、米住宅に投資する際にも、「米経済は強いか、弱いか」という一括りの判断では捉えきれません。資金調達に強い企業と借り換えが迫る企業、住宅購入者と既存の低利ローン保有者では、同じ金利の意味が異なります。どこが成長を支え、どこが金利の負担を受けているのか。その関係を追うことで、成長と物価安定が両立する条件も見えてきます。

 


注目記事
なぜ、こんなにも多くのお客様にご支持を頂いているのか(その1)

なぜ、こんなにも多くのお客様にご支持を頂いているのか(その2)

なぜ米国不動産と法人税繰延の相性は抜群に良いのか。

※この記事は、掲載日時点の情報を基に作成しています。最新状況につきましては、スタッフまでお問い合わせください。

アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋

オープンハウスの投資メソッドを
無料ダウンロード

アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋

オープンハウスの投資メソッドを無料ダウンロード

この資料では、以下の内容をご紹介しています。

以下の内容をご紹介しています。

  • アメリカ不動産投資が「今」注目される4つの理由
  • スケールが違うアメリカ投資市場の基礎知識
  • 日本とは全く異なる不動産の市場環境と投資効果
  • 投資エリア選びの重要さと注目の成長エリア

さらに知りたい方は簡単1分

資料をダウンロードする

アメリカ不動産投資、始め方がわからずお悩みではありませんか?

2020年の税制改正後も、アメリカ不動産投資は依然として「資産分散」「減価償却」などのメリットで注目を集めています。

ただ、アメリカを含む海外不動産投資に興味はあるけれど「言語の壁がある」「現地の事情がわからない」「リスクが高そう」といったお悩みも多く見られます。

実際、日本からアメリカ不動産投資を始めようとしても、現地の法律や税制の違い、物件管理の難しさ、為替リスクなど、様々な課題に直面することがあります。

しかし、適切な知識とサポートがあれば、アメリカ不動産投資は魅力的な資産運用の選択肢となります。安定した不動産需要、基軸通貨ドルでの資産保有、長期的な不動産価値など、その魅力は2020年の税制改正後も健在です。

そこで、アメリカ不動産投資に興味をお持ちの方へ、『アメリカ不動産投資成功ガイド』をお届けします。オープンハウスがこれまで5000棟超、3000名以上の投資家様をサポートしてきた実績をもとに、投資の基礎知識から最新の市場動向、成功事例までをわかりやすくまとめました。

オープンハウス独自の強み、アメリカの複数都市に展開する現地法人による直接管理と日本語でのきめ細やかなサポート体制についてもご紹介しています。お忙しい投資家様のお手を煩わせず、英語不要でアメリカ不動産投資を実現できるワンストップサービスです。

ドル建てでの資産運用を実現したい方、海外投資に興味はあるけれど不安を感じている方は、ぜひこの機会にダウンロードしてみてください。

アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋

オープンハウスの投資メソッドを
無料ダウンロード

アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋

オープンハウスの投資メソッドを無料ダウンロード

この資料では、以下の内容をご紹介しています。

以下の内容をご紹介しています。

  • アメリカ不動産投資が「今」注目される4つの理由
  • スケールが違うアメリカ投資市場の基礎知識
  • 日本とは全く異なる不動産の市場環境と投資効果
  • 投資エリア選びの重要さと注目の成長エリア

さらに知りたい方は簡単1分

資料をダウンロードする

まずはセミナーに参加しよう

すべて見る
弊社コンサルティングスタッフ

【日本全国オンライン対応可能】アメリカ不動産個別相談セミナー

10月27日(火) 、10月28日(水) 、10月29日(木) 、10月30日(金) 9:30~19:30
弊社コンサルティングスタッフ

【全国オンライン対応可能】年10日から購入できる「NOT A HOTEL」個別相談セミナー

ご希望日程よりご選択ください。
前へ
次へ

タグ一覧