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AIの電力は自前で確保へ。Googleが原発増強を支える大型契約

本記事に掲載されている情報は執筆時点のものです。制度・仕様・価格等の変更により、現在の状況と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

1. 既存原発を増強し長期契約で電力を確保

Googleと米電力大手コンステレーション・エナジーは10月6日、AI向けデータセンターなどの電力需要に対応する大型契約を発表しました。柱となるのは、既存原発の発電能力を89万kW増やす計画を支える20年間の電力購入契約です。コンステレーションは43億ドル超を投じ、イリノイ、ペンシルベニア、ニュージャージーの3州にある原発設備を増強します。

対象は6カ所の原発にある11基の原子炉です。タービンや蒸気発生器、デジタル制御システムなどを更新し、既存設備から取り出せる電力を増やします。Googleによると、追加される89万kWは大型原子炉1基に相当する規模です。同社は、新しい原子炉を建設するより早く供給力を増やせる方法として、既存原発の増強を位置付けています。最初の出力増強は2028年までに実現する予定で、計画全体では2032年末までに能力を追加するとしています。

両社は別途、270万kWの電力について15年間の供給契約も結びました。2つの契約を合わせた供給規模は359万kWです。このうち、新たな発電能力として追加されるのは原発増強による89万kWで、残る270万kWは既存の発電設備を支える契約です。契約全体の規模が、そのまま電力供給の純増分になるわけではありません。

今回の「自前で確保」は、Googleが原発を所有するという意味ではありません。長期間の買い手になることで、電力会社に将来の収入の見通しを与え、設備投資を支える仕組みです。Googleは、こうした契約が供給網や人材への投資、資金調達の確実性を高めると説明しています。電気を使う企業が、供給を増やすための事業にも深く関わる形です。

背景には、米東部や中西部の広域送電網を運営するPJMインターコネクションの電力需給問題があります。PJMは8月、新たなデータセンターなどが追加の供給力を確保する枠組みを提案しました。供給力が十分に裏付けられていない新規の大口需要については、電力不足が深刻化した緊急時に、一般家庭などへの供給を守るため、先に電力使用を減らす仕組みも盛り込んでいます。現時点では米連邦エネルギー規制委員会(FERC)の承認待ちの提案です。供給力の確保には購入契約なども含まれ、すべての事業者に一律の自家発電義務が課されたわけではありません。

2. AI投資の成長を左右する電力と立地の条件

今回の契約が示すのは、AIへの投資拡大に、電力供給を増やすための手当てが伴うようになっていることです。PJMは、管内で2024年から2030年にかけて見込む電力需要増3,200万kWのうち、3,000万kWをデータセンターによるものとしています。これは米国全体の数字ではなく、PJM管内の将来予測です。需要増の大部分がデータセンターに集中する見通しで、設備を建設する企業と電力を供給する企業の双方に、追加投資が求められる状況です。

長期購入契約は、電力会社にとって設備投資を支える収入の見通しになります。Googleも、供給拡大を支える契約によって、事業成長に必要な電源を確保しようとしています。一方、この契約はGoogleのAI事業の需要や採算まで保証するものではありません。AIの利用拡大やデータセンターの稼働率、技術の進歩による電力効率の変化も、長期の収益に関わります。供給を確保できることと、その電力を使う事業が利益を生むことは、分けて考える必要があります。

不動産投資の観点では、データセンターに適した土地や建物を評価する際、広さや取得価格に加えて、利用できる電力の規模と送電網への接続時期が重要な条件になると考えられます。同じ地域でも、必要な電力を確保できる施設と、接続や増強を待つ施設では、稼働開始の見通しが異なり得ます。発電所の近くに土地があることだけで、必要な電力をすぐに利用できるとも限りません。土地の取得や建物の完成が先行しても、電力を利用できる時期が遅れれば、設備が収益を生む時期も後ろにずれる可能性があります。施設の建設計画と電力の利用開始時期を合わせて確認することが、事業計画を評価する手掛かりになります。

もっとも、今回の契約による供給拡大には数年かかります。予定されている89万kWが契約発表時点ですべて使えるようになったわけではありません。追加の発電能力が増えても、それを上回る需要が生まれれば、需給の厳しさは残り得ます。また、両社は家庭の負担を増やさず供給力を拡大する方針を示していますが、それだけで地域の電気料金が下がるとまでは言えません。将来の需要や他の電源、送電網の状況も関わるためです。

米国株やデータセンター関連の不動産に関心がある投資家は、今後、原発の増強が予定どおり進むか、PJMの制度案がどのような条件で認められるかを見ていくことになります。契約の規模に加え、実際に供給力が増える時期と、その電力を使う施設の稼働計画まで確認すると、投資の見通しを判断しやすくなります。今回の動きは、AIの成長を支える投資が、半導体や計算設備から電力インフラへも広がっていることを示しています。

 


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