1.半導体は関税強化が進行、EVは“別ルート”で遮断
2026年4月上旬、ReutersやFinancial Timesなどが報じたところによると、ドナルド・トランプ政権は、中国製品に対する関税政策の再強化に向けた検討を進めています。対象の中心となっているのは、半導体や電気自動車(EV)といった戦略分野です。
もっとも、両者の扱いには明確な違いがあります。半導体については、すでに2025年までに対中関税が50%へ引き上げられており、さらに2026年1月には一部の先端半導体に25%の追加関税が導入されました。加えて、2026年2月時点の報道では、対象品目を拡大する追加関税が検討段階にあるとされており、関税強化は「進行中の政策」と位置付けられます。
一方、EVについては、2024年に関税が100%へ引き上げられた後、現時点でさらなる関税引き上げは公式には確認されていません。むしろ2025年以降は、通信機器規制や安全保障上の制約など、非関税措置によって中国製車両の市場参入を制限する動きが強まっています。つまり、EV分野では「関税」ではなく「規制」による遮断が主軸となっています。
こうした一連の措置の背景には、米国が中国依存の低減とサプライチェーンの再構築を国家安全保障の問題として位置付けていることがあります。関税はその手段の一つですが、分野ごとに使い分けられている点が今回の特徴です。
2. サプライチェーンは分断ではなく「再配置」へ
今回の動きが示唆するのは、米中間の経済関係が単純に断絶へ向かっているわけではなく、「選択的デカップリング(分断)」が次の段階に入ったという点です。とりわけ半導体は中間財としての性格が強く、関税の影響は電子機器や自動車、データセンター投資など幅広い分野に波及する可能性があります。
ただし、インフレへの直接的な影響は限定的とみられます。関税コストは一定程度価格に転嫁される傾向がありますが、今回の対象は特定分野に限られており、消費者物価指数(CPI)への押し上げ効果は小幅にとどまる公算が大きいです。むしろ重要なのは、企業側のコスト構造の変化です。
実際、2018年以降の対中関税局面でも、輸入は中国から他国へとシフトしました。メキシコやベトナムといった第三国が代替供給拠点として台頭し、必ずしも米国内への生産回帰(リショアリング)が進んだわけではありません。今回も同様に、「中国→第三国→米国」という迂回型のサプライチェーンが強化される可能性が高いと考えられます。
この結果、米中の分断は進むものの、それは完全な切り離しではなく、供給網の構造的な再配置として現れます。投資家にとっては、関税水準そのものよりも、どの地域が新たな製造・供給拠点となるのか、そして企業がコスト増をどこまで吸収できるのかが、より重要な論点になりつつあります。
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