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AI時代の覇者は資源で決まる? レアアース危機の歴史と現在

【この記事のポイント(Insights)】

  • 米国はアルゼンチンに巨額支援を行い、リチウム資源確保と対中牽制を狙っている。
  • 一方、ベネズエラには制裁と軍事圧力を強化し、原油と影響圏の奪還を図っている。
  • 資源と通貨支配を軸に「支援か制裁か」を選別する新モンロー主義的戦略が浮き彫りになっている。

2025年秋、米国の中南米外交が鮮やかな対比を描いています。アルゼンチンには巨額の経済支援、ベネズエラには経済制裁と軍事的圧力。両国の運命を分けたものは、果たして「民主主義」でしょうか「人権」でしょうか。いえ、そこにはより現実主義的な戦略、すなわち「資源確保」と「覇権維持」という明確なロジックが見え隠れします。本記事では、米国の中南米戦略を読み解くことで、日本のビジネスマン・投資家にとってどんな教訓があるのかを探っていきます。

手厚く支援されるアルゼンチン。異例の経済支援

2025年10月、米国はアルゼンチンに対し、異例の経済支援を発表しました。その総額は最大で400億ドル。内訳は、米財務省の外国為替安定基金(ESF)からの200億ドルの通貨スワップと、米大手金融機関と連携した200億ドル規模の民間ファシリティ。ドル不足にあえぐアルゼンチンにとってはまさに“金融の生命線”です。

トランプ政権は支援に際し「政治的条件は課さない」と建前を取りつつも、実際にはミレイ与党の中間選挙勝利が支援実施の前提であるかのような発言も見られました。選挙直前のタイミングで支援表明がなされたのは、政権の安定が米国の戦略に不可欠であることの裏返しとも言えます。

また、米政府は為替市場でアルゼンチン・ペソ買いの介入を実施したり、同国産牛肉の輸入拡大策を発表するなど、金融だけでなく実物経済面でも支援の手を差し伸べています。

背景には、アルゼンチンが有する豊富な鉱物資源、とりわけリチウムへの関心があります。世界有数のリチウム埋蔵国である同国は、EVや再エネのサプライチェーンを握る存在であり、米国にとっては中国依存からの脱却を図る上で極めて重要なパートナーです。さらに、アルゼンチンはこれまで中国との人民元スワップや軍事協力も進めてきた経緯があり、米国は今回の支援を通じて金融的にも影響力を回復しようとしているのです。

突き放されるベネズエラ。圧力路線の再強化

その一方で、ベネズエラに対しては正反対の姿勢を貫いています。米国は2025年、マドゥロ政権に対する制裁を再び強化。バイデン政権時代に一時的に許可されていた米シェブロン社の現地事業も取り消され、対ベネズエラ原油には25%の関税が課される方針が発表されました。

また、選挙の正統性を巡って「不正選挙を認めない」との立場を取り、マルコ・ルビオ国務長官が「マドゥロ政権は終わりに近づいている」と発言するなど、政権交代を促すシグナルも強まっています。

さらにカリブ海周辺では、米軍が空母やF-35を含む部隊を展開。麻薬撲滅作戦を名目に、ベネズエラ国内への空爆オプションも提示されていると報じられています。

一見すれば、麻薬や民主主義の問題に対応しているように見えますが、実際にはベネズエラが中国やロシアの後ろ盾を得て、反米色を強めていることへの地政学的な警戒がその根底にあります。特にベネズエラの原油埋蔵量は世界最大級。エネルギー安全保障の観点からも、米国が“敵対国家”にこれを渡したくないのは当然と言えるでしょう。

資源と通貨を軸とする「選別的関与」の論理

アルゼンチンとベネズエラ。両国の命運を分けたのは、単に体制や選挙の正当性ではありません。むしろ明確に見えてくるのは、「資源と通貨支配」という現実的な軸です。

アルゼンチンはリチウム、ベネズエラは原油という、いずれも戦略的な鉱物・エネルギー資源を抱えています。そして両国とも、中国やロシアとの経済・軍事的接近が進んでいた共通点もあります。

米国は、アルゼンチンに対しては「味方」として支援を与え、その資源と通貨(人民元スワップ)を取り戻そうとします。一方で、ベネズエラに対しては「敵」と見なし、制裁と軍事的包囲によって影響力を断とうとします。

この構造は極めて現実主義的です。表向きは民主主義や自由を掲げつつも、裏では「資源と通貨の主導権をどちらが握るか」を巡る覇権争いが展開されています。

専門家の見解と“新モンロー主義”

こうした動きに対し、専門家からも鋭い分析が出ています。元ベネズエラ外交官のアルフレド・トロ・ハーディ氏は、「トランプ政権の中南米政策は、21世紀の“モンロー主義”の再起動に他ならない」と断言します。

モンロー主義とは、19世紀に米国が欧州列強の中南米介入を拒否するために掲げた外交原則。しかし、21世紀のそれは「中国・ロシアの影響力を排除し、米国の半球支配を再確立する」ものへと変容しています。

米国の有力シンクタンクであるCSISやBrookingsも、現在の政策を「経済版モンロー・ドクトリン」と呼び、特にリチウムや原油の争奪戦が中南米を再び“地政学の戦場”に変えていると指摘します。

アルゼンチンに対する厚遇は、他の中南米諸国に「米国の味方になればこれだけの支援が得られる」という強いメッセージを与えるものであり、ベネズエラに対する制裁は、「反米であればこうなる」という警告にもなっています。

資源銘柄に追い風か? 米国の中南米戦略が投資市場に及ぼす影響

このような地政学的動きは、当然ながら投資にも影響を与えます。

まず注目すべきは、アルゼンチンのリチウム・銅・ウランといった鉱物資源。米国の支援により、インフラや法制度の整備が進めば、外資にとっての投資環境は大きく改善されます。すでに一部の米企業がリチウム鉱山開発への参入を表明しており、日本企業にとってもサプライチェーン多様化の好機です。

一方、ベネズエラは地政学リスクの象徴。原油価格のボラティリティを高める要因として、今後も“地政学プレミアム”が織り込まれる展開が予想されます。OPEC+や中露との関係も含め、ベネズエラは世界のエネルギー地図における変数であり続けるでしょう。

こうした背景を踏まえると、日本の投資家にとっても「供給国の政治安定性」「米国との同盟関係」「制裁リスクの有無」は、今後のポートフォリオ戦略を考えるうえで不可欠な視点になりそうです。

 

かつて「裏庭」と呼ばれた中南米は、今や世界の鉱物とエネルギーを巡る覇権争いの前線に立っています。アルゼンチンに対する手厚い支援と、ベネズエラに対する容赦ない制裁。両者の分かれ道にあるのは、「自由と専制」ではなく、「米国にとっての戦略的価値」なのかもしれません。支援か制裁か。その選別の基準が、理念よりも戦略にあることを見抜くことが、私たちの次なる投資判断にもつながってくるはずです。

 


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