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アメリカ雇用統計はエコノミスト予想より好調。なのに株価が下がるのはなぜ?

アメリカ雇用統計はエコノミスト予想より好調。なのに株価が下がるのはなぜ?

Highlights

  • 12月2日、アメリカの11月度の雇用統計が発表。予想よりも好調な結果に。
  • 解雇の自由度が高いアメリカでは、雇用と景気が精度良く連動する。
  • 雇用が好調なのに、株価が下がったのは利上げへの懸念が大きい。

11月の米・雇用統計、エコノミストの予想を上回る好調ぶり

2022年11月のアメリカの雇用統計は、予想を上回る好調ぶりを記録しました。重要指標とされる非農業部門雇用者数(農業を除く民間企業や公的機関における雇用者数)は前月から26.3万人増で、エコノミストによる予想の20.0万人増を大きく上回りました。さらに平均時給の前月比も、エコノミストが0.3%増と予想したのに対し、実測値は0.6%増でした。

景気と強い連動性があると言われる雇用統計。投資家の行動、つまり投資商品の値動きにも大きな影響を与えます。今回の発表から、投資家達は何を読み取り、どう行動したのでしょうか?

雇用統計と景気が連動するアメリカ

一般的に、雇用統計の成長率と景気の伸びは連動します。解雇の制限が比較的小さいアメリカの企業は、経営状態に合わせて人件費の調整を行うからです。好調なときには人員を増やして生産力や研究開発力を高める。不調なときは人員を減らして財務健全化を図る。良くも悪くも合理的な意思決定を行うため、雇用と実体経済が連動しやすいのです。

投資家達はこれを利用し、雇用統計からアメリカの景況感を評価します。雇用が良いときは景気がいい、だから企業の業績も上がり、配当や株価も良くなる。労働者の所得も増えるので不動産市場も活性化する。だから株や不動産を買おう。そんな風に考えるのです。

雇用が良いのに、株価が下がった理由

しかし、11月の雇用統計発表を受けての米国株価は、この理屈どおりには動きませんでした。好調な雇用統計が発表された12月2日、S&P500は一時1.0%以上下落。その後、大きく戻し0.1%安に落ち着いたものの、上述の理屈とは真逆の値動きを見せたのです。

これは、景気回復への期待よりも、利上げへの警戒心が上回ったためだと考えられます。というのも、インフレ対策のために利上げを主導しているのはFRB(連邦準備制度)ですが、実は「物価の安定(≒インフレ対策)」に並ぶ彼らのもう1つの使命が「雇用の安定」なのです。利上げは物価上昇を止める薬であると同時に、経済活動にブレーキをかけ雇用を破壊しうる毒でもあります。そのため、FRBは物価と雇用の両方の数字を見比べながら打ち手を調整します。

雇用と株価の動きの話に戻りましょう。雇用統計発表に先駆け、FRBは昨今の景気減速を受け利上げペースを緩めることを発表していました。そのため、投資家たちは金利の安定を期待していました。しかし、11月の雇用は、予想よりも良い状況であったことが分かります。そうなると、FRBが手を止める理由がありません。これまで通りのスピードで利上げが行われるのではという懸念が高まり、株価下落が起こったのです。その後、FRB高官から利上げペース減速について改めてアナウンスがあったことで株価は盛り返したものの、不安定な状況が続い地ます。

こうした流れを見ても、多くの投資家が雇用統計に注目していることが分かります。景気を評価するうえで、FRBの出方を予想するうえで、重要な指標である雇用統計。ぜひ注目してみてください。

 


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