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住宅を中心としたアメリカの不動産市場の現況



Highlights

  • 米国の不動産市場は、既存住宅が中心であり、建築年齢が高い物件が大切に維持管理され、それが流通するという好循環が形成されている
  • 米国における戸建既存住宅販売は、2008年以降は回復基調にあり、既存住宅の販売価格はリーマンショック前のピークを上回り続けている。
  • 外国人による米国の住宅購入は低下傾向にある。外国人の住宅購入には、エリア・価格帯・決済方法などに特徴がある。
  • NAR主席エコノミスト、ローレンス・ユン氏の報告によると、米国の不動産市場環境は明らかに改善傾向にあり、一方で、販売戸数は増加していないことから、十分な潜在需要が存在するであろうという総括的な評価がなされている。


米国の不動産市場の特徴

前回の記事で、日本の住宅市場の特徴を国際比較において記述したが、今回は見習うべき特徴を備えていると述べた米国の住宅市場の現状を解説したい。これまでに述べたように米国の不動産市場を支える商慣習は、大量の情報をやりとりする情報システムとしてのMLSや、その情報の正確性を確認できるエスクロー制度が整っているため、前の住み手の住まい方が大きく住宅の品質に影響を及ぼす既存住宅であっても安心して売買ができる環境が整っている。

このため価格面での納得感も得られやすい、既存住宅が中心の不動産市場となっている。実際にNAR(National Association of Realtors)のデータによれば、1999年から全住宅流通に占める既存住宅の比率は、85~93%を占めてきた。

図1 既存住宅の住宅流通に占めるシェアの推移

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注)NAR(National Realtors Association)資料より引用

このような住宅取引が主流となるため、日米の住宅ストックの年齢構造を比較すると、米国の住宅ストックは明らかに日本のものよりも建築年齢が高いものが、大切に維持管理されそれが市場で流通する、という好循環が形成されていることがわかる。

図2 住宅ストックの年齢構成比較

スクリーンショット (27)

注1)日本は「1950年代以前」は1949年以前、米国は1950年以前、「1950年代」は日本は1951年から1960年、米国は1950年から1959年という形で、ずれがある。また「2010年代」は日本は2013年まで、米国は2014年までとなっている。
注2)「国勢調査」、「American Community Survey」より筆者作成

米国の住宅市場の状況

次に昨今の米国の住宅を中心とした不動産市場の動向をみてみよう。全米の既存住宅販売は、2005年に7百万戸を超えるレベルでピークをつけて、2008年の4百万戸超で底を打った。その後、2016年には5.45百万戸まで回復した。特に、戸建住宅についてみると、1970年から1998年まで、戸建の既存住宅販売は、2~4百万戸のレベルで推移してきたが、1998年には4.5百万戸に急増し、2005年には6 百万戸に達し、その後2008年には3.67百万戸に低下した。その後の戸建既存住宅販売は、2016年までに4.84 百万戸まで回復した。

2019年9月に東京で開催されたIREC(International Real Estate Conference)での、NAR首席エコノミスト、ローレンス・ユン氏の講演でより直近の報告が行われているが、2018年末、2019年初にかけて取引件数の下落が観察されたものの、この回復基調は基本的には変わらないようである。

図3 全既存住宅販売戸数の推移

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注)NAR(National Realtors Association)資料より引用

この回復過程で、価格も上昇している。典型的な既存住宅の販売価格は、2016 年に 233,900ドルとなっており、これはこれまでのピークを名目値では上回っている。この結果、既存住宅販売の市場規模は、1999年の9000億ドルから 1.9兆ドル まで上昇してきた。2016年においては、1.5兆ドルと報告されている。ローレンス・ユン氏の直近の報告においてもこの価格上昇は現在も続いており、リーマンショック前のピークを上回り続ける記録的な水準に達していることが報告されている。

この価格上昇には、ある特徴があることもローレンス・ユン氏は報告している。つまり、価格の中位水準よりも低い住宅価格が、高い水準の住宅価格よりもより高い上昇率を示しているということである。例えば、2012~2019年にかけてのアトランタでの低価格帯の価格上昇率は184%であるが、高価格帯での上昇率は51%である。シカゴでは前者が59%に対して後者が29%、シアトルでは前者が97%に対して後者が75%となっている。

図4 全既存住宅の中位販売価格

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注)NAR(National Realtors Association)資料より引用

外国人による住宅購入の動向

国際不動産取引において米国は最も世界の投資を引き付けている国ではあるが、外国人による米国の住宅購入は低下傾向にある。2011年には6640億ドルであったものが、2017年にかけて1530億ドルまで上昇したが、2018年には1210億ドル、2019年には779億ドルに低下している。

またローレンス・ユン氏の報告では、外国人の住宅購入は、以下の三つの特徴があることも報告されている。1つは、外国人の住宅購入は地域的な偏りがあることも報告されている。つまり、2019年においてはフロリダ州における購入が全外国人の購入の20%を占めている。これにカリフォルニア州、テキサス州、アリゾナ州、ニュージャージー州が続き、上位5州で50%を超えている。この傾向はこの10年間概ね変わらない。

次に高価格帯の住宅購入が多いことである。外国人が購入する住宅の中位値は2019年で28600ドルである一方で、すべての既存住宅取引価格の中位値は259600ドルである。この差は2017年にはもっと大きく、外国人が302290ドルであったのに対して、すべての既存住宅の中位値は235792ドルであった。

さらに投資であるという特徴を反映しているのかもしれないが、現金決済の比率が非居住者による取引では多いことが報告されている。非居住者の現金決済の割合は63%にも上るが、居住者の現金決済の比率は25%にすぎない。

総括的な評価

これまで、NARのデータ、IRECでのローレンス・ユン氏の報告を基に、米国の住宅市場の現状を述べてきたが、最後に現状を総括的にどうみるかということを、ローレンス・ユン氏の評価を紹介してこの記事を終えることとしたい。ローレンス・ユン氏は2000年と2019年を5つの観点から比較することで、現状の総括的な評価を試みている。

① 住宅取得能力指数
これはNARが公表している住宅の購入しやすさの指標(高い方が住宅が取得しやすい)である。近年の住宅価格上昇、特に低価格帯での上昇を受けて時系列的に低下し現在146という水準にあるが、2000年には122であり、2000年当時と比較した場合にはまだ改善した状況にあると言える。

② 30年モーゲージ金利
これは米国も含む世界的な金融緩和傾向を受けて、2000年には8.1%であったものが、2019年には4.5%まで低下している。

③ 人口
2000年の米国の人口は28200万人であったが、2019年の人口は移民の増加等も含めて32900万人まで拡大している。

④ 雇用者
2000年には13200万人であったものが、2019年には15200万人まで拡大している。

⑤ 全住宅販売戸数(既存住宅も新設も含んだもの)
2000年には610万戸の住宅販売があったものの、2019年の住宅販売戸数は590万戸にとどまっている。

つまり、①~④までの不動産市場環境は明らかに改善傾向にあると考えられる。一方⑤に示した住宅販売戸数は、まだ2000年の水準に達していない。これは、米国の住宅市場に十分な潜在需要が存在することを示すものであろうという総括的な評価が行われている。

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