mv

高い家ほど仲介料も高くなるのは、実はおかしなことだった?AIが変える米不動産仲介の料金体系

【この記事のポイント(Insights)】

  • 米国では、高額な住宅ほど仲介報酬の絶対額も大きくなる料率制が長く一般的だった。 
  • 住宅価格とエージェントの仕事量が比例するとは限らず、この料金体系にはAI登場以前から経済学的な疑問が呈されていた。 
  • AIが物件検索や分析、書類確認などの業務を効率化することで、住宅価格との連動を弱めた新しい料金モデルが成立し始めている。 

 

不動産を売買するとき、仲介報酬は住宅価格の一定割合で決まるのが一般的です。50万ドルの住宅より100万ドルの住宅のほうが、エージェントが受け取る報酬も大きくなります。しかし、住宅価格が2倍になれば、仲介に必要な仕事まで2倍になるのでしょうか。

この素朴な疑問は、実は以前から経済学者によって指摘されてきました。それでも長く維持されてきた「住宅価格×数%」という料金体系を、AIを活用する新しい不動産会社が変え始めています。

高い家ほど、仲介料も高くなるのはなぜ?

まず、現在の米国で買主側エージェントがどれくらいの報酬を受け取っているのか見てみましょう。

Redfinが集計した2025年第3四半期の成約データによると、買主側エージェントの平均報酬率は2.42%でした。価格帯別に見ると、50万ドル未満では2.52%、50万~99万9,999ドルでは2.32%、100万ドル以上では2.22%です。

つまり、高額な住宅ほど料率そのものは少し低くなっています。それでも住宅価格が上がれば、受け取る金額は当然大きくなります。例えば80万ドルの住宅なら、2.32%で約1万8,560ドル。160万ドルの住宅なら、2.22%でも約3万5,520ドルです。住宅価格が2倍になると、仲介報酬も約1.9倍になります。

ここで素朴な疑問が浮かびます。160万ドルの住宅を購入するための仲介業務は、80万ドルの住宅の約2倍大変なのでしょうか。

もちろん、高額物件ほど取引条件が複雑だったり、特殊な融資や高度な交渉が必要だったりするケースはあります。富裕層向け住宅では、一般市場に出ていない物件へのアクセスなど、エージェント独自のネットワークが重要になることもあるでしょう。

しかし、「高い住宅ほど多少手間がかかる可能性がある」ことと、「住宅価格にほぼ比例して仲介報酬も増える」ことは別の話です。

この疑問はAI以前から指摘されていた

住宅価格に対する料率制の不思議さは、最近になって突然指摘され始めたわけではありません。2003年、経済学者のチャンタイ・シェイとエンリコ・モレッティは、当時一般的だった約6%の売買仲介報酬体系を対象に、米国の不動産仲介市場について興味深い研究を発表しました。

住宅価格が高い都市では、1件の取引で得られる仲介報酬額も大きくなります。一方、住宅価格が高いからといって、買主と売主をマッチングさせるための労力まで同じ割合で増えるわけではありません。

では、余分な報酬はどこへ行くのでしょうか。研究では、住宅価格が高い市場ほど不動産エージェントが増え、結果として1人のエージェントが扱う取引件数が減る傾向が示されました。つまり、高額な仲介報酬がすべて「より質の高いサービス」へ変換されるとは限らず、高い報酬を求めたエージェントの参入によって吸収されている可能性があるのです。

2024年にはリッチモンド連銀も、買主エージェントが高価格住宅を扱う場合に、低価格住宅よりサービス提供コストが大幅に高くなるという明確な証拠はないと分析しています。

仲介報酬の料率制には、少し特殊なところがあります。通常の商品やサービスでは、料金は提供する仕事やコスト、価値によって決まります。しかし不動産仲介では、仲介会社が提供する仕事ではなく、取引対象である住宅の価格が料金を決める最大の要素になっているのです。

Zillowでも崩せなかった料金体系を、AIは変えられるのか

もっとも、「テクノロジーで不動産取引が効率化される」という話は、生成AI以前から何度もありました。

代表例がZillowやRedfinです。かつては、どんな住宅が売りに出ているのかを知ること自体がエージェントの重要な役割でした。しかし現在では、買主自身がスマートフォンで物件を探し、写真を見て、価格を比較し、周辺環境まで調べられます。それでも、仲介報酬の基本構造は大きく変わりませんでした。

理由の1つは、インターネットが主に効率化したのが「消費者による情報収集」だったからです。住宅を見つけたあとにも、エージェントには内覧の日程調整、市場価格の分析、売主側が開示した情報の確認、オファー作成、取引の進捗管理、交渉、契約、クロージングまで多くの仕事が残ります。

生成AIが従来のインターネットサービスと異なるのは、この仲介会社の内部で行われていた仕事そのものまで効率化できる可能性があることです。

インターネットは「物件探し」を効率化しました。AIは「仲介会社の仕事」を効率化し始めています。この違いが、仲介の料金体系まで変える可能性を生んでいます。

 

AIと人間で仲介するTurboHome

その具体例の1つが、米国の不動産会社TurboHomeです。同社は2026年8月、AIを全面的に組み込んだ住宅購入プラットフォームを発表しました。

ここで注意したいのは、TurboHomeが単なる物件検索サイトやAIツールではないことです。同社はカリフォルニア州やテキサス州で免許を持つ不動産ブローカレッジであり、人間のエージェントも取引を支援します。

AIを組み込んだプラットフォームでは、物件発見、市場分析、内覧予約、ディスクロージャーの確認、オファー管理などを一元化しています。TurboHomeは、AIに調査・整理・調整を担わせる一方、人間のエージェントが購入戦略、地域事情を踏まえた判断、交渉、クロージングなどに集中するモデルを掲げています。

つまり、AIによってエージェントそのものをなくすのではありません。エージェントが行ってきた仕事を分解し、機械が得意なものをAIへ移しているのです。

この業務構造の違いは、料金にも表れています。TurboHomeは、従来のような「購入価格の2.5%」などの一律料率ではなく、住宅価格帯ごとに自社が保持する仲介報酬を設定しています。50万ドル未満なら6,000ドル、50万~100万ドルなら9,000ドル、100万~200万ドルなら1万2,000ドルです。その後も段階的に上がりますが、住宅価格にそのまま比例する仕組みではありません。

売主側などから支払われる買主側仲介報酬がTurboHomeの設定額を上回った場合には、州法や融資条件など一定の条件のもとで、差額を買主へ還元します。完全な定額制ではありませんが、従来の「住宅価格×一定料率」に比べると、住宅価格と仲介料金の関係を大幅に弱めたモデルだといえます。

住宅価格が2倍でも、TurboHomeの取り分は1.33倍

先ほどの80万ドルと160万ドルの住宅で比較してみましょう。

Redfinが公表している価格帯別の平均報酬率を単純に当てはめると、80万ドルの住宅では約1万8,560ドル、160万ドルでは約3万5,520ドルです。住宅価格が2倍のとき、仲介報酬は約1.9倍になる計算です。

一方、TurboHomeの場合、自社が保持する仲介報酬は80万ドルなら9,000ドル、160万ドルなら1万2,000ドルです。住宅価格は同じく2倍ですが、TurboHomeの取り分は1.33倍にしか増えません。

興味深いのは、TurboHomeも「住宅価格と仲介コストにはまったく関係がない」と考えているわけではない点です。高額住宅ほど料金を高く設定しています。

ただし、住宅価格を料金の中心的な基準にはしていません。従来型の仲介では、住宅価格がほぼそのまま報酬額を決めます。TurboHome型では、住宅価格は料金を決める要素の1つにすぎません。この差は小さいように見えて、仲介ビジネスの料金設計としてはかなり大きな変化です。

AIが変えるのは「エージェントが必要か」ではない

では、将来は人間の不動産エージェントがいなくなるのでしょうか。少なくとも現時点では、そう考えるのは早そうです。

不動産業界のコンサルティング会社Alloy Advisorsは2026年、住宅取引に関わる23の業務について、AIと人間のどちらが適しているかを分析しました。その結果、10業務ではAIが優位、6業務ではAIと人間の併用が適しているとされ、人間が明確に優位とされたのは3業務でした。このほか2業務では法的に人間の関与が必要とされ、残る2業務は判断保留となっています。

人間が優位とされた代表的な仕事が、実際の交渉、買主への感情面でのサポート、極めてローカルな知識です。住宅は、単なる金融商品ではありません。同じ広さ、同じ築年数でも、道路1本を隔てただけで環境や需要が違うことがあります。売主の心理を読みながら条件を詰める必要もありますし、何十万ドル、何百万ドルという買い物を目前にした買主の不安に対応することもエージェントの仕事です。こうした領域は、依然として人間が強い部分でしょう。

だからこそAIが問い直しているのは、「エージェントが必要か不要か」ではなく、「人間のエージェントに何を任せ、何に対して報酬を支払うのか」なのです。

これまでは、物件検索、分析、書類処理、内覧調整、交渉、契約などをまとめて1つの仲介サービスとして提供し、その対価として住宅価格の一定割合を受け取っていました。AIによって業務が分解されれば、人間にしかできない部分と、ソフトウェアで効率化しやすい部分を切り分けることができます。すると「一式で住宅価格の2~3%」という値付け方法が、不自然に見えてきます。

定額仲介そのものは、AIが発明したわけではない

もっとも、料金の安い仲介会社や定額制、買主へのリベートは、AI時代になって初めて登場したものではありません。米司法省は2000年代から、低料率のフルサービス仲介や買主へのリベートを、不動産仲介市場に競争をもたらす仕組みとして紹介していました。

その意味では、TurboHomeの料金モデルそのものがまったく新しいわけではありません。AIの本当の意味は、低料金モデルをより大規模に運営しやすくする可能性にあります。

従来、仲介料金を下げようとすれば、人件費を削ったり、提供サービスを限定したり、1人のエージェントが担当する顧客数を増やしたりする必要がありました。しかしAIが調査、比較、日程調整、書類確認、初期分析などを効率化できれば、人間によるサービスを残したまま、1件あたりに必要な人手を減らせる可能性があります。

「安い代わりにサービスが少ない」のではなく、「同じようなサービスを、より少ない人手で提供する」方向へ進めるわけです。

それでも「住宅価格×%」がすぐ消えるとは限らない

もちろん、従来型の料率制にも一定の合理性はあります。

エージェントの多くは、取引が成立しなければ報酬を受け取れません。何度も内覧を行った末に購入を断念した顧客へ費やした時間も、最終的には成約案件から得る報酬によって回収する必要があります。

また、高級住宅では取引が複雑になることもあります。そのため、「実際の作業時間だけを積み上げて請求すればよい」と単純に割り切れるものでもありません。今後も住宅価格と料金の関係が完全に切れるとは限らず、基本料金に取引難易度やオプションサービス、成功報酬などを組み合わせる方式が広がる可能性もあります。

重要なのは、料率制がなくなるかどうかではありません。これまでも定額制や低料率仲介による競争は存在しました。しかしAIによって仲介会社内部の業務コストそのものを下げられるようになれば、料金体系そのものをめぐる競争がさらに広がる可能性があります。

2024年の全米不動産業者協会(NAR)の和解に伴うルール変更では、買主側エージェントの報酬額や算定方法を事前に書面で確認する仕組みが導入され、報酬が交渉可能であることも明示されるようになりました。そこへAIによる業務効率化が重なれば、消費者はさらに一歩踏み込んで、「なぜこのサービスにこの金額を払うのか」と考えるようになるでしょう。

AIが問い直す「仲介サービスの値札」 

100万ドルの住宅を買う人からは、50万ドルの住宅を買う人より多くの仲介報酬を受け取る。米国では長く当然と考えられてきた仕組みです。

しかし経済学者は以前から、住宅価格とエージェントの仕事量が必ずしも比例しないことを指摘してきました。それでもインターネット時代には、この料金体系は大きく崩れませんでした。

AIはそこに、新たな変化をもたらすかもしれません。AIに任せられる仕事はAIに任せ、人間にしかできない交渉や判断には人間が集中する。そのように仲介業務を分解できれば、「住宅価格の2~3%」という一括料金にも再考を迫ることになります。

AIが変えようとしているのは、不動産エージェントという職業そのものではありません。仲介サービスの「何に、いくら払うのか」という値札の付け方なのです。

 

オープンハウスグループでは東京・名古屋・大阪で、またオンラインで様々なセミナーを開催しております。
・ハワイ不動産
・アメリカ不動産
・国税OB税理士が語るセミナー
・法人の減価償却としてのアメリカ不動産など随時開催しております。
など随時開催しております。
日程・詳細はこちらから

関連記事

オープンハウスはなぜ“米国”不動産に取り組むのか(その1)

なぜ、こんなにも多くのお客様にご支持を頂いているのか(その1)

※この記事は、掲載日時点の情報を基に作成しています。最新状況につきましては、スタッフまでお問い合わせください。

アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋

オープンハウスの投資メソッドを
無料ダウンロード

アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋

オープンハウスの投資メソッドを無料ダウンロード

この資料では、以下の内容をご紹介しています。

以下の内容をご紹介しています。

  • アメリカ不動産投資が「今」注目される4つの理由
  • スケールが違うアメリカ投資市場の基礎知識
  • 日本とは全く異なる不動産の市場環境と投資効果
  • 投資エリア選びの重要さと注目の成長エリア

さらに知りたい方は簡単1

資料をダウンロードする

アメリカ不動産投資、始め方がわからずお悩みではありませんか?

2020年の税制改正後も、アメリカ不動産投資は依然として「資産分散」「減価償却」などのメリットで注目を集めています。

ただ、アメリカを含む海外不動産投資に興味はあるけれど「言語の壁がある」「現地の事情がわからない」「リスクが高そう」といったお悩みも多く見られます。

実際、日本からアメリカ不動産投資を始めようとしても、現地の法律や税制の違い、物件管理の難しさ、為替リスクなど、様々な課題に直面することがあります。

しかし、適切な知識とサポートがあれば、アメリカ不動産投資は魅力的な資産運用の選択肢となります。安定した不動産需要、基軸通貨ドルでの資産保有、長期的な不動産価値など、その魅力は2020年の税制改正後も健在です。

そこで、アメリカ不動産投資に興味をお持ちの方へ、『アメリカ不動産投資成功ガイド』をお届けします。オープンハウスがこれまで5000棟超、3000名以上の投資家様をサポートしてきた実績をもとに、投資の基礎知識から最新の市場動向、成功事例までをわかりやすくまとめました。

オープンハウス独自の強み、アメリカの複数都市に展開する現地法人による直接管理と日本語でのきめ細やかなサポート体制についてもご紹介しています。お忙しい投資家様のお手を煩わせず、英語不要でアメリカ不動産投資を実現できるワンストップサービスです。

ドル建てでの資産運用を実現したい方、海外投資に興味はあるけれど不安を感じている方は、ぜひこの機会にダウンロードしてみてください。

アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋

オープンハウスの投資メソッドを
無料ダウンロード

アメリカ不動産投資の秘訣
成功への道筋

オープンハウスの投資メソッドを無料ダウンロード

この資料では、以下の内容をご紹介しています。

以下の内容をご紹介しています。

  • アメリカ不動産投資が「今」注目される4つの理由
  • スケールが違うアメリカ投資市場の基礎知識
  • 日本とは全く異なる不動産の市場環境と投資効果
  • 投資エリア選びの重要さと注目の成長エリア

さらに知りたい方は簡単1

資料をダウンロードする

まずはセミナーに参加しよう

すべて見る
弊社コンサルティングスタッフ

【日本全国オンライン対応可能】アメリカ不動産個別相談セミナー

9月02日(水) 、9月03日(木) 、9月04日(金) 、9月07日(月) 9:30~19:30
弊社コンサルティングスタッフ

【全国オンライン対応可能】年10日から購入できる「NOT A HOTEL」個別相談セミナー

ご希望日程よりご選択ください。
杉本 壮汰

重い税負担を賢く抑える選択を:米国不動産投資戦略セミナー

9月10日(木)17:00~18:00
伊東 嵩哉

資産としてのハワイ不動産:滞在・収益・税効果のハイブリッド戦略

9月17日(木)17:00~18:00
前へ
次へ

タグ一覧