
【この記事のポイント(Insights)】
- 米国でランドバンキングが住宅供給を支える重要な投資手法として拡大している
- 高金利・建設コスト高騰を背景に、建設会社と投資家がリスクを分担。
- 長期保有と開発前提で土地価値を高め、安定供給と市場成長を目指す。
「土地を買って値上がりを待つ」──それだけ聞くと、少し危うい香りのする投資手法に思えるかもしれません。しかし、米国で近年急速に広がっている『ランドバンキング』は、短期的な売買益を狙う土地転がしとはまったく別物です。住宅不足が慢性化する中、建設会社と投資家が手を組み、未来の住宅供給を支えるための仕組みとして注目を集めています。本記事では、ランドバンキングの仕組みや歴史、そしてなぜ今盛り上がっているのかを、日本や他国の事例と比較しながら解説します。
短期目線の土地転がし、長期目線のランドバンキング
ランドバンキングとは、開発前の土地を取得し、将来の住宅建設や販売に備えて長期的に保有する投資手法です。この過程では、単に土地を寝かせるのではなく、インフラ整備や用途変更(ゾーニング)、開発権取得など、実質的に土地の価値を高める活動が伴うことが多く、将来の開発や売却に向けた準備が進められます。主な関係者は以下の3者です。
投資家(ランドバンカー):将来需要が見込まれる土地を先行取得し、建設会社に供給する役割。
建設業者:必要な時期にだけ土地を購入し、住宅を建設する。
住宅購入者:完成した住宅を購入する、最終的な利用者。
短期的な転売益を狙う「土地転がし」は、土地の価値を実質的に高めることなく価格差だけで利益を出します。一方、ランドバンキングは長期保有と開発前提であり、将来の住宅供給を円滑にする社会的役割も持ちます。
他国にも似た概念があります。日本では自治体が空き地を集約・再利用する「土地バンク」、中国では地方政府が都市開発用地を先行取得する「土地備蓄制度」、英国では開発業者が将来のために土地を保有する「ランドバンキング」が存在します。ただし、米国型は民間投資主体で、建設業者とのオプション契約を通じた資金・リスク分担が特徴です。
建設コスト高騰で資金繰り悪化、ランドバンキングのニーズが急増
ランドバンキングは新しい手法ではなく、米国では数十年前から行われてきました。しかし、近年ニーズが急増しています。その背景には、高金利環境と建設コストの大幅上昇があります。米連邦準備制度による利上げで借入コストが急騰し、建設会社が土地を長期間保有する際の金利負担は数年前の倍以上になるケースもあります。同時に、原材料価格や人件費の高騰により、建設コストも過去最高水準に達し、現金や融資枠を確保する必要性が一層高まりました。このため、大量の土地を抱えて資金を寝かせるよりも、必要な時にだけ取得できる柔軟性が強く求められています。
一方、投資家にとってもランドバンキングは魅力的です。物価上昇局面でのインフレヘッジや資産分散効果が期待でき、安定した需要が見込める住宅用地は他の不動産分野に比べて比較的リスクが読みやすいとされます。ウォルトン・グローバルなど大手の参入で市場規模は拡大し、取引の制度化や契約の多様化も進展。住宅不足が続く米国では、ランドバンキングは単なる金融スキームではなく、将来の住宅供給を支える「種まき」として、その重要性が年々高まっています。
マーケットリーダーであるウォルトン社はじめ、ランドバンカー企業は開発プロジェクトに欠かせない存在に
ランドバンキング事業を行う会社のなかでも特に注目度が高いのが、先述のウォルトン・グローバル社です。アリゾナ州に本社を置く同社は米国とカナダで計10万エーカー超の土地を長期保有し、大手住宅建設会社と提携して必要時に供給するモデルを展開しています。「カンバン方式による土地在庫管理」と称し、トヨタのジャストインタイム方式になぞらえて、必要な時に必要なだけ土地を引き渡す仕組みです。2021年前後にはラスベガス郊外の17エーカーを取得し、D.R.ホートンと推定されるビルダーに提供。造成は2021年秋開始、販売は2022年夏からの予定でした。契約ではビルダーが頭金を預けて用地を確保し、住宅販売ごとに土地代を分割支払いするため、在庫負担を抑えられます。
また、住宅大手レナー(Lennar)は四半期で約22,000区画・27億ドル相当の宅地をランドバンカー経由で取得。自前保有を避け、必要分のみ購入する戦略です。投資ファンド系ではミルローズ(Millrose)がレナーと組み、複数案件を束ねる「プール制」で市場最低水準の8.5%の資金提供を実施。ただし利回りは実質7%程度で、利率競争過熱による採算悪化リスクもあります。
契約には計画中止時の違約金や未取得土地の処理方法などが盛り込まれ、大手が相手の場合は条件変更や価格見直しに応じる柔軟さも。2023〜2024年の金利高騰期には宅地引き取りを延長し建設ペースを調整する事例も多く、「ランドバンカーがいなければ成立しなかった」案件が数多く存在します。
投資家・建設業者・住み手、それぞれのメリット・デメリット
ランドバンキングの仕組みがステークホルダーにもたらす恩恵やリスクをまとめると以下です。
投資家:長期的な価値成長とインフレヘッジが可能。一方で、規制変更や保有コスト、開発遅延による資金回収リスクがあります。
建設業者:負債圧縮と資金効率の向上が得られ、景気変動に柔軟対応可能。ただし、土地を所有しないため自由度が制限され、オプション料がコストとして上乗せされます。
住み手:供給の安定化によって住宅不足の緩和が期待できる反面、コスト増が価格に反映されたり、開発遅延による入居時期の遅れが発生する可能性があります。
開発プロジェクトのうち土地に関するコストの流れがスムーズになることで、迅速かつ柔軟に建設が進むことが最大のメリットです。一方で、ランドバンカーが介在するとその手数料分が加わるため、介在しない場合と比べると総コストが大きくなる可能性が高いと言えます。
住宅不足が続く限り、ランドバンキングは重要性を増す
米国では人口増加や世帯数の伸びにより、特定地域では今後も住宅需要が強く見込まれます。金利政策や人口動態の変化はあるものの、住宅不足が解消しない限り、ランドバンキングは成長を続ける可能性が高いでしょう。
ランドバンキングは単なる投機ではなく、住宅供給を安定させるための戦略的な土地投資です。現在の経済環境と将来の住宅需要を見据えるうえで、この仕組みを理解しておくことは、投資家だけでなく不動産に関心を持つすべての人にとって価値があります。
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