
FRBの利下げペースが鈍化
2024年は世界的に政権交代が相次ぎ、各地の紛争も終結には至らない混迷の年となった。このような不安定な世界のなかで、年後半は主要国で金融緩和が行われ、景気が下支えされる状況となった。FRBも2024年9月から予防的な利下げに転じたが、政治経済面の不確実性の高まりを考慮した面があったと考えられる。2025年を展望すると、やはり最大の焦点はトランプ政権の発足であり、実際に経済、外交分野でどのような政策を実行するかに関心が集まっている。FRBの金融政策も、トランプ大統領の政権運営に大きく影響を受けるだろう。
2024年12月のFOMC参加者の経済見通しを振り返ると、2024年の実質GDPは0.5%の情報修正を余儀なくされており、足元の米国経済見通しが大きく外れたことが読み取れる(図表1)。2025年以降の実質GDP見通しは9月時点での予想と大きな違いがないため、FRBとしては、米国経済の潜在成長率は変わらないものの、景気減速が予想以上に緩やかであるとの見通しであることが窺われる。この点では、FRBは米国経済の力強さに自信を持っていると捉えても良いだろう。
図表1:2024年12月FOMC参加者の見通し(中央値、%)
注:括弧は前回2024年9月時点の予想との差であり、同じ値であれば記載していない
出所:FRB
このような経済見通しの変化を受けて、 FOMC参加者のFF金利見通しも大きく変更された。図表2の通り、FRBとしては、2025年と2026年の利下げペースを大きく縮小させている。これは、年2回程度の緩やかな利下げを継続することを意味しており、2024年12月のFOMC以降、米国長期金利が再び上昇しているように、金融市場では過度な利下げ期待が剥落した状況である。その点では、将来のFF金利見通しの上方修正は、予防的な金融引締効果を生んだともいえる。
2025年の米国経済を占う上では、実体経済と金融市場が相互に影響して、スタビライザー(安定化)効果を発揮できるかが注目される。例えば、実体経済と金融市場のバランスが崩れる場合として、米国経済が成長を続けていても、金融市場で過度な金利上昇が生じれば、実体経済は大きな悪影響を受けるだろう。しかし、景気が鈍化傾向にあっても、2024年のように予防的な金融政策が行われることになれば、マクロ経済自体は安定した動きを取り戻す可能性がある。その点で、米国経済の主役はトランプ大統領であっても、影の主役は経済と金融市場の期待のバランスをコントロールするパウエルFRB議長であるといってもよい。
図表2:FOMC参加者のFF金利見通し(中央値)
注:点線は2024年9月会合、実線は2024年12月会合の中央値を示す
出所:FRB
金融市場におけるFRBとトランプ大統領への期待
シカゴ連邦準備銀行は、短期金融市場、債券市場、株式市場、シャドー・バンキングの金融環境を示す全米金融環境インデックスを公表している。これは、過去の平均的な金融環境をゼロとして、プラスであれば金融引き締め、マイナスであれば金融緩和的な状況にあることを示すものである。この金融環境インデックスを見ると、利上げが休止された2023年には同インデックスがゼロ近傍からマイナスに変化しており、FRBが過度な金融引締に至る前に、予防的に金融緩和の環境に入ったことが読み取れる(図表3)。
全米金融環境インデックスは、金融市場の変動に起因する「リスク」(市場金利の水準、株価ボラティリティ等)、銀行貸出の状況を反映する「クレジット」(貸出スプレッド、ローンの延滞率等)、「レバレッジ」(証券化商品発行額、時価総額対GDP比率等)の3つの要因で構成されている。同指標の過去の動きを見ると、本格的な金融引締期であった、1970年代のオイルショック、1980年代後半においては、「リスク」の高まりによって金融引締状況が生じており、利上げによる市場金利の過度な上昇や急激な株価下落が生じたことが窺える。一方、2008年の世界金融危機や2020年のコロナショックにおいては、「クレジット」の高まりによる金融引締状況が生じている。この時期には、非伝統的な金融・財政政策が実施されたように、金融仲介が大きく阻害され、景気後退が深刻化している。このように、「クレジット」の厳格化による金融引締状況が生じる場合には、その悪影響が長期化する特徴がある。
図表3: 金融環境インデックス
出所: セントルイス連邦準備銀行
現状の全米金融環境インデックスをみても、金融環境は金融緩和的な状況であり、当面のリスクは小さいと考えられる。図表4の通り、半導体企業の株価指数(SOX)は、上昇幅を小さくしており、米国株式市場インデックス(S&P500、Nasdaq)の変化幅との乖離が縮小しつつある。これは、過度な半導体需要への期待が剥落することで、株式市場の過熱感が薄れ、株価形成が安定化に向かいつつあることを表している。また、株価の予想ボラティリティ指数(VIX)も安定的に推移しており、市場参加者の「リスク」への警戒感も低下する状況である。
図表4:米国株式指数と予想変動指数
出所:FactSet
「クレジット」について見ると、市場における金利上昇を受けて貸出需要は減少していたが、FRBの利下げ転換によって、マイナス幅は縮小している(図表5)。また、米銀の融資基準についても、徐々に緩める方向に向かっている(図表6)。もっとも、改善しているのは、優良な居住用(ESG適格)住宅ローンに関連するものが主体であり、小規模事業者向けローンや比較的信用力の低い住宅関連ローンについては、依然として厳しい状況にある。このような状況は、FRBの利下げペースが鈍化するなかで、長期化する可能性があるため、留意が必要である。
図表5:資金需要の変化
出所:FRB
図表6:米銀の融資基準の変化
出所:FRB
住宅価格は依然として最高値圏で推移しているが、価格上昇幅は縮小している(図表7)。不動産市場が本格的な調整に入れば、「クレジット」のタイト化を通じて、米国経済に大きな影響をもたらすだろう。これを避けるためにも、トランプ大統領は住宅ローン金利の引き下げ等の住宅取得促進策を早期に実行することが期待される。今後もFRBとトランプ大統領の金利を巡る思惑は、2025年の米国のみならず世界全体の景気拡大の持続性を左右する大きな争点となるだろう。
図表7:ケースシラー住宅価格指数(対前年同月比)
出所:セントルイス連邦準備銀行
執筆日:2025.01.22
※この記事は、執筆日時点の情報を基に作成しています。最新状況につきましては、スタッフまでお問い合わせください。
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