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世代交代の始まりを告げる米大統領選挙をどう読むか

今回の大統領選挙で世代交代が本格化

民主党の大統領候補がカマラ・ハリス副大統領に代わり、米大統領選挙の行方は不確実性が高まっている。RealClearPoliticsによると、様々な世論調査データを集計するとトランプ対ハリスは僅差でトランプ有意であるが、その差は数ポイントに過ぎない。ハリス副大統領に対する好感度も高まっており、好意的が嫌いを下回る状況は変わらないものの、その差は急速に縮小している。これまでは旧世代同士の候補者争いの中でトランプ元大統領が有利に展開してきたが、新世代が旧世代に挑む形で米国の政治におけるダイナミズムを感じられる状況となった。 今回の選挙結果だけでなく今後の米国政治を考えれば、これまでの2大政党による伝統的な政治運営の構造から政治リーダーの世代交代を通じて新しい米国政治の扉が開かれつつあるという、極めて重要な変化が見えてくる。共和党のバンス副大統領候補もまた、伝統的な共和党員とは言い難い面を持つが、40歳と若く、ミレニアル世代に当たり、ベビーブーマー世代を超えて、最も人口の多い世代である。バンス氏は著書「ヒルビリー・エレジー」でアメリカンドリームの体現者として注目されたが、繁栄から取り残された人々の分断が原体験にあるなかで、これまでの世代が抱える課題とは異なる面も多い。今回の選挙の注目点は、世代交代期に差し掛かった米国政治が、どのような方向に進むのかについての糸口を探ることができるかという点にあろう。

トランプ1.0とバイデン政権の経済政策に対する資本市場の反応

政治の変化は経済にも影響する。将来的には前述のような政治の世代交代は経済動向にも大きな変化をもたらすであろうが、今回のような移行期においては、当初、経済運営の枠組み自体は大きく変わらず、以前のトランプ流となるかバイデン流となるかの選択枝となろう。
トランプ前大統領が大統領となった場合、中国を中心とした輸入関税の引き上げ、移民を強制送還するなどの政策が取られ、自国主義を一層強めることになる。また、法人税減税などで財政拡大路線となる。一方、規制緩和によって企業活動を刺激される面もある。これら一連の経済政策の方向性は、規模感の違いはあるが、トランプ前政権からバイデン政権に継承された部分も多いため、大きな政策転換が生じる可能性はそれほど大きくないと考えられる。トランプ前大統領の銃撃事件での対応に見られたカリスマ的な強いリーダー像や、国家間交渉におけるタブネゴシエーター像ほどに、奇抜な経済政策は行われない可能性がある。
前回のトランプ政権における金融・資本市場の変化を見ると、株式や居住用不動産市場は堅調な推移を続けた。ただし、米中貿易摩擦が激化するなかで、中国を中心として世界の経済成長が鈍化したために、任期後半では政策金利の引き下げや長期金利の低下が生じた。そして、コロナショックで景気後退に陥り、大幅な金融緩和が実施されたのである。また、ドル円相場はほとんど横ばいであり、トランプ政権の貿易政策は主として関税等の障壁はあっても為替相場の方向性を示す運営ではなかった(図表1)。

図表:トランプ政権下の金融・資本市場の変化(2016/10~2020/10)

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注:大統領選挙前の2016年10月のS&P500・ドル円・ケースシラー全米住宅価格指数を100として指数化。米10年金利とFF金利は実数。網線は景気後退期(2020年2月から同年4月)を示す

出所:QuickFactSet

一方、これまでのバイデン政権における金融・資本市場の変化を見ると、堅調な経済状況を受けて、株式や居住用不動産価格は上昇基調を続けるとともに、金利上昇によるドル高も生じた(図表2)。政権交代が実現するか否かは、現職大統領の在任期間における景気動向が大きな鍵を握るが、歴史に「if:もしも」は無いが、コロナショックが無ければ、バイデン政権は誕生しなかっただろう。同様に、今後、米国が景気後退局面入りする場合には、現職大統領の後継者であるハリス氏にとっては大きな逆風となる。景気後退が明らかとなった場合には、世代交代とダイバーシティで厳しい競争を勝ち抜くことができるかが問われることになる。

図表:バイデン政権下の金融・資本市場の変化(2020/10~2024/7)

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注:大統領選挙前の2020年10月のS&P500・ドル円・ケースシラー全米住宅価格指数を100として指数化。米10年金利とFF金利は実数

出所:QuickFactSet

図表3は前トランプ政権と現バイデン政権の金融・資本市場における変化をまとめたものである。これまで一貫して景気拡大を実現したバイデン政権の時代の方がトランプ政権時と比べて株価も住宅価格も上昇しており、ドルも大幅に上昇して、米国への投資を後押ししたことが窺える。トランプ政権時でもドル円はほとんど変化がなく、いずれの政権下であっても、大幅なドル安政策は実施されてこなかった。これは前述の通り、ドル高が海外からの投資マネーを吸い寄せる形で資産価格の維持に繋がるメリットを相応に認識してきたからであろう。今回の大統領選挙においていずれの候補者が勝利したとしても、米国の経済や資産市場の動向には大きな影響を与えず、米国は経済大国の地位にとどまるだろう。

図表3:バイデン政権下の金融・資本市場の変化(2020/10~2024/7)

米国選挙図3_v2

注:トランプ政権は2016年10月から2020年10月、バイデン政権は2020年10月から2024年7月(米住宅価格のみ2024年5月)まで)の変化率。ただし、米10年金利とFF金利は実数。

出所:QuickFactSet

循環的な資産市場の変化

これまでは強い米国経済を示す経済指標が多かったが、ここにきて公表結果が市場予想を下回る経済指標が見られており、米国の景気後退のリスクが指摘されている。ニューヨーク連邦準備銀行が公表する景気後退確率を見ると、50%超の高い生起確率が示される(図表4)。この景気後退確率は、米国債イールドカーブ(10年金利と3ヵ月金利の差)から、2~6 四半期先の景気後退を予測するものである。足元では、個人消費の鈍化、労働需給の緩和だけでなく、これまで株式市場を支えてきたAIブームを牽引してきた企業業績にも変化の兆しがみられる。既に、先行指標として公表された2024年8月の景気後退確率は66%となっており、現在の景気減速を踏まえれば、この景気後退確率は先行指数として有効であったと考えられる。その景気後退確率は、2024年5月の71%をピークとして低下傾向にあり、2025年4月には50%を示している。このような景気後退確率の低下は、景気後退局面が短期間で終了する可能性を示唆している。今後の経済動向は、大統領選挙の結果を左右する最も重要なファクターである。大統領選挙の終盤の重要な時期に景気後退の流れが強まるのか、それとも回復の兆しがみられるなかで選挙結果も大きく変わるだろう。そもそも足元の景気や企業業績の鈍化は、インフレを背景とした長期間の金利高に原因があった。その点でも、FRBに政治的な意図が無いとはいえ、政策金利の引き下げが実現するか否かは重要な鍵となるだろう。

図表4:景気後退確率

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出所:ニューヨーク連邦準備銀行

執筆日2024.08.04

著者 柴崎健(SBI大学院大学 経営管理研究科教授)

1989年日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行後、みずほ証券にて金融資本市場の調査(金融・財政・マクロ経済・金融制度・ESG投資等)に25年間携わる。みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ) にてコンサルタント、みずほ証券グローバル戦略部にて産官学連携にも従事。
SBI大学院大学教授、京都大学客員教授、早稲田大学非常勤講師等を務める。

著書『金融緩和のもとでの国債リスク』、『2020年 消える金融』(共著)、『シナリオ分析 異次元緩和脱出』(共著)、 『金融資本市場と公共政策-進化するテクノロジーとガバナンス』 (共著)、『現代ビジネスエシックスと企業価値向上』(共著)等

 

※この記事は、執筆日時点の情報を基に作成しています。最新状況につきましては、スタッフまでお問い合わせください。

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