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不確実性が高い局面でのオルタナティブ投資の有効性

オルタナティブ投資が求められるタイミング

オルタナティブ資産は「伝統的な」投資資産である上場株式や債券ではない、「代替的(オルタナティブ)」な投資資産のことである。そもそもオルタナティブ資産への投資が始まったのは1950年代と古く、当時はヘッジファンドへの投資が多かったが、近年では、不動産、インフラ、プライベート・エクイティ、プライベート・デットなど投資対象が広がっている。1990年代後半から世界的に株式投資リターンが低下し、金利も低下するなかで、年金基金などの投資家は新たな投資対象を求めてオルタナティブ投資を拡大させてきた。オルタナティブ資産は伝統的な投資資産との相関が低く、分散投資効果が期待できるため、リスク低減効果を期待して、オルタナティブ投資は増加を辿っている。

現在は、「トランプ2.0」の政策運営によって世界貿易の減少も懸念されている。また、世界的な物価及び金利動向も政策による影響を大きく受けることから、不透明感を高める状況である。更に、DeepSeekのようなオープンソースの生成AIの登場は、世界経済だけでなく、社会生活のあり方までも変えていくだろう。このような時代の転換点においては、長期的な視点でリスク管理を意識した運用が求められる。オルタナティブ投資は想定される投資期間が長く、流動性が低い(いつでも換金することはできない)。このため、時価は当該資産が持つ本源的な価値が強く反映されることで、短期的な市場変動の影響をそれほど受けず、安定的な価格となる。株式市場では2024年8月にブラックマンデーを超えた暴落とその後の急反転を経験したが、オルタナティブ投資の価格変動リスクはそれよりも低いものと考えられている。このため、一時的な市場変動のリスクがある現状において、インフラ、不動産、プライベート・エクイティ等のオルタナティブ投資を徐々に増やすことは資産保全の観点からも有効であろう。

日本では、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2013年度からオルタナティブ投資を開始しており、2024年3月末時点では、3.7兆円まで積み上がっている。ただし、年金積立金全体に占める割合は1.46%に過ぎず、現時点でも実験的な投資にとどまっており、運用収益への貢献は少ない。世界最大のアセットオーナーであるGPIFにとっては、オルタナティブ資産への投資機会は伝統的投資資産ほど多くないことから、運用額が限られることも一因である。しかし、このような運用額という制約がない一般の投資家にとっては、新たなリスク特性のオルタナティブ投資の割合を増やすことで、超過リターンを享受することが期待できる。その中でも不動産は比較的投資しやすい資産である。

 

図表1:GPIFのオルタナティブ資産の時価推移

0725_図表01

出所:GPIF

ノルウェーの年金基金のオルタナティブ投資

世界的な公的年金運用基金としてノルウェーの政府年金基金グローバル(GPFG)が有名である。元々の運用原資は、ノルウェー沖で発見された油田からの石油およびガス収入であり、世界最大のソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)とも呼ばれている。GPFGは、将来石油が枯渇することを念頭に、石油基金を作って長期的な視点からこの資金を管理して、長期的な視点からノルウェー経済に役立てることを目指している。このため、リスク・リターン評価も徹底して行われるなかで、投資分散を積極的に進めている。2024年12月現在で、投資資産の時価総額は1.7兆ドル(260兆円程度)であり、このうち、株式が71.4%、債券が26.6%、不動産が1.8%、再生可能エネルギーインフラが0.1%を占めている。

 

図表2: GPFGの不動産と再生可能エネルギーインフラへの投資残高

0725_図表02

出所: Norges Bank Investment Management

 

不動産については、上場不動産と非上場不動産を組み合わせた戦略で、ファンド全体の3~7%を不動産ポートフォリオに投資することを目標としている。足元の保有割合は上場株式の時価総額の増加もあって1.8%に留まっており、GPIFと同様、巨大なアセットオーナーにとって、優良な投資案件をいかに確保するかは、オルタナティブ投資における大きな課題である。

GPFGは投資対象を外国資産に絞って運用している。これは、前述の通り、国の富を可能な限り長く続くようにするための投資哲学に基づくものである。ノルウェーよりも高い成長性を秘めた地域に投資することで、より高いリターンを確保するだけでなく、ノルウェー経済が落ち込んだ時にもGPFGの資産を有効に利用して、投資の面から自国を支えるというリスク分散の観点もある。このように一定の富を得た国は、資産保全のために海外に有望な投資対象を探すことは、歴史的にも必然ともいえるだろう。

また、長期的視点から資産を保全するという観点からは、再生可能エネルギーインフラを重視するスタンスも重要である。環境問題が増加するなかで、ESGへの取組を加速し、風力発電と太陽光発電を中心に、高品質な再生可能エネルギーインフラ資産のポートフォリオを継続的に構築する動きは今後一層加速することが見込まれる。その動きは、今後も不動産市場にも大きな影響を与えていくものと考えられる。

シンガポールのSWFの資産運用

巨額の投資マネーを運用する政府系機関としてシンガポール政府投資公社(GIC)も有名である。GICはシンガポール金融管理局(MAS)、テマセクと並んでシンガポールの外貨準備金を管理する3つの投資機関のひとつである。このため、責任ある政府系ファンドとして、利益の先にある社会的価値を創っていくことを目指しており、GPFGと同様に、長期的な視点から運用を行っている。

GICのポートフォリオは、GPFGよりも非市場性資産への投資割合が高くなっており、長期的なリターンを積極的に狙ったものとなっている。インフレ連動債に全体の7%、プライベート・エクイティに18%と比較的大きな投資を行っている。

不動産についても13%の投資構成となっており、先のGPFGの不動産ポートフォリオ構成の目標が3~7%となっていることと合わせると、長期の投資家にとっては、10%程度の保有比率は一つの目安となると考えられる。

 

図表3: GICのポートフォリオ構成

0725_図表03

出所: GIC Report 2022/23

 

執筆日:2025.02.03

※この記事は、執筆日時点の情報を基に作成しています。最新状況につきましては、スタッフまでお問い合わせください。

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