
『日米でここまで違う。不動産管理の現実を左右する4つの差』でもお伝えした通り、日本とアメリカでは入居者の感性が大きく異なります。ときにはその差が、大きなトラブルの原因になることも。
いたずらに不安を煽りたいわけではないけれど、投資していただくならば事前にリスクも把握しておいてほしい―― そんな想いから、オープンハウスが経験した入居者トラブルの実例を、管理の現場をよく知る社員、大畠葵に聞きました。悪意なく滞納する人々、ドアを開けたまま消えた逃亡者、勝ち目のないカビ訴訟……。よくあるケースから、ここまで酷いのはアメリカでもレアという事例まで、広くご紹介します。
※同じく大畠にインタビューした記事『「退去しました」しか連絡が来ないのがアメリカ品質 ――物件管理を内製化した理由』も合わせてご覧ください。
大畠葵
大畠葵
2016年にオープンハウスへ新卒入社。営業・管理領域を経験後、大手ディベロッパー系企業を経て再入社。現在は米国不動産の管理業務を担当し、現地管理会社との連携体制構築や運営改善に従事。日本とアメリカの商習慣・管理文化の違いを踏まえ、オーナーへ適切かつ丁寧な情報共有を行う管理体制づくりに取り組んでいる。
家賃の支払いは、ちょっと遅れる人のほうが多数派
―― アメリカ特有の入居者トラブルについて聞かせてください。まずライトなものから聞かせていただきたいのですが、なにかありますか?
滞納ですね。日本の感覚だとかなり驚かれるんですけど、月初時点では未払いの人が6〜7割もいるんですよ。アメリカでは基本的に毎月1日が支払い期日なんですが、そこでちゃんと払ってくれる人のほうが少ないんです。催促すると徐々に支払ってくれて、月末までに未払い率1%ほどに収束していきます。
単に忘れているだけの人も多そうですけどね。自動引き落としを強制することは法律で禁止されていますから。ただ、期日を守ろうという意識は希薄だと思います。ペナルティを課されるまではいいやという感じですね。
おもしろいのが、一旦半分だけ払って、後からもう半分を払うという分割払いをする人もチラホラいます。こちらの了承なく勝手に。管理上めんどうなのでやめてほしいのが本音ですが、回収することが優先なので一部許容していますね。
音信不通の滞納者が残していった、糞だらけの物件
―― ではヘビーな事例も聞いてみましょうか。過去に経験されたなかで、「この入居者はひどかった」という事例はありますか?
私が知っている範囲では、滞納を重ねた後に音信不通になった入居者ですね。残していった物件がひどい有様になっていて。もう一度貸し出せる状態にするのに約3万ドルかかりました。幸い、この物件のオーナー様は「修繕サポートプラン」に加入されていたので、オーナー様の限定的なご負担となりましたが、そうでなかったらと思うと恐ろしいですね。
―― ひどい有様というのはどういう状態だったのか、詳しく聞かせてください。
そもそも音信不通になる前の時点で、強制退去寸前だったんです。通知も出して、法的手続きも進めて、「次は警察が入る」くらいの段階だったんですが、返事がないので現地確認に行ったら、いなくなっていたんです。
最悪だったのが、裏口が開けっ放しだったこと。ネズミなどの動物が入り込み、室内の至るところが糞だらけで、異臭を放っていました。虫も湧いていたし、カビもベッタリ。床も絨毯も全部臭いが染み込んでいて、かなり大規模な清掃と修繕が必要になりました。
住んでいるときから、ドアを開けっぱなしにしていたのではと思うありさまで……。連絡が取れなくなってから確認に行くまでの間、1週間も経っていません。そんな短期間では考えられないくらいの荒れ具合でした。

不法占拠、下水逆流、水道管破裂…… 日本ではあまり出くわさないトラブルの数々
―― 他にも、アメリカならではのトラブルってありますか?
いろいろありますよ(笑)。例えばコロナ後は、「スクワッター(居座り)」と呼ばれる不法占拠がすごく多かったです。冬になると、空室に勝手に住み着く人が増えて。一番多かった時期には、ひと冬だけで50件近く見つかりました。当時は、警察もすぐには動いてくれなかったので、出ていってもらうまでに一ヶ月くらいかかってしまって。
だから、現地子会社社員が見回り頻度を増やしたり、付き合いのある芝刈り業者さんにも「異変があったら教えてください」とお願いしたりして、なるべく目を離さないように工夫しましたね。その後、法律が変わって即日追い出せるようになったこともあり、今ではスクワッター被害はほとんどなくなっています。
―― 設備面でのトラブルはありますか?
下水系で大きなミスがありました。セプティックタンクという、日本ではほぼ見かけない設備がありまして。汚水を貯めて微生物で分解するタンクなんですが、日本の浄化槽と比べると原始的で、頻度高くメンテナンスする必要があるんです。それに気付かず放置してしまった結果、汚水が逆流して、庭に溢れてしまったんです。
私たちがアメリカの設備を理解しきれていなかったこと、委託していた現地管理会社からの引き継ぎでメンテナンス記録が共有されなかったことなど、不備が重なって発生したトラブルでした。逆流事故が発生したときに、この設備のある他の管理物件すべてをチェックし、メンテナンス・スケジュールを決め対応に当たっています。知ってさえいれば対策は難しくないのですが、だからこそ「日本とは違う」「知らないことがある」を前提にしなければいけないことを改めて認識する機会になりました。お客様の頼れるパートナーであるためには、現地の不動産をより深く理解しなければいけないと実感する経験でしたね。
それから、気候変動の影響も気にする必要があります。近年、米国で今までよりも広い範囲に寒波が来るようになりました。寒波慣れしていない入居者が水道管を破裂させてしまうことがあるので、「水を少し出し続けてください」と注意喚起を事前に実施しています。
「カビが生えたので出ていきます」を止めてはいけない
―― 管理の経験が蓄積すれば、予防や対処できるトラブルばかりですか?
ノウハウも溜まってきたので、大抵のトラブルには「こう対応すればいい」という打ち手が思い浮かびます。ただ、どうしようもない問題も、全くないわけでありません。その代表例が「カビ訴訟」です。
3年住んでいる入居者から、「カビが生えて健康被害を被った。直ちに退去したい」と言われた場合、一番ダメージの少ない方法は、黙って出ていってもらうことです。一ヶ月前に通告していないから違約金を払えとか、住み方が悪くてカビが生えたから清掃費を払えと戦うのはオススメしません。
―― なぜですか? 住みはじめたばかりならともかく、3年も住んでからの指摘なら、カビが生えた原因は入居者にあると思うのですが。
日本人の感覚だとそうですよね。私個人の感覚としてもそう思います。ただ、アメリカだとカビ訴訟って入居者側が圧倒的に強いんです。微細なカビは目に見えないので、入居前にすでに発生していたと言われたら、そうではないと証明するのがほぼ不可能で。過去の判例も含めて、管理側が勝った事例がほぼ無いので、入居者から相談された弁護士がぜひやらせてくれと飛びつくような案件なんです。
入居者の言いなりになるのが嫌でも、テナントに出て行ってもらい、家の中を居住可能な状態に戻し、新しいテナントをすぐに探すことが最善なんです。
現場の苦労は笑い話として聞いてもらえばいい
―― トラブルのインパクトが強いので、アメリカ不動産を持つのが怖くなる方もいそうです。
トラブルだけを抜粋すると、そう感じてしまいますよね。でも、トラブルによる負担がオーナー様に向かわないようにするために私たちがいるので、そこは不安に感じないでいただきたいです。
滞納があると言っても、99%以上は月末までに回収できますし、そこに至るまでの面倒なコミュニケーションも私たちが行います。残りの1%についても、法的手段や回収業者への委託を含めて、取れる手段はすべて取ります。それでも心配な方は、賃料・修繕サポートプラン※に加入いただければ、滞納があろうと、空室だろうと、当社が補填します。
※賃料・修繕サポートプランは、月額費用をお支払いいただくことで、賃料未収や修繕のリスクに備えるプラン。詳しく紹介した別記事『購入後の不安に備える、【修繕サポートプラン】&【賃料・修繕サポートプラン】』もご参照ください。
もう誰にも貸せないんじゃないかというくらいの汚れや損傷も直して入居者付けした実績があります。日本人が知らないマイナーな設備の知識も、それをメンテナンスする専門業者とのネットワークもあります。
どんなトラブルも苦労するのは私たちだけで良くて、オーナー様には他人事として笑いながら聞いてほしい。『「退去しました」しか連絡が来ないのがアメリカ品質 ――物件管理を内製化した理由』でお話したように、オープンハウスが自社グループだけで管理を担っているのは、そんな想いがあるからです。
時代の流れもあり、AI活用によるスマートな投資が持て囃されがちです。当社もどんどんAIを活用したシステム等を導入しています。しかしながら、やはり不動産は個別性が高くその個別性に対応するためには、泥臭い実務が依然として残ります。私たちの介在価値が生きるのはここ。オーナー様の満足度に繋がると思い、日々物件の管理に当たっています。すべてお任せできる、頼りがいのある管理体制を築いているつもりですので、どうぞご安心ください。

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