
同じ不動産賃貸でも、日本と米国とでは常識やルールが大きく異なります。そしてその差は、物件管理を行ううえでは手間やコストの差になります。本記事では、日本とアメリカの不動産管理事情の違いを、4つのテーマで整理します。
「入居者の感性」が違う
日本の賃貸では、比較的「きれいに借りて、きれいに返す」という感覚が共有されています。退去日も守られやすく、原状回復の段取りも立てやすい傾向があります。一方、米国の賃貸では、同じ感覚で考えないほうがよい場面が少なくありません。
アメリカでは、入居者が住まいに対して気になる点を見つけると、比較的気軽に修繕を依頼する傾向があります。日本人オーナーから見ると「その程度は借主で対応してほしい」と感じるようなケースでも、現地の入居者はカジュアルに連絡してきます。築年数の古い物件が多く、住宅のつくりやメンテナンスに対する感覚も日本とは異なるため、修繕対応の頻度は日本より高くなりがちです。
また、感覚の差に特にショックを受けやすいのが退去時です。日本では程度の差こそあれ、ある程度きれいにして返そうという意識を誰もが当たり前に持っていますが、アメリカではゴミや家具などが残されたまま明け渡されるケースが少なくありません。もちろん個人差はありますが、退去後の清掃や原状回復に想定以上の手間と費用がかかることは、米国不動産では十分に起こり得ます。
さらに、賃料の支払いや退去日時に対する感覚も、日本ほど厳密ではない場合があります。数日の遅れや予定変更が、日本よりも起きやすい。こうした前提の違いを知らないまま運用を始めると、空室期間や原状回復費用の見込みがずれ、収益計画にも影響が出てきます。
「税務・手続き」の範囲が広い
米国不動産の管理で、日本人投資家が意外に負担を感じやすいのが、税務や各種手続きです。日本の投資用不動産であれば、日常的に意識するのは賃料入金、更新、退去、原状回復などが中心でしょう。ところが米国では、それに加えて、HOA(住宅所有者協会)とのやりとり、固定資産税の納付、固定資産税の見直し申請、火災などのトラブル時の保険申請など、所有者が関わるべき実務が幅広く存在します。
とくに固定資産税は、日本の感覚でいると戸惑いやすいポイントです。米国の税務署は課税額をラフに(大抵は高めに)算出して通知してくる傾向にあります。地域にもよりますが、課税額の見直しを求めると税額が下がることも珍しくありません。このことを知らずに、通知された金額を素直に支払ってしまうと損をすることになります。また、知っていたとしても、その申請を日本在住のオーナーが自力で行うのは簡単ではありません。
保険金の申請も同様です。事故や災害が起きたとき、保険会社とのやりとりを英語で進め、必要書類を整え、適切に請求するのは手間のかかる作業です。さらに、税務上の細かな実務まで含めると、単なる「賃貸管理」を超えた対応力が求められます。
つまり、米国不動産の管理は、入居者対応だけで完結するものではありません。税務、保険、自治組合との調整まで含めて、管理の射程そのものが広いのです。
「現地管理会社との距離感」も、日本の感覚とは違う
「それなら現地の管理会社に直接頼めばよいのでは」と考える方もいるかもしれません。もちろん選択肢の一つですが、ここにも日米のギャップがあります。
米国の現地管理会社は、基本的にオーナーも現地の商習慣や相場観を理解している前提で対応することが多く、日本の管理会社のように細かく説明しながら伴走してくれるとは限りません。何を確認すべきか、提示された修繕費用は妥当なのか、どこまでが通常業務で、どこからが追加対応なのか。こうしたことを自分で判断できないと、不利な条件を受け入れてしまうおそれがあります。
また、日本人オーナーが求めがちな「こまめな報告」や「細かな確認依頼」を、歓迎しない管理会社もあります。現地ではオーナーと管理会社の関係がより実務的で、必要以上のやりとりを前提にしていないことも多いからです。
加えて、アメリカでは人件費が高く、現地スタッフが少し動くだけでも費用が発生しやすいという事情があります。物件確認、見積もり取得、追加報告など、日本では当然のように行われる対応が、米国では有料になることも珍しくありません。そのため、「管理料は安いが、細かな対応を頼むと結果的に高くつく」ということも起こり得ます。
管理会社の良し悪しによって、オーナーの体験が大きく変わるのも米国不動産の特徴です。購入前には物件そのものだけでなく、誰がどう管理するのかまで見ておく必要があります。
「家賃が上げやすい」という利点も
ここまで読むと、米国不動産の管理は大変なことばかりに見えるかもしれません。ですが、米国には日本にはない明確なメリットもあります。それが、家賃を上げやすいことです。
日本では、空室リスクを恐れて家賃改定に慎重になりがちです。一方、アメリカでは「家賃は毎年見直されるもの」という感覚が比較的広く共有されています。エリアや市況にもよりますが、毎年一定幅で賃料を引き上げられるケースは珍しくありません。市場賃料との乖離が大きければ、より大きな改定が可能になることもあります。
これは投資家にとって大きな利点です。保有コストやインフレの上昇を賃料に反映しやすく、長期的には収益の成長余地を持ちやすいからです。もちろん、無理な値上げは退去につながるため、市場環境や募集状況を見ながら慎重に判断する必要があります。それでも、日本に比べれば、家賃を上げることに対する市場の許容度は高いといえるでしょう。
つまり米国不動産は、管理の難易度が日本より高い一方で、うまく運用できれば賃料成長の恩恵を受けやすい市場でもあります。ここが、難しさと魅力が同居する米国不動産投資の本質です。
管理の差を知らずに、物件だけで選ばない
日米の不動産管理の違いをひとことで言えば、日本は比較的予定通りに回しやすい管理、米国は手間も変動も大きい一方で、運用次第で収益を伸ばしやすい管理です。
入居者対応の前提、税務や手続きの広さ、現地管理会社との距離感、そして家賃改定のしやすさ。これらを理解せずに利回りだけで比較すると、購入後に「思っていた投資と違った」と感じる可能性があります。
米国不動産投資で本当に見るべきなのは、物件そのものだけではありません。その物件を、こうした日米の違いを踏まえて、誰がどう運用してくれるのか。そこまで見て初めて、投資の成否を判断できるのです。
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