安く買えれば利回りがよい、とは限らない。米国不動産を商品にするまで

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不要なコストを抑えることは、投資効率を考えるうえで重要です。しかし、購入価格を抑えることが、投資効率を最大化することにつながるかといえば、必ずしもそうは言えません。

マーケットプライス(Zillowなどに開示されている物件仕入価格)との価格差を気にする方もいますが、利回りは購入後の修繕費や、法的トラブルの有無、購入時点でリーシングが済んでいるか(既に入居者がついているか)など空室期間にも左右されます。将来の損失につながり得る問題に対処済みの物件のほうが、長期的な投資価値は高まります。

オープンハウスでは、住宅を仕入れた後、どのような工程を経て投資商品にするのか。商品づくりの舞台裏を、仕入れ・商品化に携わる担当者に聞きました。

渡邊 皓平

渡邊 皓平

渡邊 皓平

2019年にオープンハウスへ新卒入社。営業として金融機関との連携や法人クライアントへの提案業務に従事。2023年7月よりテキサス州ダラスに駐在し、現在はテキサス州・ジョージア州における物件仕入れ、リーシング、管理、売却など複数部門を担当。営業の経験を活かし、投資家様の顧客満足度向上と投資利益の最大化に努めている。

安く買うことと、投資成果を最適化することは同じではない

実物資産である不動産は、購入後もコストがかかるし、インカムが変動する。

―― 「安く買うほうが利回りがよい」は、一見正しそうに思えます。なぜそう言い切れないのでしょうか?

ほかの条件がすべて同じなら、購入価格が安いほど利回りは高くなります。ただ、不動産の場合は、株式や債券などの金融資産と違って、「条件が同じ」ということはあり得ません。

不動産は経年劣化する実物資産です。購入後には建物や設備の修繕が必要になり、物件の状態によってその金額は大きく変わります。家賃収入も、空室期間、入居者募集の成否、賃料水準などに左右されます。安く買えても、多額の修繕費が発生したり、入居者がなかなか決まらなかったりすれば、実際の利回りは当初の想定を下回ります。将来売却しにくい物件であれば、出口で損失が生じる可能性もあります。

つまり、価格の安さは、それ自体が投資価値の高さを意味するわけではありません。物件価格が安い背景に、建物の劣化、賃貸需要の弱さ、法的・行政的な制約、将来の売却しにくさなどがあれば、価格差以上のコストや収益機会の損失が生じることがあるんです。

―― 購入価格だけで判断すると、投資効果が悪くなってしまうこともあり得ると?

もちろん、不要なコストを抑えることは大切ですし、販売価格自体が妥当かどうかも検討する必要があります。ただ、不動産投資で最適化すべきなのは購入価格だけではありません。購入後の修繕費、空室による逸失賃料、法的・行政的なトラブル、管理の負担、将来の売却可能性まで含めた投資成果です。購入価格を最小化することと、投資価値を最大化することは、必ずしも一致しません。

 

商品づくりは、仕入れる前から始まっている

仕入れる10倍以上の物件を検討する。だから、投資対効果のポテンシャルの高い物件を厳選できる。

―― オープンハウスの米国不動産は、現地で住宅を仕入れ、日本の投資家へ販売しています。商品づくりは、どの時点から始まるのでしょうか。

物件を買った後ではなく、仕入れる前から始まっています。まず重要なのは、できるだけ幅広く物件情報を集め、その中から日本のお客様へ届けるのに適した物件を選ぶことです。

2026年1~6月に当社のシステムへ登録された物件は10,283件ありました。一方、同じ期間の仕入決済件数は708件です。システムに入った物件情報のうち、最終的に仕入れへ進んだのは7%未満になります。

もちろん、登録された物件をすべて同じ深さで検討するわけではないので、この比率だけでは目利きの厳しさの根拠になりません。ただ、最初から販売しやすい条件の物件だけに絞って動くのではなく、多数の候補を集め、その中から仕入れ対象を絞っていることはお分かりいただけると思います。

―― それだけ多くの物件情報を集められるのは、なぜですか。

実を言うと、数だけたくさん入手するのならば、特に難しいことではないんです。アメリカは市場の透明性が高く、誰でも閲覧できるところに大量の物件情報が掲載されていますから。ここで問われるのは、目利きの素早さと正確さです。誰でも買えるからこそ、スピーディーにジャッジして良い物件を他社より先に抑えることが重要です。

もう一つ、システムへの登録数という意味ではそれほど大きな割合を占めませんが、仕入れにおいては重要な存在なのが、一般市場に出る前の非公開情報です。この段階で仕入れた物件は、他社が検討すらできなかった、独自性の高い商品になり得るからです。

当社はこの非公開物件の情報の入手において、日本の会社としては相当有利な位置にいると思われます。というのも、現地で継続的に住宅を購入してきた実績が大きいからです。特に、テクノロジーを使って住宅を直接買い取るiBuyerとの取引では、まとまった数を継続して購入してきました。そこで築いた信頼関係が背景にあるからこそ、物件が一般市場に出る前の段階で情報をいただけるんです。

オフマーケット、つまり非公開の取引では、価格だけでなく、「継続して買えるか」「合意した条件で確実に決済できるか」も売り手にとって重要です。1回限りではない取引関係が、一般市場に出る前の物件を含め、情報の集まりやすさにつながっています。

多くの物件を検討するのは、本当に投資価値のある物件を見極めるためです。候補が多ければ、投資商品として適さない物件を見送る余地が確保できます。さらに、継続的な仕入れを通じて得た修繕・賃貸・売却のデータを、次の選別に生かせます。

 

「買える物件」と「貸せる物件」は違う

貸出規制があると収益物件にならない。だから「貸せる」ことが投資対効果の大前提。

―― 価格や立地が魅力的でも、仕入れない物件があるということですね。

はい。住宅として買えることと、収益物件として運用しはじめられることは別です。価格や立地が良くても、賃貸できなければ収益物件にはなりません。

米国で特に注意が必要なのが、HOA(住宅所有者協会)の規制です。日本のマンション管理組合に近い役割を担う組織で、地域や住宅コミュニティーごとに独自のルールを設けています。賃貸を全面的に禁止していたり、賃貸できる戸数に上限があったり、購入後に一定期間居住しなければ貸し出せなかったりと、内容は物件によってさまざまです。

これを見落としたまま入居者を募集すると、罰金だけでなく、入居者に退去を求めるための補償や弁護士費用が発生する可能性もあります。そこで、仕入れ前にHOAの規約を確認し、判断が難しい場合は弁護士も介して賃貸の可否を精査します。

―― HOAの規約以外にも注意すべきことはありますか?

自治体によっては賃貸開始前のインスペクション(第三者による、住宅の劣化具合や不具合、欠陥の有無の検査)に長い時間がかかり、その間の空室を避けにくいことがあります。不法占拠の被害が相次ぐ地域では、空室期間自体が大きなリスクです。土地が2つの郡にまたがっていれば、行政手続きや納税が複雑になり、将来の売却にも支障をきたしかねません。

こうした経験は、担当者個人の記憶にとどめず、仕入れ基準に反映しています。賃貸前の手続きに時間がかかりすぎる地域や、不法占拠リスクが高まった地域を仕入れ対象から外す。複数の郡にまたがる土地を買わない。過去の修繕、賃貸、売却で得た知見をルールに変え、新しい案件の判断に使っています。

利回りの試算は、賃貸運用が問題なく始められるという前提で成り立ちます。その前提自体を仕入れ前に検証し、成立しない物件を入り口で除く。これも商品づくりの重要な一部です。

 

「今は使える」ではなく、壊れたときの損失まで考える

高確率で発生する修繕は、前もって直しておく。だから、投資対効果の計算がずれにくい。

―― 法的・制度的に賃貸できると分かった後は、どのような工程へ進みますか。

次は、建物の状態を見極め、賃貸住宅として整えるリハブです。リハブはリハビリテーションの略で、古くなった住宅を修繕・改良し、機能や価値を回復させる工事を指します。当社がこれまでに手がけたリハブは、2026年8月時点で累計7,000棟強です。

工事には大きく3つの役割があります。安全性・機能性・清潔さを確保すること。入居者に選ばれやすくし、賃料や物件価値の向上につなげること。そして、将来の大きな修繕や二次被害を防ぐことです。見た目をきれいにするだけではありません。

―― 将来の損失を防ぐ工事とは、具体的にどのようなものでしょうか。

分かりやすいのが、屋根裏にある給湯器です。設置から10年以上がたち、寿命が近づいていても、点検時には動いていることがあります。ガレージにあるなら状態を見ながら使い続ける判断もあり得ますが、屋根裏で故障して水が漏れると、天井や壁、室内設備まで被害が広がりかねません。そのため、屋根裏にある古い給湯器は、稼働していても状態に応じて販売前に交換します。機器が今動くかどうかではなく、壊れたときにどこまで損失が広がるかを見ているわけです。

配管にも、外から見えにくいリスクがあります。古い住宅に使われてきた亜鉛メッキ配管は、内側の腐食が進むと水圧低下や茶色い水の原因になります。購入後に問題が表面化すれば、お客様に数千~1万ドル規模の負担が生じる可能性があるため、仕入れ後に交換した事例もあります。

―― 仕入れ時に分からなかった問題が、工事中に見つかることもありますか。

あります。象徴的なのは、地下の鋳鉄製配管を交換したケースです。仕入れ時には把握できなかった軽微な漏水が、修繕中に見つかりました。その漏水自体は軽微なもので、ピンポイントで補修することも可能でしたが、鋳鉄管は経年劣化時に内側から錆て脆くなる性質があり、後になって他の箇所にも不具合が生じるリスクがあります。工事費用は当初の試算より増えてしまいますが、支障がある箇所だけを直すのではなく、配管そのものを交換することを選びました。

その時点では表面化していない問題でも、残したまま販売すれば、将来お客様が大きな修繕費を負うおそれがあります。仕入れ後、お客様に販売する前に問題が見つかったとき、販売価格や利益を守るために先送りしない。そこは商品をつくる側が引き受けるべきリスクだと考えています。

―― では、古い設備はすべて新品に替えるのでしょうか。

いえ、何でも新品にすればよいわけではありません。投資物件ですから、支出に見合う効果があるかという視点も欠かせません。豪華な住宅をつくることが目的ではなく、余分なコストを抑えながら、入居者が安心して住め、お客様が長期保有しやすい状態に整えることが目的です。

そのうえで、古さが目立つ貝殻型の洗面ボウルやカウンタートップを御影石やクオーツ素材へ替えたり、壁を幅広い入居者に受け入れられやすいニュートラルカラーに整えたりします。階段への手すり設置や、火災報告が多い特定のブランドや型番の配電盤の交換など、安全性を高める工事も行います。

予防的な修繕には、購入直後の追加支出を減らすだけでなく、漏水のような二次被害、修繕中の空室、突発的な資金手当てといった連鎖的な負担を抑える意味もあります。

工事が終わっても、入居者が決まるまで仕事は終わらない

原則、賃料が発生している状態で販売。だから、投資対効果を即実感できる。 

―― リハブが完了すれば、投資商品として完成ですか。

当社は、そうは考えていません。収益物件で大切なのは、想定賃料を資料に書くことではなく、その賃料で実際に住みたい人がいることです。

工事が終わると、MLS(不動産業者間の物件情報システム)や米不動産情報サイトのZillow、セルフ内覧サービスのRentlyなどを通じて入居者募集を始めます。問い合わせ対応、内覧、申し込みの受け付け、入居審査、結果通知、敷金の受領、入居前の最終確認まで、賃貸開始に必要な工程を現地で進めます。

―― 入居者が決まるまでの間、空室はどのように管理していますか。 

現地社員が定期的に巡回し、ごみが放置されていないか、新しい修繕箇所が生じていないかを確認します。日本側でもDOM(市場滞留日数)を継続して見て、募集期間が長くなれば、賃料設定や物件の状態に問題がないかを見直します。

入居審査では、希望者の収入や信用情報、賃貸履歴などを確認します。審査工程を自動化することで担当者による判断のばらつきを抑え、休暇の多い時期にも手続きを止めにくくしています。入居者を早く決めることと、安定して賃料を支払える人を選ぶこと。その両方を成立させるための仕組みです。

―― 未入居の状態で販売する場合、想定賃料はどのように決めるのでしょうか。

周辺の募集事例だけを見て強気の賃料を置くのではなく、保守的に設定します。高い賃料を置けば見かけの利回りは良くなりますが、それではお客様の判断を歪めかねません。

販売前に募集を始めるからこそ、机上の試算と実際の需要の差も見えてきます。過去には、想定より入居者付けに苦戦したため、日本のお客様向け商品として販売せず、現地で転売した物件もありました。仕入れや工事に費用をかけた後でも、賃貸需要を十分に確認できなければ商品化を見送る。販売前の入居者募集は、収益性を実地で確かめる最終検査でもあるんです。

 

価格だけではなく、投資体験を意識した商品づくり 

 投資対効果を最大化するために、必要なコストと労力をかける。  

―― ここまでの工程には、当然コストがかかります。現地で住宅を直接購入する場合より高くなってしまいますよね?

はい、高くなります。でもその差額は、私たちがプロとして必要だと判断した調査や修繕に由来するものです。現地で売り手から直接買うとしても、その後に同じようなコストが必要になる可能性が高いと考えています。

仮に、ある物件を別の物件より1万ドル安く購入できても、購入直後に配管交換で1万ドルが必要になり、工事中の空室で賃料収入も失われれば、取得時の価格差はなくなります。反対に、販売価格だけを見れば高くても、必要な修繕と入居者付けが済み、早い段階から賃料収入を得られるなら、保有開始後の実質的な収支は異なります。これは単純化した例ですが、販売価格だけでは投資商品としての高い・安いを判断できない理由を示しています。

―― 投資家は、価格以外にどこを確認すべきでしょうか。

HOAや行政の規制が調べられているか。古い給湯器や配管が近い将来に大きな出費を招かないか。想定された賃料で実際に入居者が見つかるか。空室中の物件を誰が見回り、問題が見つかったときに誰が費用を負担したか。こうした条件を確認していただきたいですね。住宅として似ていても、条件が違えば、投資商品としての中身は同じではありません。

当社が販売前に行っているのは、見栄えのよい内装を施すことだけではありません。多数の候補から運用に適した物件を選び、規制を調べ、将来の損失につながり得る箇所を直し、実際の賃貸需要を確かめます。問題が見つかれば、自社保有中に費用と手間を引き受ける。投資商品として届けるべきではないと判断すれば、販売しない選択もします。

目指しているのは、単に安い住宅をつくることではなく、お客様が保有を始めた後の収益とリスクまで考えた商品をつくることです。つまり、購入価格だけを最小化するのではなく、長期的な投資価値を最適化するということですね。

―― 最後に、オープンハウスが考える「商品化」とは何か、あらためて教えてください。

不動産投資から不確実性を完全になくすことはできません。入居者の退去や設備の故障、市況の変化など、購入後に生じるリスクは残ります。それでも、販売前に確認できることを確認し、取り除けるリスクを取り除いておけば、お客様が購入後に直面する想定外は減らせます。

「仕入れて、売る」だけでは、投資商品として不完全です。米国不動産の価格を比べるときは、その金額に至るまでに何が行われ、どのリスクがすでに取り除かれ、どの程度運用を始めやすい状態になっているかも見ていただきたいですね。住宅を、お客様が運用できる商品へ変える。販売前に積み重ねる工程は、単なるコストではなく、投資価値を形づくる一部だと考えています。

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