
オープンハウスでは、販売したアメリカ不動産を管理する業務を、自社(現地子会社)で担っています※。当たり前に思えるこの体制、実は日本企業のなかではかなり珍しいものです。管理サービスがあると喧伝している会社も、実際は現地管理会社に外注委託するケースが大半です。かくいうオープンハウスも、販売開始から2年ほどは現地企業に管理を任せていました。
※LAなど、一部の都市を除く
なぜ現地管理会社に任せるのが一般的なのか。通例から外れて自前で管理体制を築くことにしたのはなぜか、管理体制の違いはオーナー様の投資体験にどんな影響を及ぼすのかといった疑問を、現在の管理体制の構築をリードした大畠葵に聞きました。
※大畠へのインタビューは次の記事『日本の当たり前は通用しない! アメリカ入居者トラブル実録』との2本立てです。合わせてご覧ください。
大畠葵
大畠葵
2016年にオープンハウスへ新卒入社。営業・管理領域を経験後、大手ディベロッパー系企業を経て再入社。現在は米国不動産の管理業務を担当し、現地管理会社との連携体制構築や運営改善に従事。日本とアメリカの商習慣・管理文化の違いを踏まえ、オーナーへ適切かつ丁寧な情報共有を行う管理体制づくりに取り組んでいる。
現地の管理会社に委託した黎明期
―― 最初から自社管理だったわけではないんですね。
そうですね。最初は現地の管理会社さんに委託していました。オーナー様と、オープンハウスと、現地管理会社との三者契約みたいな形ですね。当社としてはじめて請け負う物件管理、それも米国での事業でしたから、現地のプロに任せるというのは自然な判断だったと思います。
―― 米国不動産を取り扱う他の企業でも、現地の管理会社に委託するのが主流なんでしょうか?
他社さんの内情を詳しく知っているわけではありませんが、他社物件もお持ちのオーナー様からお話を伺う限り、おそらくそうだろうと考えています。
自社で管理する体制をつくるのって、けっこうリスクなんです。特に立ち上げ期には人を採用したり、システムを導入したりと、大きなコストもかかりますから、事業を長期継続していく覚悟と体力がない会社では難しいでしょうね。
また、日本のスタッフと現地子会社の連携が重要であり、橋渡し役はオーナー様の期待値を理解している人間が適切であると考えています。その点で、米国不動産の管理経験がある日本人社員が最適ですが、そんな人材がいる会社なんてそうそうありませんから、別の業務を担当していた未経験の人間をコンバートするしかありません。ただでさえ未経験の業務を外国で担当するとなると、尻込みする人が多いでしょう。
そうした事情を考慮すると、現地の管理会社への委託が第一選択になるんでしょうね。
「退去した」としか書かれていない連絡だけが届く
―― そこからなぜ、自分たちでやろうという考えに変わっていったんですか?
一番大きかったのは、“情報連携の質”ですね。極端に言うと、「起きた事象」だけが後から伝えられるんですよ。例えば、テナントが退去する場合も、ある日突然「退去しました」と聞かされて、そこに至る経緯が一切共有されないんです。
日本人の感覚からすると、そこに至るまでの経過を段階ごとに知らせてほしいじゃないですか。退去通知が来ました、こんなやりとりをして退去日が決まりました、遅延なく退去してくれました、原状回復工事は何日くらいかかるので募集はいつからできます、そういう流れを把握したいはずです。
でもそうした情報が共有されないため、私たちからオーナー様への報告も、結果だけしかお伝えできなかったんです。当然、満足度は上がりません。実際、「(報告が)いつも唐突だね」という苦言をいただいたことが多々あり、危機感を覚えました。
「もっと細かく共有して」と言っても変わらない
―― 内製化を考える前に、委託先に改善してもらうというアプローチはされたんですか?
もちろんしましたよ。「状況に変化があったときはなるべく細かく共有してほしい」と相談からはじめ、あまり変わらなかったので「退去時は通知があった時点で共有を」等、具体的な報告タイミングを伝えました。それでも変わらなかったので、こちらの知りたい情報をまとめた スプレッドシートをつくって、毎日確認し、変更があったら更新してくれるように頼みました。残念ながら、期待する報告レベルには改善されませんでしたが……。
相談したときは、笑顔で「OK、OK」って言うんです。快く受け入れてくれた、理解してくれたと思うんですが、実務的にはほとんどなにも変わらない。どれだけ伝えても、重要度の認識の差が埋まりませんでした。
―― 能力不足というより、文化の違いなんでしょうか。
そうだと思います。担当者の性格や能力のような属人的なものじゃなくて、アメリカではそれが“普通”なんだと捉えています。たとえば日本の飲食店って、チェーンのファミレスでも丁寧に接客してくれるじゃないですか。でもアメリカでは、雇用契約の中に規定されてなければやる必要のない特別なサービスなんですよね。
それと同じ感覚で、「細かく丁寧に」という日本では当たり前のサービス精神が一般的ではないんだと思います。そんなこんなで、オーナー様への情報共有のクオリティーを上げるには内製化しかないとなりました。

一筋縄ではいかない管理引き継ぎ
―― 内製化には苦労されましたか?
そうですね。立ち上げにあたり、現地側にはアメリカの管理会社出身者を採用していたんですけど、日本側は未経験のメンバーも多く手探りでスタートしました。
特に大変だったのは、委託先からの情報引き継ぎです。テナント情報、契約内容、入出金ログ、修繕履歴なんかのデータの体裁や格納場所が全部バラバラで。アメリカ社会にしばしば見られるルーズさは、情報共有だけじゃないんだなと思い知りました(笑)。今だから笑って話せますけど、当時はかなりカオスでした。
―― 内製化して、状況は変わりましたか?
最初は全然ですね。後手後手の報告は変わりませんでした。そこは未経験の弱さで、日本側のメンバーがアメリカの管理業務を理解しきれていなかったんです。フローやルールの理解の解像度が足りていなかったので、現地で何か起こったことを知り得ても、次に何に備えるべきか説明できなかったんです。「起きた事象を伝える」ことに留まってしまって、米国管理会社に委託していたときとあまり差がない状態でした。
現地理解とソフトウェア開発で、管理クオリティーを向上
―― そこから、何が転機になったんですか?
まずは現地理解ですね。アメリカにメンバーを送って、実際の工事を見せたり、現場を回らせたりしたんです。そこで、「この工事って本当に必要なのか」「この見積もりは妥当なのか」といった判断を、現地任せじゃなく、日本からも意見できるようになってきました。
もう1つ重要なのが、管理業務用のソフトウェアを自社開発したことです。それまではアメリカで主流のソフトウェアを使っていたんですが、事業の改善を図ろうにも、日本人の感覚からすると大雑把に見えるところがあって。オーナー様の資産を最大限活かせるような管理戦略が取れるよう、完全にオリジナルで作り上げました。
このソフトウェアを使いはじめたのが3年ほど前ですが、管理物件のステータスをいち早く察知できるようになり、いろんな面で先手が取れるようになりました。例えば退去についても、退去日を早く決めると、原状回復の段取りも早く決められ、新しいテナントの募集を早く始められます。実際、ソフトウェアの切り替え前後で空室期間が半分ほどに圧縮できました。
今なら、現地管理会社に委託していた頃よりも、クオリティーが格段に上がっていると胸を張って言えます。
アメリカ主導だと、オーナーの費用負担が激増しかねない
―― そのほか、オーナー様の立場で、オープンハウスが自社管理していることのメリットはどんなものが考えられますか?
各所との交渉ですね。テナントとも交渉しますし、現地業者とも交渉しますし、場合によっては現地の弁護士とも話します。アメリカって訴訟大国なので、「訴えられるリスク」を理由に、管理会社がテナントの言いなりになるケースって普通にあるんですよ。
修繕要望1つとっても、オーナーが負担すべき内容かどうか精査することなく、「やらないと訴訟になるかもしれないから、全部対応しましょう」と平気で言うんです。そのほうが管理会社も楽なんでしょうね。
オープンハウスの場合、そこを交渉します。もちろんテナントの居住リスクに繋がる修繕の実施は推奨しますが、そうではないアディショナルな設備の設置にはお金を出さないとか。現地の訴訟経験が豊富なインハウスの弁護士がいるので、「これは本当に必要なのか」「どこまで対応すべきなのか」を判断し、オーナー様の負担を最小化するよう交渉します。
そうしていると、テナントから訴訟の手前の通告文が届くこともあるんですが、それも全部、私たちが対処しています。会社によっては顧問料を取るような業務ですが、私たちは管理委託費のなかで対応しています。ちなみに、これまでに届いた通告文の多くは取り下げや和解になっていて、実際に訴訟になったことはほとんどありません。法的に不利になるような無茶な突っぱね方はしていないので、その点はご安心ください。

プライドと利益。負担の大きな業務に取り組む、2つのモチベーション
―― 負担の大きい業務だと思いますが、そこまで踏み込んで対応するのはなぜですか?
オーナー様の資産を最大化すること、アセットマネジメント的な部分も含めるのが、本当の管理の仕事だと思っているからですね。テナントに言われたことを伝書鳩のように伝える会社は、日米問わずたくさんありますが、それだと介在価値がないですから。
と、カッコいい言い方をしましたが、当社に利益を残したいというビジネス的なモチベーションもあります。オープンハウスでは「修繕サポートプラン」や「賃料・修繕サポートプラン」というサービスを提供しています。
これらのプランでは毎月定額の料金をいただき、金額次第にはなりますが修繕費用を当社負担で実施させていただいたり、空室時には当社がその補填をしたりと、オーナー様のリスクを軽減するサービスを提供しています。裏返せば、修繕費用を抑え、空室を減らすことが、自社の利益確保にもつながるんです。だから必要ない修繕は避けようとするし、業者と交渉して工事費を安く抑え、少しでも早く住める状態にしようと努力するんです。
「アメリカだから仕方ない」に逃げる会社に任せてはいけない
―― 日本人オーナー様が米国不動産の管理委託先を探す際、気をつけるべきポイントを教えてください。
極端な話、キレイに長く使ってくれる良いテナントが住んでくれているうちは、管理会社なんてどこでも一緒です。差が出るのは、高額な修繕や悪質な滞納、急な退去などのトラブルが生じたときだけです。
ただ、アメリカの場合そうしたトラブルが日本よりも頻繁に発生します。『日本の当たり前は通用しない! アメリカ入居者トラブル実録』のインタビューでもお話しましたが、土足文化ということもあり日本人からすると住み方が粗い方がチラホラいますし、家賃も催促されてから払えばOKという感覚の人が多く、転職が盛んなので転居頻度も高いためです。他社さんとお付き合いのあるお客様からの又聞きによると、売り文句で『アメリカは毎年家賃が◯%ずつ自動的に上がります』と言う企業さんもあるようですが、”自動”はちょっと言い過ぎです。値上げだって、管理の現場がテナントとしっかりコミュニケーションするからこそ。当然のように上げようとすると、揉めることだってあります。
そうしたトラブルに直面したとき、アメリカ品質の粗い説明で「アメリカはこうだから仕方ない」と言われて飲み込める方は少ないのではないでしょうか。最低限、以下の2点ができる会社かどうか確認することをおすすめします。
・よくあるトラブルを、日本人が理解しやすいよう噛み砕いて説明できるか。
・トラブルが起きた際、オーナー負担を減らすために交渉してくれるか。
米国不動産という高価な資産を任せるに値する会社をぜひ見つけてください。

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