賢人たちを賢人たらしめている行動や考え方は。そして、大切にしている習慣は──。 インタビューを通じて、そんな共通点を探っていきます
現在、製品はネットやテレビ通販などで売られているということですが、ここまでくるにはご苦労も多かったのでは。
そうですね。スタンフォード大学での研究者生活を終えて日本に戻ってきてからは北海道大学の大学院で研究を続けたのですが、当時は日本でも再生医療が注目され始め、その高い将来性に期待が集まっていました。しかし、その分、研究を続けるには莫大な費用と時間がかかります。そこで文部科学省や経済産業省から補助金、助成金を受けて研究を続けました。
リジェンティス株式会社の社長に就任されたのもその頃ですか。
大学を退職するのは心残りがあったのですが、大学発ベンチャーを立ち上げるのにも魅力を感じたので、当時たまたま製薬会社を退職した父が趣味でやっていた売上ゼロの会社に、大学で開発した技術を入れて、ベンチャーキャピタルからも投資していただき、社名もリジェンティスに変更しました。社長に就任したのはその後のことです。
研究者からビジネスマンへの転身ですね。
そうなんですが、先ほども言ったように私は完全な理系人間で、ビジネスにはまったく疎かったですから、特許こそ取ったものの、ポリリン酸の研究成果をなかなかうまくビジネスに結びつけることができませんでした。医療用医薬品の開発には時間とコストがかかるので、手っ取り早く製品化できるということで医薬部外品の歯磨き粉や育毛剤を製品化したのですが、当初はまったく売れなかったのです。いろんなツテをたどって問屋さんや小売のバイヤーさんに足を運びましたがまったくダメでした。
営業なんて、研究者の方にとってはまるで畑違いですから、ご苦労されたことでしょうね。
ええ、ほとんど相手にされませんでした。補助金はどんどん減っていくし、私の通帳も底を尽きかけたことがあって、あれには参りました。
そんな状態から、どのように逆転されたのでしょうか。
ある人の紹介で、ラジオショッピングで取り上げてもらったことがきっかけです。私は、映像もないラジオショッピングでまさか育毛剤なんかが売れるわけはないとまったくアテにしていなかったんですが、ところがこれが大当たりしたんです。例えばタクシーの運転手さんなどが繰り返し聞いているうちに、映像がない分、頭の中でイメージが広がるそうで、急激に商品が売れ出しました。
まさに想定外のことだったと。
ええ。本当に人とのつながりの大切さを実感しましたし、何が運を引き寄せるかわからないと思いました。もっとも急に売れすぎてしまったので、今度は製造が間に合わず、納品に苦労しましたが。
売り込みがうまくいかずになかなか結果が出なくても、諦めずに続けたことがよかったですね。
その通りだと思います。仮説を立てて研究しては失敗し、また次の仮説を立てて研究する、というのが私の研究生活でした。うまくいかなくて当たり前だし、そもそも先が見えない中でもがくことが、研究では普通のことなんです。それでも諦めずに続けることで、あるとき、予想もしていなかった方向に答えが見つかることがあります。これはビジネスでもまったく同じではないでしょうか。
関連記事
諦めずに続けることで、いつか成果を手にできる。(その1)
オープンハウスの米国不動産投資
オープンハウスはなぜ“米国”不動産に取り組むのか
なぜ、こんなにも多くのお客様にご支持を頂いているのか(その1)