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ドキュメンタリー作家はなぜ事業家として成功したのか。(ゲスト 井川 幸広 氏:第2回)

作成者: 海外不動産コラム 編集部|2020.01.14

賢人たちを賢人たらしめている行動や考え方は。そして、大切にしている習慣は──。 インタビューを通じて、そんな共通点を探っていきます

異なる専門領域のかけ合わせが価値を生む

鎌田

井川さんがフリーだった時代と比べて、今はフリーランスという働き方も市民権を得ましたね。

井川

私の頃は社会的ステータスも低くて、いくら稼いでいても銀行は相手にしてくれませんでした。そうした状況を何とか変えていきたいと思ったことが、私の事業の出発点でした。

鎌田

ワークスタイルそのものもずいぶん変わりましたし。

井川

そうですね、年中無休で働くなんていうワークスタイルは、もうなくなりました。これはとてもいいことだと思います。ただ私自身にとっては、フリーの時代にがむしゃらにドキュメンタリーの仕事をしていたことは、事業を展開する上でとても役に立っています。世の中って、様々な変化が起きたら、後付けで規制や法律が生まれるじゃないですか。

ところが変化の速度が速くなって、そうしたルールづくりが追いつかなくなったため、他の業界で当たり前のことが他の業界では通じないことも多いんです。それに対して“おかしいぞ”と声を上げ、新しいパラダイムを創ろうとすることで、若い人が集まってくる。

古い業界ほど、そうした変革のポテンシャルが大きいですね。だから私としては、事業を通じて職業別のドキュメンタリーをつくっている感覚なんです。テレビなら90分で終わるテーマでも、事業なら生涯をかけて追いかけていけるし。

鎌田

その事業を横展開することで拡大されてきたわけですが、すべてプロフェッショナルの活躍する領域ですね。

井川

そうですね。そうした異なる専門領域をかけ合わせることで新しいものが生まれるのではないかと考えています。

例えばメディカルとITをかけ合わせたり、シェフとドクターがコラボをしたり。今グループ会社が16社(海外4社含む)あるんですが、新しいビルに引っ越したのも、グループ会社全部を一ヵ所に集約することで新しいかけ合わせが生まれたり、ジャンルとジャンルのすき間を埋めることができたりするためです。

いくらコミュニケーションツールが発達しても、やはりフェイス・トゥ・フェイスのリアルなコミュニケーションがあってこそ、ふとした瞬間に新しいアイデアが生まれるんです。

鎌田

なるほど、かけ合わせることによって新しい付加価値が誕生すると。

井川

例えば病院の食事は味気ないというものが多いですが、ミシュランを獲ったシェフと病院をコラボさせてみたら、とてもおいしい病院食が誕生しました。これはきっと世界で売れるものになるはずです。

医療分野に近い日本の介護では、制度面では進んでいますが、デザインという観点では海外に負けています。そこで介護の領域にデザインをかけ合わせれば、世界に誇れるものが生まれるでしょう。

さらには、何歳になっても働くことが健康のためになるという価値観を世の中につくりたいですね。生涯働くことが人生において当たり前になり、働くことで年を取っても心豊かに暮らせる、そんな社会ができたらと考えています。

鎌田

夢がありますね。

井川

トレンドだから事業にしたいという発想は私の中にないんです。例えばコンピュータ言語のCOBOLは生きた化石と言われながらも、金融業界の一部では今でも現役で動いていますから、そのエンジニアは絶対に必要です。そのような世の中に不可欠の領域を事業にしていきたいですね。

鎌田

井川さんは人集めが得意ですが、そうした夢を語ることで人が自然と集まってくるんですね。

井川

事業には、最初のアイデアを生む人材と、事業を育てていく人材と、広げていく人材の3種類が必要だと思っています。100人の中に2、3人はアイデアを生むことに長けた人材がいますから、そうした人間に期待したいですね。

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