【この記事のポイント(Insights)】
2023年3月に入り、米国及び欧州の銀行の精算や破綻、買収が相次ぎました。
最初に動きがあったのは、米国の3つの銀行です。まず、3月8日に暗号通貨投資家向けの銀行業務にいち早く取り組んでいたシルバーゲート銀行が、銀行業務の精算を発表しました。続く3月10日、スタートアップ企業へ融資業務で成長したシリコンバレー銀行(SVB)が破綻。さらに間を置かず、3月12日にはシグネチャーバンクも破綻。同行は、2001年創業の新興金融機関ながら、多彩な投資商品を扱う急成長商業銀行として知られていました。
これらのニュースが金融不安を煽り、世界的な投資銀行であるクレディ・スイスの株価が暴落。3月19日に、同じく世界的投資銀行のUBSに買収されることに合意したと報じられました。
連続破綻の背景にはさまざまな要因が複雑に絡んでいますが、当メディアでも度々取り上げているインフレも要因の1つと言われています。本記事では、インフレと銀行破綻だけに焦点を絞って、その関連性を紐解いてみます。
銀行も一般企業同様、業績悪化により破綻します(後述する取り付け騒ぎも、突き詰めれば業績が良くないからこそ起こる減少です)。そして、インフレは銀行の業績に大きく影響を及ぼします。
銀行は顧客の預金を、別の顧客への融資や、金融商品の取引など、運用することによって収益を上げています。これらはともに、インフレ対策として行われる利上げの影響を受けます。融資については、利上げ局面では利息が増えるというプラスの効果がある一方で、顧客が高利を嫌い借り入れ申請が減るというマイナスの効果も発生します。プラスとマイナス、どちらの効果が大きいかは顧客層や利上げペースによって変わってきますが、利上げで暗号資産やグロース企業の株価が低迷しているなか、投資家やスタートアップ企業を主な顧客としていた銀行にとっては、大きな逆風をなったと考えられます。
利上げによって金融商品の価格が変動すると、銀行が自ら買い入れている資産ポートフォリオの価値も影響を大きく受けます。特に、銀行が低リスク商品として好んで買い入れる国債は、価格が金利に反比例するため、利上げ局面では資産価値が下落します。
シルバーゲート銀行やシリコンバレー銀行、シグネチャーバンクは融資業務では他行よりもリスクを取る一方で、自社の運用は国債を中心に低リスク商品を主軸にすることで、経営バランスを取っていました。しかし、急激な利上げによって国債の価格が急落したことで、未実現損失が発生してしまいました。
運用での損失に加え、インフレ時にはさまざまな理由で預金の引き上げが発生します。
法人顧客の場合、インフレで人件費や原材料費が上昇しているなか、金融引締により投融資による資金獲得の難易度も上がっているため、預金を切り崩して事業資金とすることがあります。
また、個人投資家の場合、インフレから資産を守るため、現金を減らし現物資産に変えようとする意識が働きます。物価上昇とはつまり貨幣価値低下ですから、現金のまま保有して資産が目減りするのを見過ごすよりも、価値が上がる(あるいは下がらない)モノにしようというわけです。
預金が引き上げられると、融資および自社運用の原資が減るため、運用業績を上げることがますます困難になります。
これらインフレに起因する悪材料もあって、米国三行は業績が著しく悪化。シルバーゲート銀行は自ら撤退を決め、シリコンバレー銀行とシグネチャーバンクは顧客不安が取り付け騒ぎにまで発展し破綻を迎えました。
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