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2024年大統領選に先駆け、6月27日に行われた第一回テレビ討論会でのバイデン氏の精彩を欠く答弁が話題になっています。討論中に複数回つまずいたこと、事実誤認に基づく発言や曖昧な発言が多かったことに対し、一般有権者はもちろん、民主党議員からも懸念の声が上がりました代わりの候補を探すべきだという意見も少なくありません。
一方で、民主党の代表候補者を選出する正規プロセスである予備選はすでに終了しています。バイデン氏は、マリアン・ウィリアムソン(作家、活動家)、ディーン・フィリップス(ミネソタ州選出の下院議員)、ジェイソン・パーマー(ベンチャーキャピタリスト)らを下し、指名が内定している状態です。
ここから他の候補に交代することは可能なのかを検討してみましょう。
まず歴史から振り返ると、正式に指名を得た候補が直線になって変更になったことはありません。 似た事例と言えば、1968年の大統領選くらいでしょうか。現職のリンドン・ジョンソン大統領がベトナム戦争への対応を巡って党内外からの支持を失い、予備選の途中で辞退を表明しました。予備選が終わる前の辞退ということで、厳密には今の状況とは異なるものの、現職大統領が支持を失ったという点では似ていると言えるでしょう。
ちなみに、この年の民主党指名争いは、ジョンソン氏の辞退後も混迷を極めました。ほか候補者で予備選を行い、一時はロバート・ケネディ氏に決定するかという情勢でしたが、6月5日に暗殺事件が発生。ケネディ氏の急死を受け、最終的に党指名候補となったのは、ヒューバート・ハンフリー現職大統領でした。
一番近いジョンソン氏と比較しても、ジョンソン氏は予備選途中である3月(11月の投票の半年以上前)に辞退しているのに対し、バイデン氏の場合は予備選を終えており、投票までの猶予ももう4ヶ月しかありません。もしここから指名候補が入れ替わることがあれば、歴史上最も土壇場での候補交代劇となります。
では、ここからの交代が可能なのでしょうか? 結論から言うと、「方法はあるけれど、ハードルは非常に高い」です。
交代を実現するにはまず、原則としてバイデン氏本人の辞退が必要です。しかし、討論会後のバイデン氏の振る舞いを見る限り、彼が辞退を申し出ることはまずありえなさそうです。米ABCテレビのインタビューでは「私以上に大統領になる資格がある者はいない」と回答。記憶力等を確認する認知検査を受けて結果を公表してはどうかという問いにも「必要ない」との考えを示しています。
民主党員は辞退を飲ませるために、健康問題を含む多方面の懸念を突きつけて圧力をかけていますが、バイデン氏にはあまり響いていません。
厳密には、本人辞退のほかにも、民主党全国委員会(DNC)の規則に手を入れ、候補者選考プロセス自体を変更することで、バイデン氏の指名を無効化するという手段もあるにはありますが、現実的ではありません。規則変更には、DNCの一部メンバーでの投票で過半数の賛同を獲得した後、全メンバー(党所属議員や関連団体幹部、市民の代表者などを含む)による再投票でも過半数から賛同を得る必要があります。この過程には数ヶ月単位で時間がかかりますし、その後に施行されるまでのラグも考えれば、11月には到底間に合わないからです。
候補交代は非常に難しい状況ですが、もし実現するとすれば、以下のような流れで手続きが進められます。
正式な指名は8月19日から22日に開催される民主党全国大会で行われる予定で、残り時間はわずかです。すでに緊急時ですから、この予定辞退を後ろにずらすことも十分に考えられます。しかしそれは、正式候補の支持固め期間が短くなることと同義でもあります。バイデン氏のままでも大きな不安がある一方で、候補替えにも相応のリスクがある。民主党が、窮地に追い込まれています。
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