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GAFAの不動産版とも呼ばれるアメリカの4大不動産テック企業ZORC(Zillow、Opendoor、Redfin、Compassの4社)。
その一角である不動産仲介テック企業Compass(以下コンパス)社が、2021年4月1日にニューヨーク証券取引所に上場。公募価格の18ドルから11.9%上昇の20.15ドルで初日取引を終えました。
コンパス社にはソフトバンクグループも出資しており、17年に4.5億ドル、18年に4億ドルと立て続けに巨額の資金調達を成功させたことから、日本の投資家からも注目されてきました。しかし、コンパス社のIPO(新規株式公開)による調達額は4.5億ドルと、当初予定していた金額の半分以下という結果に。
上場から、いささか逆風を受ける格好となった同社ですが、その背景にはどのようなものがあるのでしょうか?
コンパス社は不動産売買を仲介し、手数料で収益を上げるという伝統的な仲介業のあり方をメインモデルとしています。しかし、従来の不動産会社と大きく異なるのが、エージェント(代理人)の質とその待遇です。
エージェントはアメリカの不動産取引において非常に重要な存在。日本では不動産仲介会社が売り手と買い手の間を取り持つのが一般的ですが、アメリカではその役割を個人事業主であるエージェントが担っています。
エージェントが依頼主に変わって取引相手を探し、条件をすり合わせ、売買取引を成立させるわけですが、当然エージェントの力量によって売買のスピードや条件も変わってきます。つまり、エージェントの質が取引の成否を分けると言っても過言ではないわけです。そのため優秀なエージェントは引く手数多で、リピート依頼も絶えないといいます。
コンパス社の注目すべき点は、エージェントに対する待遇です。エージェントは仲介会社に所属、仲介会社はエージェントに営業ツールや情報、会社の信用力などを提供し、その見返りに仲介手数料からマージンを得るわけですが、コンパス社は優秀なエージェントを獲得するための過剰ともいえる優遇施策が話題を呼びました。
コンパス社のエージェントに対する優遇としてよく知られているのが、トップエージェントへの破格の移籍金支払い。その最高額は100万ドルを超えるとも噂されています。加えて、仲介手数料のマージンを最小0%にしたり、エージェントにストックオプションを付与したりといった優遇施作も。
そのほか、主要都市にある豪華なオフィスを自由に使えたり、マーケティング経費を一部負担したりなど、さまざまな補助も用意。他社からのエージェントの引き抜きも積極的に行なっています。また、ライバル企業の仲介会社を買収することで、所属エージェントをまるごと獲得したケースもあります。
こうした過激な手法には業界からの反発も強く、エージェントを引き抜かれた仲介会社から訴訟を起こされたことも。そうした強い反発と引き換えに、急激な成長を遂げた同社ですが、2020年末時点で19,000人を超えるエージェントを抱えており、これは米国の住宅購入市場全体の4%を占める数字となっています。
そんなコンパス社に対し、以前から疑問を呈する声は上がっていました。「コンパス社は自分たちで標榜しているような革新的テック企業ではなく、結局は昔ながらの仲介会社なのではないか?」という声です。
コンパス社が独自技術やテクノロジーを提供していない、というわけでは決してありません。実際に、エージェント業務や情報収集、顧客管理をサポートするアプリケーションはその機能性などに一定の評価を受けています。
コンパス社を批判する人々が問題としているのが、その収益性です。ソフトウェアビジネスを行う企業の粗利率は一般的に70%前後と言われていますが、コンパス社は約18%程度と低い数字。これは不動産仲介業者の平均約20%よりもさらに低い数字でもあります。
会社の売上全体は増加していますが、2020年には約2.7億ドルの赤字も記録。収益よりも優秀なエージェントの囲い込みに今は重点を置いている、という見方もできますが、懸念を示す投資家もいるようです。
果たしてコンパス社は新しい収益モデルの革新的テック企業なのか、あるいは昔ながらの伝統的な不動産仲介業者に過ぎないのか。今後の動向に注目したいところです。
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