【この記事のポイント(Insights)】
2025年1月20日、ドナルド・トランプ氏の大統領就任式が行われ、第二次トランプ政権がスタートしました。トランプ大統領は就任直後から多くの大統領令に署名し、明確な政策転換を図っています。本記事では、トランプ氏のアクションについて、あえて最初の1週間に限って分析することで、彼が目指す方向性について考察します。
トランプ大統領は就任後すぐに、数々の大統領令に署名しました。以下に、署名日順で主な大統領令を紹介します。
1月20日(月) ※就任初日
1. 有害な大統領令および行動の撤回(Initial Rescissions of Harmful Executive Orders and Actions)
バイデン政権下で発令された複数の大統領令を撤回しました。
2. 規制凍結(Regulatory Freeze Pending Review)
新規および未完了の規制を一時停止し、見直しを指示しました。
3. WHOからの脱退(Withdrawing the United States from the World Health Organization)
世界保健機関(WHO)からの脱退を指示しました。
4. アメリカ市民権の意味と価値の保護(Protecting the Meaning and Value of American Citizenship)
出生市民権の見直しに向けた方針を示しました。
1月21日
5. 違法な差別の終了とメリットベースの機会の回復(Ending Illegal Discrimination and Restoring Merit-Based Opportunity)
連邦契約における多様性、公平性、包括性(DEI)関連のプログラムを廃止しました。
1月22日
6. エネルギー政策の転換(Unleashing American Energy)
国内エネルギー生産の拡大を指示しました。
1月23日
7. ジョン・F・ケネディ、ロバート・F・ケネディ、マーティン・ルーサー・キング暗殺記録の機密解除(Declassification of Records Concerning the Assassinations of JFK, RFK, and MLK)
これらの歴史的事件に関する機密記録の公開を指示しました。
8. デジタル金融技術におけるアメリカのリーダーシップ強化(Strengthening American Leadership in Digital Financial Technology)
暗号資産政策を見直し、金融技術分野での米国の優位性を確保する方針を示しました。
1月24日
9. 言論の自由の復元と連邦政府の検閲の終了(Restoring Freedom of Speech and Ending Federal Censorship)
連邦政府による情報検閲を制限し、言論の自由を強化する措置を講じました。
また、大統領令ではありませんが、2021年1月6日の連邦議会襲撃事件に関連する被告への恩赦や南部のメキシコ国境への軍の追加派遣、国家安全保障会議(NSC)の多様性プログラムの廃止なども、賛否の分かれる判断として大きな話題を呼びました。
トランプ大統領の就任直後の行動に対して、一部のメディアや専門家から具体的な批判が寄せられています。例えば、BBCは、トランプ氏が就任から1週間も経たないうちに最初の国際関税紛争に関与したと報じ、彼の外交戦略に対して懸念を示しています。 日本でも毎日新聞が、トランプ政権が大統領令を駆使して一気に政策を転換し、人事権を使って官僚機構の「トランプ化」を進めていると指摘。 トランプ政権の初動は、一部のメディアや専門家から「過激」と評価されていることを示しています。
しかし、これらの施策はすべて選挙期間中に掲げていた公約の一部であり、トランプ大統領の就任前の言動から考えると、予想の範囲内といえます。株式市場の反応を見ても、大きなショックはなく、むしろ安定して推移していることから、市場もトランプ政権の政策をある程度予測していたと考えられます。
トランプ大統領が今後も公約通りの政策を推進する場合、以下の6つの分野でさらなるアクションが期待されます。
移民政策のさらなる強化
すでにメキシコ国境への軍派遣を行っていることからも分かるように、トランプ大統領の関心ごとのなかでも特に優先度が高い項目です。不法移民の大規模強制送還を実施する可能性が高いのに加え、国境の壁建設を本格的に再開することも考えられます。
経済政策の推進
トランプ大統領は「小さな政府」論者として知られています。バイデン政権下で発表された負担の大きい規制を停止して歳出を削減し、個人や企業への減税を図ると見られています。ただし、具体的な減税措置の実施については、現時点で報道されていません。
外交・安全保障の見直し
就任前の発言からは、米軍の近代化や国防費の増額や、NATOとの関係の見直しが示唆されています。現時点で具体的なアクション案は明らかになっていませんが、手を付けないままにするとは考えられません。近く、何らかの方針が発表されるはずです。
社会政策の改変
医療費の削減のために、オバマケアを見直す可能性が高いと言われています。また、共和党の方針に則り、中絶に関する規制の強化が全米に及ぶかもしれません。
教育政策の改革
支持基盤の1つである労働階級からの期待に応えるべく、職業教育を強化し、実践的なスキルを重視する教育政策を導入するのではと見られています。その分、大学以降の高等教育への支援は手薄になるかもしれません。
暗号資産政策の推進
トランプ氏は、暗号資産市場に対する規制を緩和し、米国を暗号資産のリーダーにしたいという主旨の発言を度々行っています。暗号資産業界でのキャリアを持つ人物を要職に指名していることからも、どこかで本腰を入れて取り組む可能性が高いと見られています。現時点では具体的なアクションがないため、一部失望売りが見られましたが、市場の期待値は依然として高い状態です。
トランプ大統領の就任1週間の行動を見る限り、彼は公約に沿ったアクションを迅速に実行しています。一部では「過激」と評されるものの、選挙期間中に掲げた公約と比較すると、ほぼ予想通りの動きといえます。今後、未着手の分野でも具体的な政策が発表される可能性があり、引き続き注視する必要があります。
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