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“健康な人を診る”名医は、タクトを振る音楽家でもあった。(ゲスト 藤本 幸弘 氏:第3回)

作成者: 海外不動産コラム 編集部|2020.02.11

賢人たちを賢人たらしめている行動や考え方は。そして、大切にしている習慣は──。 インタビューを通じて、そんな共通点を探っていきます

人をハッピーにすることでお金を稼ぎたい

鎌田

先生は音楽にも造詣が深いですね。

藤本

ええ、半世紀近くのクラシック音楽ファンです。好きな曲のCDは録音した年や奏者が違うものを40枚以上も集めるくらい、のめり込んでいます。実はCDも6枚ほど監修しておりまして、『藤本先生の聴くだけでスッキリシリーズ』という音楽療法のCDを出しています。

鎌田

音楽は心の健康にいいと。

藤本

テクノロジーの進化によって、現在ではファンクショナルMRIという技術を使うと、音楽を聴いているときには確かに脳が活性化されている、ということがわかるようになりました。これは人間ばかりでなく、動物でも同様の効果がわかっています。かつては音楽が健康にいいという説はスピリチュアルな領域のものと受け取られがちでしたが、技術の発達によって、科学的に証明されるようになってきたわけです。

鎌田

確かに好きな音楽を聴いているときは心が癒やされますね。

藤本

ピタゴラスの時代には、音楽は薬としても扱われていたほどですよ。

鎌田

でも、音楽が身体の不調の解消に効果があるというのは、どういうメカニズムなんですか。

藤本

健康のカギを握る物質として活性酸素が知られています。活性酸素は精神的なストレスを受けたり紫外線を浴びたりすると、体内で発生します。酒や煙草でも同じですね。この活性酸素は老化や万病のもととされていますが、SODという物質の働きによって消去されますから、過度に怖れる必要はありません。

ただ、誰でも30代半ばを過ぎると「疲れやすくなった」「寝ても疲れが取れない」と感じるのではないでしょうか。これは加齢とともにSOD活性が落ちていき、活性酸素を消去しきれなくなるためです。消去されないまま活性酸素が蓄積すると、やがてそれががん化することさえあります。

だから、人間は35歳までは何をやっても平気だけれど、35歳を過ぎたら健康には気をつけた方がいいんです。しかし、音楽を聴くことで過緊張やストレスが解消されるため、活性酸素が発せしにくくなります。さらにはリラックスしたことによって免疫力も高まります。

鎌田

なるほど、音楽で健康になるというのは、トンデモ科学どころか、確かな根拠のある話だったんですね。

藤本

できるだけライブの音楽を聴いて欲しいですね。そんなメッセージを伝えたくて、とうとうオーケストラのコンサートまで企画してしまいました。

鎌田

ラフマニノフの曲を指揮されるそうですね。ラフマニノフって、ソチオリンピックのときの浅田真央ちゃん?

藤本

そうです、そうです。あれは超名曲なんですよ。しかも指揮は非常に難しい。今はコンサートに向けて、先生に指導してもらって必死に練習しています。

鎌田

音楽が健康にいいということを伝えるだけなら、指揮はしなくてもいいのでは?

藤本

いや、その通りなんですが、単純にやってみたかったんですよ(笑)。

鎌田

さすが趣味人(笑)。

藤本

コンサート自体は赤字になりそうなんですが、何かきっと得られるものがあるはずです。私は、人をハッピーにすることでお金を稼ぎたいと思っていますし、ハッピーじゃないお金は稼ぎたくないんです。

鎌田

先生にとってお金とはどういう存在ですか?

藤本

自己実現のために必要不可欠なものですね。コンサートは赤字になったとしても、きっと何かポジティブなスパイラルが生まれると思っています。私にとってこれは大切な投資ですね。

対談後記

藤本先生は多才な方です。

そもそも皮膚科の専門医であり、研究者であり、企業経営もされている。それだけ多方面に行動していると頭が混乱しそうですが、そこは三等分で考えているという器用さです。おまけにやたらと海外に行かれているので、どういう時間配分で仕事をしているのか想像できません。

そうした多才ぶりには驚くばかりですが、まさか音楽会まで開かれるとは存じませんでした。(ラフマニノフといえば、私のような無粋な人間はフィギュアスケートの浅田真央ちゃんくらいしか思い浮かびません)趣味が高じて指揮棒まで振ってしまう先生だけに、音楽の音源にまでこだわりを見せます。先生から言わせるとiPadの音は悪いと。音域が限定されているから聞くには値しないというお話でした。

藤本先生はアンチエイジングの専門家でもあります。人生100年時代を若々しく豊かに過ごしたいと考えるニーズは莫大だと思います。(解釈を間違っているかもしれませんが)藤本先生曰く、酸化することとの戦いこそがアンチエイジングの基礎だそうです。そのためにはビタミンCが重要なのだと。

(ビタミンCの別名アスコルビン酸(ascorvic acid)とは「壊血病(Scurvy)にならない酸」という意味だと教えてもらいました。かつて大航海時代に船乗りが罹った壊血病。レモンやオレンジを食べるとそれに罹らないことがわかったことからアスコルビン酸が認識されたそうです)

そんなことで、抗酸化にはビタミンCが第一とばかり、意識的に摂取する今日この頃です。ちなみに、藤本先生は飛行機での長距離移動の前後にはビタミン類を大量摂取して抗酸化対策するそうです。これも、最近、見習うようにしております。

鎌田和彦

※この対談は2019年11月6日に「クリニックF」(東京都千代田区平河町)にて行われました。

藤本先生が企画・指揮されるオーケストラ「音楽は名医」が32日(月)東京オペラシティコンサートホールにて開催されます。

実際に大ホールでピアノとオーケストラの素晴らしい演奏をお聴きいただき、脳が活性化されるのをご体験いただきたいと思います。

ピアニストには、今最も注目を集めている藤田真央さん(第16回チャイコフスキー国際コンクールピアノ部門第2位受賞)を迎え、大胆かつ繊細でキラキラした演奏をお楽しみいただけます。

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