8月に入り、アメリカの株式市場は若干盛り返しています。S&P500は、7月の底値からおよそ13%上昇し、8月8日の終値は4,140ドルとなりました。
この背景には、インフレと利上げの経済への影響が、想定よりも小さかったことにあると見られています。通常、利上げ局面では企業が投資を渋るため、雇用が悪化するとされています。しかし、予想に反して7月のアメリカの就業者数は伸び、失業率は低下しました。
インフレへの懸念はいまだ払拭されていませんが、悲観ムードが先行したため、現在の株価にはインフレショックの影響がすでに織り込まれている(≒これ以上は下がらない)という声もあります。そうした状況のなか、底は越えたと見る投資家たちが、市場の復調を後押ししている格好です。
一方で、専門家の多くは、先行きはまだ不透明だと見ているようです。
スイスの資産運用会社プライム・パートナーズの最高投資責任者であるフランソワ・サヴァリ氏は、CNBCのビジネス番組『Street Signs Europe』に出演し、「7月に堅調だった債権市場は、(8月に入ってからの株式市場の)上昇を後押しした重要な要因の1つだが、それはすでにある程度失速している」と語りました。サヴァリ氏は、Covid-19の影響やウクライナ情勢など不確定要素が多いことにも触れ、明確な経済ビジョンを持つことは難しいとも述べています。
米国の国内総生産は、今年の最初の 2 四半期で減少しており、多くの人はすでに不況に陥っているとみなしています。一方、米政府はNBER(全米経済研究所)の不況の定義(経済活動が、広範な産業をまたいで、長期間、大幅に落ち込むこと)を引き合いに出し、現在の状況は不況ではないと主張しています。人々の肌感か、政府の主張か、どちらが正しいのかは今後の株価によって審判が下ります。
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